2015 年 71 巻 5 号 p. I_143-I_149
先の東日本大震災からの復興や,高い確率でその到来が予測されている首都直下型地震及び東海・東南海地震等に対する防災・減災の観点からしても,公共事業の重要性は近年一層高まっていると考えられる.そうした公共事業の実施に当たっては,国民世論並びに世論形成に影響を及ぼし得るメディアの報道が重要であるといえる.ところがそうしたメディアの主要な一つである新聞の,近年の報道が公共事業に対し批判的な傾向であることが示唆されている.ついては本研究では,既往研究からさらに範囲を広げ,戦後から現代までの日本における大手新聞社の公共事業に対する報道傾向を分析した.その結果,その論調は戦後徐々に批判的なものへと変遷していき,特に2000年代の論調は他の年代のそれに比べても極端に否定的な論調であったことが示唆された.