本研究では、教育実習生の体育実技授業を撮影し、組織的観察法の期間記録によって場面ごとに分類し、分析された映像と時間割合データを授業後の指導教員との省察場面で視聴するという省察方法の効果について明らかにすることを目的とした。 保健体育科の5名の教育実習生が担当する3週間の体育実技授業を撮影し、同時に、その授業を高橋らの開発した組織的観察法の期間記録を利用し、その時間割合や頻度を分析した。授業実施と同時に分類を行うため、Sportstec社の開発した、コーディングソフトCODAおよびiCODAを利用し、タブレット型端末(iPad)で期間記録の分類入力を行った。撮影した映像はコンピューター上の分析ソフトGame Breakerに取り込み、授業中に入力した期間記録データと結合し、分類場面ごとに分けられた授業映像を視聴できるようにした。 分類された授業映像の中から特に学習指導場面とマネジメント場面に着目し、その頻度や時間を明らかにして、授業後の省察場面で視聴し、次回の授業運営と指導力向上に活かす手がかりとさせた。授業の学習指導場面とマネジメント場面に着目して映像視聴させることで、実習生の次回の授業運営の向上に活かす手がかりとした。また、教師行動評価表を指標に、実習生の授業運営能力及び指導力の向上・変化を明らかにした。 本研究の結果、授業映像を視聴した省察によって、すべての実習生に学習指導場面の減少が見られた。また、マネジメント場面については減少が見られるものの、確実な減少とまでは言えなかった。実習生の授業評価も単元が進むにつれて、おおむね肯定的に向上した。授業後の映像を用いた省察については、実習後のアンケートから、実習生には大変好意的に受け止められていたことがわかった。 本研究の結果から、教育実習生の授業運営能力が向上したととらえることができ、また、映像を用いた省察には一定の効果があるということが明らかになった。
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