研究領域 | 量子クラスターで読み解く物質の階層構造 |
研究課題/領域番号 |
18H05404
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 隆司 東京工業大学, 理学院, 教授 (50272456)
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研究分担者 |
近藤 洋介 東京工業大学, 理学院, 助教 (00455346)
若狭 智嗣 九州大学, 理学研究院, 教授 (10311771)
栂野 泰宏 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 協力研究員 (20517643)
関口 仁子 東京工業大学, 理学院, 教授 (70373321)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
332,280千円 (直接経費: 255,600千円、間接経費: 76,680千円)
2022年度: 50,180千円 (直接経費: 38,600千円、間接経費: 11,580千円)
2021年度: 72,670千円 (直接経費: 55,900千円、間接経費: 16,770千円)
2020年度: 83,200千円 (直接経費: 64,000千円、間接経費: 19,200千円)
2019年度: 55,900千円 (直接経費: 43,000千円、間接経費: 12,900千円)
2018年度: 70,330千円 (直接経費: 54,100千円、間接経費: 16,230千円)
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キーワード | 実験核物理 / 不安定核 / 3体核力 / 中性子クラスター / ダイニュートロン / 3体核力 / ダイ中性子 / 多中性子クラスター / 三体核力 |
研究実績の概要 |
原子核階層の「セミ階層」を形成すると期待される「多中性子クラスター」、および階層をつなぐ鍵を握る原子核層特有の「力」の2つの研究に挑んでいる。 1)多中性子クラスターの研究: 中性子過剰核表面に出現が期待される「多中性子クラスター」の生成を目指している。R3年度は、6n系構造の候補核10He生成実験に向けた準備を進め、その基幹検出器である反跳陽子検出器の開発を前年度に引き続き行った。並行して、ドリップライン近傍に出現するハロー核, 22Cおよび31Neの電磁応答の研究を進めた。 2)「力」の研究では: i)少数核子系プローブによる三体核力の研究、および(ii) (p,pN)反応のスピン観測量の完全測定による核力の精密化という2つの課題に取 り組んでいる。(i):少数核子系プローブによる三体核力の研究:3陽子・3中性子間の高精度測定を実現し、荷電スピン三重項三体核力を世界高感度でとらえることを目指してい る。令和3年度は陽子-ヘリウム3標的弾性散乱の全スピン相関係数測定を目指し、偏極ヘリウム3標的の偏極生成部とビーム照射部の分離を行った。標的偏極度70%、緩和時間100時間を達成。分離による減偏極度は実験遂行に支障ない事を示した。(ii):(p,pN)反応のスピン観測量の完全測定による核力の精密化: 阪大RCNPにおいて、原子核中での核子・核子 (NN) 散乱に対応する陽子ノックアウト反応を2アームスペクトロメータ系で測定する。R3年度は、前年度に導入した多線式飛跡検出器 (MWDC) 導入による性能向上を確認するために、東北大学 CYRIC にて 80 MeV 陽子を2nd-FPPに直接入射し、シンチレータ中の炭素および水素との散乱イベントを測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)多中性子クラスターの研究:反跳陽子検出器の開発が進展し、反跳陽子検出器の位置較正法の開発等が進んだ。並行して、22C,31Neの電磁応答の研究が進展し、前者の結果からは22Cは三体模型での説明が難しくそれを超える多体効果を取り入れることが必要であることがわかった。また、後者の研究では、二成分ハローという新しい中性子ハロー構造が見出され、博士論文研究としてまとめられた。 2-i)少数系プローブによる三体核力の研究:陽子・3He弾性散乱の高精度測定と核力をインプットとする厳密理論計算との直接比較から、スピン相関係数は、Δ励起を伴う三体核力(藤田・宮沢型、およひ荷電スピン三重項)に敏感な三体力に関する観測量を予測する事が解ってきた。重陽子-陽子弾性散乱で見られる三体力核力の効果の違いをより詳細に理解するため、実験値を用いて散乱振幅の解析を進めている。 2-ii)(p,pN)反応のスピン観測量の完全測定による核力の精密化:反跳陽子のスピン測定に向けて陽子検出器・偏極度計 (2nd-FPP) の開発を行なっている。シンチレータでの発光量の相関から、エネルギー損失情報の最適化が確認できた。また、MWDC の導入により位置分解能が向上し、p-p 弾性散乱と p-C 弾性散乱をより前方角度での分離に成功した。この角度分解能の向上により、偏極度計の性能の指標である Figure of Merit は約3倍向上することが期待される。以上の成果は修士論文としてまとめられた。 以上のように研究が進み新しい成果も出ていることから、研究は概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
1)多中性子クラスターの研究:11Liの陽子準弾性散乱によって多中性子クラスター候補核10Heを生成する実験を行う。そのため、CsI(Na)検出器(CATANA)とシリコン飛跡検出器から成る反跳陽子測定装置の建設を引き続き進め、陽子ビームを用いたテスト実験、および11Liビームを用いた本実験を行う。 2-i)少数粒子系プローブによる3体核力の研究:3陽子間力の高精度測定を実現し、荷電スピン三重項3体核力を世界最高感度でとらえるため、陽子・3He弾性散乱のスピン相関係数の完全測定に向けた準備を行う。実験値と厳密理論計算との比較から3体核力を精緻化する。 2-ii) (p,pN)反応スピン観測量の完全測定による核力の精密化:阪大RCNPにおいて、原子核中での核子・核子 (NN) 散乱に対応する陽子ノックアウト反応を2アームスペクトロメータ系で測定する。2核子を同時測定する事により核内核子の軌道を同定すると共に、有効密度が制御できる1s軌道に対して後方陽子のスピン完全セットを測定する。前方陽子のデータと組み合わせ、核内NN散乱の散乱振幅の世界初観測・決定を目指す。そのために、2nd-FPPフルシステムに対して偏極陽子ビームを用いて有効偏極分析能の較正を行うと共に、後方陽子のスピン完全セット測定に向けた準備を行う。
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