Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
台風や爆弾低気圧の発達プロセスを議論するには,時間的に密な高頻度観測が不可欠である。米国NASAのCYGNSSミッションでは,8台の小型衛星を用いてハリケーンの風速を高頻度に観測している。ただし,一般公開されているプロダクトは,強風時の風速推定精度が高くない。そこで本研究は,別途実行されるストームの現場観測と同期して,CYGNSS衛星群を集中観測モードで運用し,一般非公開のセンサーデータを取得する。センサーデータと現場観測の比較から高風速に特化した推定アルゴリズムを開発して,当該ストームの時間的な発展を,高頻度観測を用いて記述する。
台風や爆弾低気圧などのストームの風速分布を知ることは,ストームの移動や発達・衰退を研究するうえで重要である。しかし,強風域の風速分布を現場観測することは現実的に不可能であり,人工衛星でも数種類のプロダクトしか実現できていない。本研究では,そのうちの一つであるNASAの小型衛星群CYGNSS衛星のデータを用いて,ストームの風速分布を高頻度で得る。昨年度は,2018年の台風21号と24号の風速分布の軸非対称性を調べた。台風が移動する場合,台風自身の円形環状風向と移動方向が一致する右側(危険半円)の風速が強化されると予想されるが,CYGNSSデータでは(速く動く台風で特に)この傾向が成立していなかった。これは,GNSS信号の海面反射を利用するCYGNSSの計測方法が長波長のうねり成分の影響をうけるためだと考えられる。移動する台風では,進行方向と波浪のエネルギー伝搬方向が場所によって異なるために有義波高分布が複雑で,うねり分布自身が軸非対称性を持ち,それがCYGNSS観測に影響を与えていると考えられる。そこで,ミシガン大学のリモートでの協力のもと,2021年2月の日本南岸の未処理のDDMデータを特別に直接ダウンロードして,CYGNSS観測における有義波高の情報を抽出することを試みた。しかし,CYGNSSの観測スペックではDDMデータの分解能が粗く,有義波高推定の十分な精度が得られないことが判明した。一方,波浪モデルによる有義波高分布を用いてCYGNSS衛星の風速データを補正すると,台風周りの風速分布の軸非対称性分布が理論的に期待されるものに近くなることが確認できた。これにより,今後はCYGNSSデータを用いて,より正確な議論ができることが分かった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2021 2020 Other
All Int'l Joint Research (1 results) Presentation (4 results) (of which Int'l Joint Research: 4 results)