Research Abstract |
【研究目的】 人工呼吸管理下の重症急性呼吸不全患者においては機械的陽圧換気に伴う選択的換気分布, 水平仰臥位管理での腹腔内臓器による胸腔方向への圧排, 鎮静・麻酔薬, 重力の影響などにより横隔膜活動の低下が生じ, これが下側肺の換気制限の一要因になると推測されている. これに対して我々が実施する体位変換により換気が改善することは既に明らかにされているが, 横隔膜活動がどのように変化し, 換気改善に寄与しているかは未だ明らかにされてはいない. そこで体位変換に伴い横隔膜活動がどのように変化するかを確認することにより, 呼吸状態の改善に寄与する知見を獲得することを今回の目的とする. 【研究方法】 当院EICUに入院し, 人工呼吸管理となり, 呼吸理学療法の依頼があった患者5名を対象にして水平仰臥位, 左前傾側臥位, 60度ベッドアップ坐位へと体位変換を行い, 各姿勢において超音波診断画像装置を用いて横隔膜運動を観察した. 第8肋間走査より右横隔膜後壁の頭尾側方向の横隔膜運動を測定し, 運動が最大となる部分の連続10呼吸分の測定値を横隔膜移動距離として採用し, 各姿勢間での比較を行った. 【研究成果】 横隔膜移動距離は全症例を通して水平仰臥位に比べ左前傾側臥位, 60度ベッドアップ坐位において有意に高値を示した. これにより下側肺の換気制限を引き起こしやすいとされる水平仰臥位や呼吸理学療法実施下で下側肺の換気改善に効果があるとされる姿勢(左前傾側臥位, 60度ベッドアップ坐位)と横隔膜運動が相応しており, 横隔膜活動が下側肺への換気に大きく関与していることが明らかとなった. このことから人工呼吸管理下においては治療・処置時に選択されやすい水平仰臥位からの迅速な解放, 左前傾側臥位, 60度ベッドアップ坐位への体位変換にて横隔膜活動を促進することが下側肺の換気改善に寄与し, 強いては下側肺障害の改善, 予防には有効であることが示唆された.
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