Research Abstract |
岡山県南部の瀬戸から虫明にかけて分布する地層は, これまで時代未詳古生層とされているのみであったが, 本研究において(1)地層区分, (2)化石の検出, (3)地質構造解析の3点において成果をあげることができ, これらの地層が超丹波帯に相当すると結論し得た. 以下, 各成果について示す. (1)地層区分 北から万富層, 江尻層, 虫明層の3層に区分した. 万富層は主に粘板岩, 粘板岩砂岩互層からなり, 酸性凝灰岩を伴うことが特徴である. 江尻層は砂岩粘板岩互層, 砂岩, 粘板岩からなり, 全般に緑灰色を呈するのが特徴である. 虫明層は主に砂岩粘板互層からなり, 典型的なタービダイトとスランプ礫岩を伴うことで特徴づけられる. (2)化石の検出 万富は層の3地点から放散虫化石を検出した. いずれも酸性凝灰岩に含まれており, 重要なものとしてFbUicucuUus charvetiがあり二畳紀後期を示す. 本地域での化石の発見はこれが初めてである. (3)地質構造解析 スレート劈開や堆積構造による地層の上下判定を利用して褶曲構造を解析し, 軸が東西方向を向き, 軸面が北に傾斜した過褶曲構造が明らかになった. 断層については破砕帯の認定を鏡下観察によって行い, スランプ礫岩との混同を防いだ. これによって万富層と江尻層とは幅約50mの破砕帯で境されることが判明した. 今回得られた地質構造のデーターは今後単層単位の詳細な層序を確立するうえで有効である. 以上の成果にもとずいて他地域の地層との対比を行うと, 万富層は岩相と化石から超丹波帯の大飯層に, 江尻層は岩相から同地帯の氷上層に相当すると考えられる. 超丹波帯の分布はこれまで兵庫県の上郡帯の北までしか知れていなかったが, 本研究によてっ岡山県南部にまで連続すると判断でき, 今後地帯構造論を考察するうえで重要なデーターと考えられる.
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