Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
化学反応系がもつ情報幾何学的構造が近年指摘された。当研究では、反応速度などの化学反応がもつ性質を明らかにすることを目指す。また、化学反応をネットワークとして解釈するとハイパーグラフと呼ばれるものになることが知られているが、一般のハイパーグラフにおけるダイナミクスの特徴づけを行い、機械学習・AIなどへの応用を目指す。
本研究では化学反応系がもつ情報幾何学的構造を明らかにし、特に反応速度・収束レートとルジャンドル変換を規定するポテンシャル関数の関係を明らかにすることを目指した。物理学と情報幾何学を融合させる研究が盛んになり始めており、例えばフォッカー・プランク方程式で記述されるような拡散系などがあり、多くの成功を収めている。一方で、多くの既存研究では線形な方程式が研究の対象になっており、ルジャンドル変換の構造や情報幾何学的な構造は比較的単純であった。そのため本来一般の凸関数に対して美しい構造を提供する情報幾何学の力が十分に利用されたといは言い難い。そこで、我々はBregmanダイバージェンスと呼ばれる擬距離を考え、凸構造を導入した。化学反応系はミクロにもマクロにも物理学と極めて深い関係があるだけでなく、化学量論で現れる基礎方程式は一般には非線形である。結果的にルジャンドル変換の構造や情報幾何学的な構造はより複雑で多様性があることが期待される。また化学反応系を非線形システムとして捉えなすことで、機械学習アルゴリズムの設計の指針を立てることが可能になる。さらに理論を一般のグラフ上のダイナミクスに対する情報幾何学と構成することができるも可能である。情報幾何は極めて広い概念であるため、ここでは特に自然勾配法と呼ばれる手法に着目し、化学反応を解析することを目指した。上記のアプローチにより、これまでに情報幾何の中でも自然勾配法と呼ばれる手法に着目し、一般の化学反応の速度限界に関する新しい解析手法を提案した。その結果はPhys. Rev. Eに採択が決定している。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
情報幾何の研究の中で提案された自然勾配法を用いて、化学反応の速度限界を解析する手法を提案し、その結果がPhys. Rev. Eに採択された。この結果より、進捗は順調であると言える。
化学反応の構造の詳細を考慮した解析手法を提案することと、量子情報幾何を考慮した最適化手法・機械学習的手法を提案することを目指す。