Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
細根の生産量(以下、細根NPP)は森林生態系の純一次生産量(NPP)の約3分の1を占めるが、その割合は気温や降水量などの環境要因や樹種によって大きく変動するため、炭素循環モデリングにおいて大きな不確定要素となっている。地上部NPPに比較すると細根NPPのデータは圧倒的に少なく、調査方法も多様で方法間のばらつきも大きい。そこで本研究では、地上部NPPのモニタリングが行われている全国各地の多様な森林(常緑針葉樹林や落葉広葉樹林)において、細根NPPを同一手法により測定し、データを収集する。これにより、環境要因や樹種が葉・幹枝・細根へのNPP配分比率に与える影響を評価する。
本研究課題の問いは、「気象条件によって純一次生産量(NPP)配分比率はどの様に変化するのか、また変化の仕方は森林タイプによってどう異なるのか?」である。これを明らかにするために、本研究では国内の様々な森林において同一手法により細根NPPを測定した。そして、環境要因と森林タイプが細根へのNPPに与える影響を明らかにした。本研究では、4つの森林タイプ(ヒノキ林・カラマツ林・落葉広葉樹林・常緑広葉樹林)において、それぞれに4つの地域(足寄、苫小牧、盛岡、芦生、滋賀、神戸、椎葉、綾、田野、やんばる)の森林において調査を行った。2022年に各森林において設置したイングロースコアを8-10個回収した。回収したコアから細根をとりわけ、草本と木本、枯死根の乾重量を測定した。採取された生きた細根量を細根生産量として計算したところ、ヒノキ林で細根生産量は最も低く、常緑広葉樹林がもっとも高かった。気温に対する細根生産量の応答は林分タイプで異なり、カラマツ林は負の影響を、ヒノキ林では正の影響を、落葉樹林では一山型、常緑広葉樹林では何の影響も与えていなかった。降水量に対する応答は森林タイプで異ならず、負の影響を与えていた。また森林タイプをプールすると、土壌窒素濃度や基底面積などと負の相関があることが明らかとなった。今回の結果より、国内の細根生産量の変動メカニズムは、グローバルスケールで報告されているような傾向とは異なること、また、森林タイプによっても異なる場合があることが明らかとなった。本研究期間では間に合わなかったが、今後、地上部生産量と細根生産量の比率についても明らかにする予定である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2024 2022 2021
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 1 results) Presentation (1 results) Funded Workshop (1 results)
PLOS ONE
Volume: 17 Issue: 3 Pages: e0266131-e0266131
10.1371/journal.pone.0266131
Journal of Forest Research
Volume: 27 Issue: 1 Pages: 28-35
10.1080/13416979.2021.1965280