Outline of Annual Research Achievements |
後天性血友病Aは, 何らかの基礎疾患を基盤に第VIII因子に対する自己抗体の産生により, 突如として発症する出血性疾患である. 診断にはAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)をはじめ, 第VIII因子活性測定, 自己抗体の検出が重要となる. 免疫抑制療法により, 第VIII因子活性が上昇し自己抗体価が低下する. その治療経過中, Type2 inhibitorとよばれる自己抗体の特性から, 凝固検査データは改善しているにもかかわらず, 出血傾向の出現などの臨床症状とは必ずしも一致せず, 実臨床で混乱することがある. 一方, 先天性血友病AではType1 inhibitorが多く, 抗体価改善と凝固因子活性は良く相関する. この原因として本邦の研究では, 市販の抗VIII因子抗体を用いた検討の結果, VIII因子のリン脂質への結合の差と報告されている. 今回我々は, APTT, 凝固時間および合成基質法を用いた第VIII因子活性測定, ソノクロットとよばれる血餅弾性力や凝固反応の速度を評価することができる測定法での計測を用いて, 市販の抗VIII因子抗体を添加した検体と後天性血友病A患者検体の凝固能の評価を行った. 【結果】市販の抗VIII因子抗体としてESH8抗体を健常者に添加した検体を用いた. 抗体の添加量が多くなるほど, APTT延長, 凝固時間および合成基質法による第VIII因子活性の低下, 凝固能の低下を認めた. 一方, 後天性血友病A患者では, 3症例の診断前, 治療中, 治療後の検体を用いてBethesda法やNijmegen法など抗体価測定とともに凝固能の評価を行った. 結果, 3症例ともにESH8抗体を添加した検体同様, Bethesda単位が高いほど, APTT延長, 第VIII因子活性の低下, ソノクロットの各種パラメータよる凝固能の低下を認めた. 【考察】市販抗体を健常者に添加した検体と3症例の後天性血友病A患者の検体は抗体価(添加量)と凝固検査の結果は一致していた. また, ソノクロットにおいても凝固能の評価に使用できる可能性が示唆された.
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