Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】多剤耐性緑膿菌(MDRP)が有すると考えられる各種抗菌薬耐性機序の有無と抗菌薬における抗菌効果の関係について検討する。 【研究方法】愛知医科大学病院にて臨床分離されたMDRPに対する各種抗菌薬の最少発育阻止濃度(MIC)の確認には微量液体希釈法またはE-test法を用いた。カルバペネム系薬耐性の主要な因子の一つであるメタロ-B-ラクタマーゼ産生の有無についてはPCR法を用いて評価した。その他、各菌株のバイオフィルムの産生能を評価した。チェッカーボード法を用いてMDRPに対して有効な併用療法を選択し、マウス大腿部感染モデルを用いた薬力学的試験を行った。 【研究成果】チェッカーボード法の結果、当院で分離されたMDRPに対して、コリスチン(CL)とアズトレオナム(AZT)の併用療法がin vitro試験で高い抗菌効果を示した。In vivo試験ではMDRPのCLとAZTに対するMICは0.5、>256μg/mL、β-ラクタマーゼ非産生株を使用し、臨床の薬物動態試験でCL(2.5, 5 mg/kg/6, 12h)とAZT(2g/kg/8h)の結果を模擬した薬剤投与をマウスに行い、単剤療法と併用療法の抗菌効果を確認したところ、AZT単剤療法では非薬剤投与群と菌量に差は認められなかった。一方、CL(2.5、5 mg/kg/12h)の単剤療法よりもAZTとの併用療法では優位に菌量の低下を認め(CL単剤とCL+AZT併用療法における24時間後のlog_<10> CFU/mlの差は0.88、0.86)、特に高容量のCL(5mg/kg/12h)を用いたAZTとの併用療法ではより強い抗菌効果を認めた。なお、抗菌薬投与群のマウスから分離されたMDRPの薬剤感受性に大きな変化は認められなかった。以上の結果から、高容量のCLとAZTの併用療法がMDRP感染症に対して有効である可能性が示唆された。
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