Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
光をトリガとせず、反応を遅延させる抗凍結剤等を併用したpHジャンプによってリゾチームの加水分解反応を追跡する。基本はXFELで追跡した電子密度を解析して解釈するが、一部を凍結して中性子解析することにより、そのスナップショットにおける水素や水の通り道が同定できる可能性がある。このため、反応機構の分子レベルでの情報量が増加し、加水分解機構そのものの全容解明に迫ることが期待できる。
リゾチームは細菌の細胞壁ペプチドグリカンを構成する多糖成分の N-アセチルムラミン酸 (NAM)とN-アセチルグルコサミン(NAG)の間のグリコシド結合を加水分解する酵素である。半世紀前からリゾチームの糖鎖切断機構は提案されているが、いまだに様々な反応機構が議論されている。現在、最も強く提唱されている反応機構は、リゾチームの中間体が共有結合を形成して反応が進行するというものであるが、これはリゾチームと共有結合を作りやすいフッ素系リガンドで行った不自然かつ共有結合を形成するのが当然な条件下での結果によるものである。生化学的な実験結果でも最近、共有結合性は低いとされている。我々はまず、加水分解後の生成物(NAG)4と酵素の複合体にて、高分解能 X線解析を行い、その結果、Asp52の側鎖がしっかりとした水素結合を形成しているため回転しにくいほか、Dサイトの糖鎖のC1とAsp52側鎖の距離が長すぎて、共有結合するのは難しいとわかった。そこでさらに、水素も含めた相互作用を考察するために、pD4.5の(NAG)4リゾチーム複合体にて常温で中性子回折実験を行った。現在、X/N同時精密化で、R-work/free:0.1427/0.1644(X)、同0.1743/0.2485(N)まで解析を進めた。その結果、Asp52側鎖の予想外のプロトネーションを確認することができた。このプロトネーションは同様に行った(NAG)3リゾチーム複合体の中性子解析でも観察された。一方で、リゾチーム単体での中性子解析では、確認できていない。このプロトネーションは、(NAG)5複合体のX線解析に関しても、構造安定性から、我々も含めて複数のグループが示唆している。このように、リゾチームの反応中間体が共有結合を経るのが困難なことを、予想外のプロトネーションという中性子解析の結果からも改めて示すことができた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2023 2022 2021 2020
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 1 results) Presentation (7 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results) Patent(Industrial Property Rights) (1 results) Funded Workshop (1 results)
Acta Crystallographica Section D Structural Biology
Volume: 78 Issue: 6 Pages: 770-778
10.1107/s2059798322004521
化学工業
Volume: 73 Pages: 473-480
Acta Crystallogr. D
Volume: 77 Issue: 3 Pages: 288-292
10.1107/s2059798321000346
120006979766