Publicly Offered Research
Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A)
クラスリン被覆部位は、多種のタンパク質が空間的に制御された状態で局在し、膜受容体のエンドサイトーシスを引き起こすメゾ複雑体である。様々な成長因子の受容体であるHERファミリー(HER1/EGFR, HER2-4)のエンドサイトーシスの遅延は、がん細胞の悪性化と関連している。本研究では、クラスリン被覆部位でのHERのエンドサイトーシスの遅延機構と局所シグナル伝達を解析する。光の回折限界以下の領域のクラスリン被覆部位内の分子複合体の解析は、独自に開発した多色超解像顕微鏡法IRISを用いる。そしてクラスリン被覆部位でのHERを含むメゾ複雑体の機能を明らかにする。
HERファミリータンパク質の一つである上皮成長因子受容体(EGFR)は、多くの腫瘍で発現が亢進し、増殖シグナルを活性化するため、分子標的薬の主要な標的である。EGFRのエンドサイトーシスは、その増殖シグナルを負に制御することから、その分子機構は、がん細胞の悪性化において重要である。エンドサイトーシスに関わる分子の多くは同定されているが、細胞内で機能している分子複合体の実像は、光学顕微鏡の分解能以下の現象であるため、十分には明らかにされていない。応募者は、抗血清からの抗体精製、蛍光標識、Fab断片の作製方法を詳細に検討し、内在性タンパク質に結合解離する抗血清由来のFabプローブを開発した。そのプローブを使った多色超解像顕微鏡IRISによって、1つのクラスリン被覆部位での8つの内在性タンパク質(EGFR、Grb2、トランスフェリン受容体と5つのクラスリン被覆部位構成タンパク質)のクラスター状の局在を発見した。さらにこれらのタンパク質の局在の空間的な相関性を評価する画像解析PC-coloringを開発し、それらの分子複合体の分布を明らかにした。特にEGF刺激に応じて、クラスリン被覆部位の縁の外側からEGFR、Grb2とクラスリン被覆部位構成タンパク質の層状の分子複合体形成を発見した。Grb2は、SH2ドメインでリン酸化したEGFRと結合し、SH3ドメインでプロリンリッチモチーフをもつEps15やDynaminといったクラスリン被覆部位に局在するタンパク質と結合できる。クラスリン被覆部位の縁での層状の分子複合体は、Grb2を介してEGFRをクラスリン被覆部位にリクルートする複合体の構成をナノメートルスケールで明らかにした成果である。これらの成果は、米国の国際学術雑誌「Structure」に発表された。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
ウサギ抗血清に最も多く含まれるIgGクラスの抗体は、抗原結合部位を2つもつため、一般的に抗原と強く結合する。この抗血清から抗原に結合解離する蛍光プローブを作製するため、抗体の蛍光標識方法と抗原認識部位を1つにしたFab断片の作製方法を詳細に検討した。その結果、抗体を抗原ビーズに結合させ、抗原結合部位を保護した状態で、蛍光標識することで、非特異的な結合の少ない蛍光抗体が得られた。この蛍光抗体からFabを作製し、さらに再精製することで、非特異的な結合が少なく、標的に結合後、解離するFabプローブの作製に成功した。このFabプローブは、抗体が結合できる限界密度の3.6倍から6倍の高密度で内在性の標的タンパク質を標識した。このFabプローブは、数十ミリ秒から数百ミリ秒間、標的に結合していた。そこで複数フレームに渡って同じ標的に結合しているFabプローブの蛍光中心点を平均化することで、標的の位置精度を高め、IRIS超解像画像の分解能を約2倍に改善した。さらに得られた多色超解像画像のピクセルで分子局在の相関性を評価する画像解析PC-coloringを開発した。PC-coloringは、主成分分析とクラスター分析を用いて、画像ピクセルを標的分子の強度比に基づいて分類する。IRISによる高密度標識と高分解能は、タンパク質レベルの大きさのピクセル(5 nm)の分類、すなわち同一の分子複合体内の構成分子比でピクセルを分類することを可能にした。この分類したピクセルで、分子局在の相関性を2つの標的分子間の相関係数を計算することで評価する。これらの要素技術の開発によって、クラスリン被覆部位の縁での層状の分子複合体形成が明らかにされた。
本研究で明らかとなったクラスリン被覆部位の縁でのEGFRとGrb2を含む層状の分子複合体は、EGFRをクラスリン被覆部位にリクルートさせる複合体と考えられる。次にEGFRをエンドサイトーシスさせる分子複合体の構成を明らかにする。そのために3次元IRIS多色超解像イメージングを行う。マイクロミラーを使った補償光学系装置MicAO(フランス)は、Astigmatismによって、蛍光1分子の高さ情報を得ることができる。多数の蛍光1分子の中心点のxyzの情報を用いて画像を再構築することで、標的タンパク質の3次元超解像画像を得る。またエンドサイトーシス後期に集まり、膜を切断するdynanminに対する結合解離プローブを作製し、その分子局在を可視化する。これらの方法で陥入構造に取り込まれたEGFRを同定し、その近傍の内在性タンパク質の分布を可視化することで、EGFRをエンドサイトーシスさせる分子複合体の構成を明らかにする。さらにこの分子複合体に対して、EGFRのエンドサイトーシスを遅延させるHER2やHER4の関与を明らかにする。
All 2025 2024
All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)
Structure
Volume: 33 Issue: 6 Pages: 1-10
10.1016/j.str.2025.03.012