研究領域 | 表面水素工学:スピルオーバー水素の活用と量子トンネル効果の検証 |
研究課題/領域番号 |
21H05097
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研究種目 |
学術変革領域研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 浩亮 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90423087)
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研究分担者 |
青木 芳尚 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50360475)
日沼 洋陽 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80648238)
本倉 健 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90444067)
三輪 寛子 電気通信大学, 燃料電池・水素イノベーション研究センター, 特任准教授 (90570911)
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研究期間 (年度) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 表面水素工学 / スピルオーバー / 量子トンネル効果 / 水素スピルオーバー |
研究開始時の研究の概要 |
本領域では、スピルオーバーにより生成した活性水素種を使いこなすための制御因子を正しく理解し、またその画期的な活用法を提案する。さらに、ポテンシャル障壁を透過して化学反応が進行する『量子トンネル効果』の関与を検証し、従来の速度論的・熱力学的概念を覆す新たな反応制御のパラダイムとして利用するための学理(表面水素工学)構築を目指す。目的達成のため、材料化学、触媒化学、電気化学、表面科学、理論計算分野を索引する次世代が、新材料合成、新機能発現、新原理の創出をターゲットに連携する。
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研究実績の概要 |
気相の水素分子が、酸化物表面上に吸着した金属を介して高活性な単原子として流れ出し、高速に拡散する『水素スピルオーバー』現象の原理原則は未だブラックボックスである。本領域では、スピルオーバーにより生成した活性水素種を使いこなすための制御因子を正しい理解、その画期的な活用法の提案を目的とする。さらに、ポテンシャル障壁を透過して化学反応が進行する量子トンネル効果の関与を検証する。目的達成のため、材料化学、触媒化学、電気化学、表面科学、理論計算分野を索引する次世代が、新材料合成、新機能発現、新原理の創出をターゲットに連携する。得られる日本発の卓越した成果は、動的水素を自在に操る次世代水素社会のキーテクノロジーとなる。 実験班の森(A01)、本倉(A02)、青木(A03)は、それぞれ革新材料合成、新触媒プロセス、電気化学セルの開発に取り組み、水素スピルーバーの新たな利用法を提案した。同じく実験班の三輪(A04)は、水素様素粒子であるミュオンをプローブにスピルオーバー水素の動的な挙動を直接観察し、電荷、存在位置、拡散速度などの基礎情報の取得を目指した。理論計算班の日沼(A05)は、スピルオーバーメカニズムの理論的・系統的理解を独自に進め、さらに実験班に対し理論的裏付けの提供、あるいは理論的な提言を行った。 また、領域会議を2回開催して班員間の連携の場を提供した。特に理論計算班日沼(A05)、表面解析班三輪(A04)との情報共有を重視し、理論的裏付けの提供、あるいは理論的な提言を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A01班(材料化学・森)では、還元力の強いスピルオーバー水素を駆動力とし、特殊合金ナノ粒子、触媒材料として全く未開拓なハイエントロピー合金ナノ粒子合成技術へと拡張できた。研究分担者の支援により、環境制御TEMを利用した生成過程を可視化に成功した。A02班(触媒化学・本倉)では、固体材料・有機分子・金属錯体を触媒活性点として精密に制御・集積させ、水素スピルオーバー現象の特長を最大限引き出した触媒反応システムが構築できた。A03班(電気化学・青木)では、固体表面上のスピルオーバー拡散が、プロトン/電子、またはヒドリド/電子の両極性拡散であるという仮説を実証できた。A04班(表面科学・三輪)は、A05班と協力し、水素様素粒子であるミュオンをプローブとして水素の状態を原子レベルで理解すことに成功した。A05班(理論化学・日沼)では、電荷密度の等密度面の凹凸をもとに、H拡散を自動判定する手法を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は特に水素スピルオーバー現象と量子トンネル効果の関係性の解明に重点を置き課題を推進する。物質を粒子として扱う古典力学では,化学反応はアレニウスの式に従う。一方、電子や質量の軽いH原子では波動性が顕著であるため,量子トンネル効果によってポテンシャル障壁を透過して化学反応が進む場合がある.重水素原子(D)は水素原子(H)に比べ障壁を透過しにくく,大きな同位体効果が観測できる.そこで水素スピルオーバー現象と量子トンネル効果の関係性を実験的に検証する。一方で、A05班との連携で、DFT計算を用い量子トンネル効果が主体的になるクロスオーバー温度(Tc)を求め、その妥当性を評価する。これらを総合的に判断し、最終的に量子トンネル効果が発現する因子を同定する。 さらに、全体領域会議を年2~3 回開催して班員間の連携の場を提供する。また、班員の研究支援として、SPring-8、KEK-PF、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターの共同利用機器を利用できるように便宜を図る。
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