リズムの相互作用を力学系の知見を活用して推定する
Publicly Offered Research
Project Area | Establishing data descriptive science and its cross-disciplinary applications |
Project/Area Number |
23H04467
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Research Category |
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Transformative Research Areas, Section (II)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青柳 富誌生 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90252486)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 位相振動子 / リズム / 力学系 / ベイズ推定 / 非線形 / リミットサイクル / 位相縮約 |
Outline of Research at the Start |
リズムは生物・大気海洋など普遍的に見られ、それらを統一的に記述可能な確固たる数学的基盤がある。本研究では、その様なリズム間相互作用ネットワークに関して、力学系の数学的基盤に基づいた知見を活用し、リズムデータ解析手法の理論的研究および開発と実証的応用を行う。リズム力学系の知見駆動型で数理モデルのあるべき形を定め、次にダイナミクスを支配する相互作用関数をデータ駆動型で推定する。対象は、①ロボットによる介入実験を活用したカエル間の発声コミュニケーション(動物行動学) ②北極・南極振動の相互作用解析(地球科学)、を対象として研究を遂行する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究進捗では,理論的なリズムデータ解析,動物行動データの解析,海洋気象データの解析という三つの主要な研究目標に対して下記のような成果を達成しました.理論的なリズムデータ解析に関しては,周期性の強いカオス力学系に対する位相縮約理論の拡張を行い,実際のカオス振動子系の時系列データから生成された位相振動子モデルとして推定することで相互作用関数を精度良く再現することに成功しました.これにより,厳密な周期性を背後に持たないカオス力学系が生成するリズムデータ解析に理論的基盤を与え,データ解析の適用範囲が拡がりました.また,動物行動データの解析では,カエルロボットを用いた予備的実験から得られたデータを基にカエルの鳴き声のリズム間相互作用の詳細な解析を行い,予想外の特徴をもつ臨界的な相互作用関数が推定されました.これは生態学的な意義を持つ重要な発見と考えられますが,さらに実験と解析を進めその機能的意義の検討を進める予定です.また,人間の歩行運動に関するデータも解析し,歩行リズムにおける脚と体幹の相互作用の解析も行い,非自明な制御機構を発見しています.海洋気象データにおいては,偏微分方程式を用いた予備的数値データ解析を通じて,精度が観測点に相当程度依存することを発見し,等位相面からのずれが精度に大きく寄与することを発見しました.今後の研究推進では,時間と空間の両方向にわたる位相の相互作用関数の推定手法を開発し,地球温暖化などの気候変動に伴うリズムの変化をマクロに解明することを目指します.また,カエル間のコミュニケーションのダイナミクスを理解するためにカエルロボットを用いた屋外実験を続け,その結果を数理モデルに反映させ,リズムの相互作用が生物間のコミュニケーションにどのように影響を及ぼすかを解析する予定です.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究進捗では,①理論的なリズムデータ解析,②動物行動データの解析,③海洋気象データの解析という3つの主要な研究目標について,以下のような成果を達成しました. ①リズムデータ解析では,周期性の強いカオス力学系に対する位相縮約理論の拡張を行いました.この理論では,振幅方向の不変測度に基づく平均化を通じて,位相振動子の形式における相互作用の導出が理論的に可能であることを示しました.さらに,実際のカオス振動子から生成された時系列データから,理論的に導出した相互作用関数を精度よく再現することもできました.これにより,カオスデータが示す非リミットサイクル的な動態も取り扱えることが明らかとなり,リズムデータ解析の適用範囲が大幅に広がりました. ②の動物行動データの解析では,特にカエルの鳴き声のリズム間相互作用に焦点を当て,カエルロボットを用いた予備的実験から得られたデータを基に,個体間のコミュニケーションパターンを詳細に解析しました.この研究により,相互作用関数に現れた予想外の性質を発見しまし,その数理的および生態学的な意義を検討しました.また,人の歩行に関するリズムデータ解析では,「歩行中の両脚のリズムのずれは厳密に制御されておらず,わずかなずれであれば修正しない」という非自明な制御機構が,体幹と脚の間の相互作用にも同様に見られることを発見しました. ③の海洋気象データの解析に関しては,全地球レベルの気象パターン,特に北極・南極振動などの大規模気象現象を位相ダイナミクスの観点からデータ解析することを目指しています.その予備的研究として,反応拡散系の偏微分方程式を用いて生成した周期性をもつ時系列データから,観測点の選定が位相ダイナミクスの推定誤差に与える影響を数値的に精査しました.これにより,観測点の適切な選定が位相ダイナミクスの正確な推定に不可欠であることが示されました.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,主に以下の二つの大きな柱に分けて実施予定です. 1. 海洋・気象データの解析:時空間ダイナミクスのデータ解析手法の検討を進め,時空間の両方に周期的なパターンを示すリズム現象の間の因果関係を明らかにします.具体的には,空間位相も考慮した位相縮約理論の応用とその拡張により,複雑な時空間ダイナミクスを持つシステムの本質的な動きを捉えることを目指します.また,時間と空間の両方向にわたる位相の相互作用関数の推定手法を開発し,計算量の削減と精度向上を目指した新しい数理的手法を構築します.並行して,観測点に依存する精度の問題に取り組み,適切な観測点の選定や計測の判定基準のエビデンスに基づいた構築を目指し,地球温暖化などのグローバルな気候変動に伴うリズムの変化をマクロに解明することを目指します. 2.カエルロボットを用いた介入実験:カエル間の発声コミュニケーションのダイナミクスを理解するため,カエルロボットを用いた介入実験を行います.この実験では,様々な周期で鳴かせることにより,リアルな環境下でのカエルの行動反応を詳細に観察し,カエルの鳴き声のリズムが他のカエルにどのように影響を及ぼすか,またその相互作用すなわちコミュニケーション戦略を明らかにします.更に,介入実験から得られるデータを解析し,カエル間のコミュニケーションの数理モデルを構築します.更に,屋外の複数の野生のカエルが存在する条件下で,カエルロボットの介入実験も実施し,自然界ではレアにしか見られない条件を再現することで実際のカエルの行動戦略の解明を目指します. これらの方策により,理論的枠組みと実データの双方において,リズムデータ解析技術の新たな応用先を開拓し,さらなる科学的貢献を目指します.
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)