Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 人工膝関節全置換術は、下肢深部静脈血栓症(DVT)の発症において高リスクとされている。DVTの選別診断にはDダイマー定量検査があるが、術後早期ではDVTの有無に関わらず異常値となる。そこで、術後早期でのDVT発症を予測するために、術後DVT発症と各種血液データとの関連を検討した。 【研究方法】 当院で2011年4月~2015年3月に人工膝関節置換術を施行した142例を対象とした。術前術後のDVT判定に下肢静脈エコー検査を用いた。対象から、下肢静脈エコー検査の未施行例および観察不良例、術前DVT陽性例、術前抗凝固剤投与例、術後の予防的抗凝固療法中断例を除外し、38例(平均年齢73.1±8.4歳)とした。術後DVT発症群15例と非発症群23例に分類し、術前、術後1、3、7日目の血液データ(血算、凝固、生化学検査項目)とその経時的変化率(%)について、Wilcoxonの順位和検定にて2群間比較を行った。2群間比較で有意差を認めた項目について、ロジスティック回帰分析とROC解析にて術後DVT発症との関連を検討した。 【研究成果】 本研究では、ロジスティック回帰分析にて、術後1日目または3日目の血小板数(Plt)、術前-術後1日目のeGFR変化率およびALT変化率に有意差を認めた。ROC曲線下面積は術後1日目のPltで0.751、3日目のPltで0.732、術前-術後1日目のeGFR変化率およびALT変化率による回帰モデルで0.875であった。今回、2群間比較で術後に有意差があった可溶性フィブリンモノマー複合体、トロンビン-アンチトロンビン複合体はn=14とn数が不十分であり、さらに症例を集め検討する必要があると考えられた。 【まとめ】 術後1, 3日目の血小板数、術前-術後1日目のeGFR変化率とALT変化率は、術後DVT発症と関連があることが示唆された。
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