Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 有効性および安全性の観点から高齢肺炎患者におけるピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)配合剤の最適な投与法を確立することを目的とし, 臨床研究で得られた血液を用いて母集団薬物動態(PPK)解析を行い高齢肺炎患者における薬物動態を検討し, またモデリング&シミュレーション手法を応用して投与法の探索を行った。 PPK解析については, 対象27例(平均84.4±6.6歳)から得られたPIPC血中濃度データ157ポイント, TAZ血中濃度データ155ポイントを用いて行い, 基礎モデルを推定した。PIPCならびにTAZの全身クリアランスは, 既に報告されている市中肺炎患者(年齢21~90歳, 平均63.9歳)と比較し, およそ2/3まで低下していることが推定された。全身クリアランスの低下は対象患者の年齢が高く, 腎機能が低下していることが関連していると考えられた。 本研究の一部の症例(医療介護関連肺炎のみ)における副作用の発現状況について調べた結果, 腎機能障害が5例, 肝機能障害が2例, 偽膜性腸炎が1例で出現し, 腎機能障害の発現率は約18%と高く, 症例数は少ないものの「ゾシン®静注用」添付文書記載の発現率(0.2%(1/485))より高い傾向が観察された。様々な要因が考察されるが, 高齢者であったことも一つの要因として挙げられた(論文投稿)。 本研究で得られたPPKパラメータに加えて, Pseudomonas aeruginosaを想定起因菌として当院におけるMIC分布(MIC_<80>=8μg/mL ; 2013年)に基づきモンテカルロシミュレーションを用いたPharmacokinetics-Pharmacodynamics解析を行った結果, 1回2.25g, 1日3回投与が十分に治療効果を得られる投与方法であることが示唆された。 以上より, 高齢肺炎患者におけるPIPCおよびTAZのクリアランスは, 既報に比べ低下していることが明らかとなり, PIPC/TAZ配合剤を使用する場合, 特に用法用量の設定には注意を払う必要があることが示唆された。
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