Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
細胞周期異常による染色体倍加と、その後の大幅な染色体喪失(倍数性逆転)は、広範なガンに共通する細胞異常で、不連続的な形質変化を惹起する。しかし、細胞集団中で極めて低頻度で生じる倍数性逆転を詳細に捉え追跡することは既存の手法では困難なため、倍数性逆転の発生原理と病理的意義は不明である。本研究では、高解像撮像による細胞内動態解析と長期撮像による細胞系譜の倍数性ダイナミクス追跡を同時実施できる顕微鏡システムを構築し、希少な倍数性逆転イベントを検出し、その素過程を詳細に捉え、それを惹起する希少かつ特徴的な細胞状態の特定を可能にする。これにより、謎につつまれた倍数性逆転を通した細胞ガン化機構を解明する。
本研究では細胞周期制御異常による染色体倍加に続いて起こる大規模な染色体喪失によって悪性の異数性細胞が形成される「倍数性逆転」の発生メカニズムの理解を目的とした。2020年度は、前年度に発見した、染色体倍加細胞がもつ余剰中心体がクラスター化する現象を司る因子の特定と、余剰中心体クラスター化現象が、倍数性逆転において果たす寄与の検証を主な目標とした。因子探索については、まず中心体の局在、局所的係留に広く関与する微小管の形成を阻害剤により抑制したところ、クラスター化の顕著な阻害が観察された。そこで次に、種々の細胞現象において中心体の集合運動への寄与が報告されている微小管マイナス端方向運動性のモータータンパク質を標的として、RNAi法もしくはオーキシンデグロン法による発現阻害および特異的阻害剤が、余剰中心体クラスターの形成・維持の過程に及ぼす影響を調べた。その結果、一部のモーターの阻害は中心体クラスターの細胞内配置を顕著に異常化させることがわかったが、いずれの阻害も、クラスター形成・維持には影響しないことがわかった。一方、正常細胞において2つの母中心小体間をつなぐ「リンカー構造」の構成因子を発現阻害すると、余剰中心体クラスター形成が顕著に抑制されることを見出した。さらに、リンカー構造と微小管の同時阻害によって、それらの単独抑制に比べて顕著にクラスター形成が阻害されることを見出した。これらの結果から、余剰中心体クラスターが、微小管とリンカー構造の協働によって形成維持されることがわかった。今後は、これらの結果をもとに、中心体クラスター動態へ摂動を加えた際の染色体倍加細胞の長期運命を追跡、定量評価することで、これらの現象間の因果関係の検証を行い、倍数性逆転成立条件を突き止める。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020 Other
All Int'l Joint Research (3 results) Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 2 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)
Cell Structure and Function
Volume: 46 Issue: 1 Pages: 1-9
10.1247/csf.20055
130007988144
Frontiers in Cell and Developmental Biology
Volume: 8 Pages: 1-9
10.3389/fcell.2020.00721
Journal of the American Chemical Society
Volume: 142 Issue: 4 Pages: 1763-1767
10.1021/jacs.9b12782
120006955185