Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
細胞競合とは、組織中に生じた変異細胞(敗者)が周囲の正常細胞(勝者)との相互作用を介して排除される現象である。研究代表者はこれまでに、勝者細胞に近接する敗者細胞で特異的に発現上昇する遺伝子群を探索した。その結果、敗者細胞ではギャップ結合タンパク質が発現上昇していることがわかった。本研究では、ギャップ結合の局在・動態をクロススケールに計測し、これによって制御されるシグナルの遺伝学的解析を行うことで、細胞競合時に勝者細胞に近接した敗者細胞で細胞死が起こるメカニズムを明らかにする。
細胞競合とは、組織中に生じた変異細胞や異常細胞が周囲の正常細胞との相互作用を介して排除される現象である。これまでに、ショウジョウバエ上皮中でタンパク質合成能の低下を引き起こす変異細胞は、正常細胞に近接すると細胞非自律的にオートファジー活性を上昇し、これにより細胞死が引き起こされることを見いだした (Nagata et al., Dev Cell, 2019)。さらに、がん原性細胞(勝者)が周囲の正常細胞(敗者)に細胞死を誘導して腫瘍領域を拡大するタイプの細胞競合も同様のメカニズムによって制御されることを見いだした(Nagata et al., Curr Biol., 2022)。しかしながら、細胞非自律的現象である細胞競合において最も重要な点である「なぜ勝者細胞に近接する敗者細胞でのみオートファジー活性が上昇するか」については分かっていなかった。そこでこれを明らかにするために、勝者細胞に近接する敗者細胞特異的に発現上昇する遺伝子群を探索した。その結果、敗者細胞ではギャップ結合タンパク質が発現上昇していることがわかった。さらに詳細な解析を進めたところ、細胞内ではギャップ結合タンパク質とオートファゴソームの局在が一致しており、この局所構造の時空間的な制御によりギャップ結合がオートファジーによって分解されている可能性が示唆された。そこで本研究では、ギャップ結合タンパクの局在・動態をクロススケールに計測し、これによって制御されるシグナルの遺伝学的解析を行うことで、細胞競合時に勝者細胞に近接した敗者細胞でオートファジー依存的細胞死が起こるメカニズムを明らかにすることを目的とした。
3: Progress in research has been slightly delayed.
ギャップ結合とオートファゴソームの局在にが一致していることがわかったものの、それが細胞競合のメカニズムにどのように寄与するかは明らかにできていない。一方で、オートファジーの下流の細胞死誘導メカニズムについては新たに転写因子Xrp1の発現上昇が関与することがわかった。具体的には、ギャップ結合依存的なオートファジーの下流では、Xrp1が特異的に発現上昇し、これにより細胞死遺伝子hidの発現が上昇することで細胞死が引き起こされることを見いだした。また、ギャップ結合を通りうる分子の遺伝学的解析も進めており、これにより上流メカニズムも明らかにしようとしている。
今後はギャップ結合の局在がどのように細胞競合メカニズムに関与するかの解析を進める。また、引き続きギャップ結合を通りうる分子についてのイメージング解析を進めることで、細胞競合の上流メカニズムを完全に明らかにする。