研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05822
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芝内 孝禎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00251356)
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研究分担者 |
戸川 欣彦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00415241)
和達 大樹 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (00579972)
小林 研介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10302803)
永崎 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 首席研究員 (20242018)
大串 研也 東北大学, 理学研究科, 教授 (30455331)
花栗 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (40251326)
求 幸年 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40323274)
岡崎 浩三 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40372528)
遠山 貴巳 東京理科大学, 先進工学部物理工学科, 教授 (70237056)
SHANNON Nic 沖縄科学技術大学院大学, 量子理論ユニット, 教授 (70751585)
木村 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80323525)
有田 亮太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (80332592)
有馬 孝尚 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90232066)
紺谷 浩 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90272533)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
231,530千円 (直接経費: 178,100千円、間接経費: 53,430千円)
2023年度: 31,330千円 (直接経費: 24,100千円、間接経費: 7,230千円)
2022年度: 51,090千円 (直接経費: 39,300千円、間接経費: 11,790千円)
2021年度: 83,720千円 (直接経費: 64,400千円、間接経費: 19,320千円)
2020年度: 15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)
2019年度: 49,400千円 (直接経費: 38,000千円、間接経費: 11,400千円)
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キーワード | 電子ネマティック / スピン液晶 / 高温超伝導 / 自己組織化 / 対称性の破れ / ネマティック / 回転対称性 / 電子液晶 / 量子多体効果 / ソフトマター / 量子液体 |
研究開始時の研究の概要 |
本新学術領域研究では、現代の物性物理学の中核をなす磁性・金属絶縁体転移・超伝導のそれぞれの分野において独立に研究され始めている、液晶に類似した「スピン液晶」、「電荷液晶」、「電子対液晶」と言うべき新しい電子状態に着目し、これらを体系化した「量子液晶」の学理を構築する。相互関係の薄かった研究者間の有機的結合を促進するため、領域内外に開かれた共通設備を整備し、若手研究者の交換プログラム等を活用し、共同研究を企画する。若手育成および国際化には特に注力し、国際研究ネットワークを構築して「量子液晶」の概念を物質科学の学術領域として確立する。
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研究実績の概要 |
本総括班では、研究活動支援、共通設備管理運営、若手育成支援、広報活動、国際活動支援の5つの部会を設け、領域の運営を行っている。2022年度では、第2期公募研究として26名の研究代表者をお迎えし、6月に2日間にわたるキックオフミーティングを東京大学柏キャンパスにて開催した。感染対策により長らくオンライン開催が続いたが、対面が主となる開催が可能となった。 研究活動支援として、11月に物性科学に関連した新学術領域研究・学術変革領域研究(A)が合同で開催する第16回物性科学領域横断研究会(オンライン開催)を主催し、領域紹介や研究発表などを行った。12月8日から10日には、令和4年度領域研究会を名古屋大学で開催し、活発な議論を行った。さらに、1月6日、7日に若手を中心とした議論の場として、量子物質開発フォーラムを東北大学で開催した。また、3月に行われた日本物理学会2023年春季大会では、共催シンポジウム(領域8,3,6,7)「金属、スピン系、超伝導体における様々な量子液晶状態」を開催し、300名近い聴衆を集め、活発な議論が行われた。 共通設備管理運営では、昨年度までに導入したすべての共通設備が順調に稼働している。若手支援として、コロナ禍でストップしていた若手海外派遣支援を再稼働させ、10名の若手研究者の支援を行った。また、領域研究会にて、第4回QLC若手研究奨励賞を2名に授与した。広報活動としては、領域ホームページの充実化を図るとともに、2編のニュースレターを発行し、関係者に送付・公開した。さらに、領域の動画サイト「QLCチャンネル」では、研究成果の解説に関する5本の動画を公開した。 国際活動として、欧米各国を含む10の共同研究ネットワークを結ぶ国際プロジェクトQuantum Materials Accelnetに日本を代表して参画した。これを利用し、若手研究者の国際交流を加速する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本新学術領域研究では、様々な固体物質において量子多体効果により発現する、液晶に類似した電子状態を対象とし、「量子液晶」という概念によって統一的に取り扱うことにより、その普遍性と多様性の基礎学理を探求することを目的としている。現在までに、様々な新規量子液晶状態が新たに見出され、実験と理論の連携により、その理解も着々と進んでいる。2021年度に行われた中間評価では、、A+(研究領域の設定目的に照らして、期待以上進展が認めれる)の評価結果を得ている。 2022年度では、新しい超伝導メカニズムとして理論的に提唱されていた、「量子液晶ゆらぎによる電子対形成」に関して、反強磁性などの他の秩序を持たない、量子液晶秩序のみを持つ超伝導体Fe(Se,Te)において、量子液晶の量子臨界点の存在、およびその量子臨界点近傍で超伝導電子対強度が増大することを実験的に明らかにした。この結果は、量子臨界点において増大する量子液晶ゆらぎが超伝導を増強することを実証した初めての結果であり、量子液晶ゆらぎを媒介とした電子対形成が可能であることを示したものである。 国際的な認知も格段に進んでおり、量子マテリアルに関する研究ネットワークを結ぶ国際スーパーネットワークQuantum Materials Accelnetへの参画は、日本では本新学術領域「量子液晶の物性科学」のみである。 以上のことから、本新学術領域研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2023年度では、研究会等を対面のみの開催に切り替え、研究者の交流を促進し、量子液晶の物性科学の学理構築に向けて研究を加速する。 研究活動支援においては、物性科学領域横断研究会、領域研究会などを開催、QLCセミナーも充実化させる。また、好評を得ている論文投稿費に対する支援を継続し、領域メンバーの研究費の確保につなげる。 若手育成支援としては、国際会議や若手国際スクールへの参加支援を行うとともに、若手研究者の研究成果を議論し合う場として有効な、QLC若手コロキウムを継続的に開催する。また、国際スーパーネットワークQuantum Materials Accelnetプログラムを活用し、本領域のメンバーの研究室に所属する若手研究者の短期海外滞在や、メンバーの研究室での外国のポスドクの滞在受け入れ等を進め、国際共同研究を推進する。広報活動では、引き続きQLCチャンネルの充実化と年2回程度のニュースレターの発行を目指し、量子液晶の概念の浸透を目指す。また、量子液晶に関する解説記事の執筆を行う。 国際活動支援については、8月8-10日の日程で北海道大学にて、国際会議「International Conference on Quantum Liquid Crystals 2023 (QLC2023)」を開催し、国際的な浸透をさらに推し進める。
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