研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
18H05537
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中家 剛 京都大学, 理学研究科, 教授 (50314175)
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研究分担者 |
福田 努 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (10444390)
中平 武 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (30378575)
小関 忠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 施設長 (70225449)
清矢 良浩 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80251031)
木河 達也 京都大学, 理学研究科, 助教 (60823408)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
188,890千円 (直接経費: 145,300千円、間接経費: 43,590千円)
2022年度: 39,390千円 (直接経費: 30,300千円、間接経費: 9,090千円)
2021年度: 38,480千円 (直接経費: 29,600千円、間接経費: 8,880千円)
2020年度: 32,630千円 (直接経費: 25,100千円、間接経費: 7,530千円)
2019年度: 33,670千円 (直接経費: 25,900千円、間接経費: 7,770千円)
2018年度: 44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
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キーワード | ニュートリノ / 対称性 / 加速器 / 反粒子 |
研究実績の概要 |
T2K実験でニュートリノ振動を精密に測定することで、ニュートリノ質量とその混合を決定し、素粒子の対称性を精査する。対称性は、大統一理論などの新物理を解明する鍵であり、本領域の目標「新しい素粒子・宇宙像の創造」に向けて必要不可欠な研究対象である。目標に達成するために、ニュートリノビームデーターのさらなる蓄積、J-PARC加速器に設置した新型ビームモニターによるビーム特性の解析、新しいニュートリノ反応実験NINJAでのニュートリノ反応断面積測定、そしてニュートリノ振動解析の高度化を進めてきた。(1) 2021年4月末まで515kWのビーム強度でニュートリノビームデーターを蓄積し、新たに1.8×10^20陽子のデータを追加し、統計誤差を改善した。(2)「16電極ピックアップ型非破壊ビームモニター」でJ-PARC MRのビーム軌道のデータを取得し、入射前と入射後のビームエミッタンスを測定した。(3)NINJA実験のシンチレータ飛跡検出器について論文を投稿し(NIM A 1034, 166775 (2022))、反応断面積測定に向けたデータ解析を進めた。(4)T2K実験で、ニュートリノ反応で原子核効果をプローブできるTransverse Kinematic Imbalanceパラメーターを測定し、論文として発表した(Phys. Rev. D 103, 112009 (2021))。また、ニュートリノ振動解析を高度化し、その結果を論文として発表した(Phys. Rev. D 103, 112008 (2021))。本研究の目標の一つである振動パラメータθ_23に関して、sin^22θ_23=0.53+0.03-0.04と測定し、θ_23が45度以上である有意度を80%とした。CP対称性が成立している可能性を2σの有意度で排除し、CP対称性が破れている可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は新型コロナウィルス感染拡大が始まって1年経過したこともあり、行動制限がある状況でも、実験を着実に前進させることができた。国際共同研究において、外国人研究者の訪日が制限されていることから、日本にいる研究者だけで実験装置を稼働させ、大強度ニュートリノビームデータの収集に成功した。国際共同研究の現場はオンラインが主体となり、オンラインツールを駆使して、実験装置のリモートモニタリング、実験のリモートシフト、オンライン会議による研究打ち合わせ、データ解析、論文執筆を進めた。また、国際学会と国内学会における成果発表もオンラインが主体となり、多くの若手研究者がオンラインで学会に参加し成果を発表した。 研究成果に関しては、ニュートリノ振動解析の最新結果、Transverse Kinematic Imbalanceパラメーター測定によるニュートリノ反応における原子核効果の測定、鉄標的におけるニュートリノ反応における生成粒子多重度測定を実行した。加速器は4月の実験データ収集後の夏から、大強度化に向けた電磁石電源の交換作業のため1年間のシャットダウンに入った。加速器ビームの増強と理解、ニュートリノ反応の測定、ニュートリノ振動パラメーターの精度向上、と研究全般は順調に進展した。 具体的には、(1) 遺伝的アルゴリズムをベースに「16電極ピックアップ型非破壊ビームモニター」のデータを解析し、 ビームの多重極モーメントに対する最適解を求めた。 (2)NINJA実験で2019年度に取得したデータの解析を進めた。ニュートリノ反応で生成された荷電粒子の運動量再構成の精度を改善し、全データの1/9のニュートリノ反応を解析した。 (3)ニュートリノ振動の解析では、複数リングを持つ事象サンプルを解析に加え統計精度を改善することで、振動パラメータの測定精度を改善した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響が続き、海外からの共同研究者の入国予定が立たない状況が続いている。また、それと共に、サプライチェーンの分断等、実験装置製作に対する影響等もある。J-PARC加速器の大強度化は着実に進んでおり、2021年夏から始まったロングシャットダウンは2022年度初頭に完了し、その後は750kW以上での大強度運転が予定されている。新しいデータを取るまでは、これまでに取得したデータをより詳しく丁寧に解析することで、複数の反応形式でのニュートリノ反応断面積の測定、新しいデータサンプル(複数リング事象や有効体積拡大)の系統誤差を評価し、ニュートリノ振動測定の精度向上を目指す。 本研究課題では、(1)加速器のビームの理解を深めることによるビーム強度の増加、(2)ニュートリノ反応断面積の精密測定によるニュートリノ反応模型の理解の向上、そして(3)上記(1)と(2)の研究成果をまとめることで、ニュートリノ振動測定の高精度化を進めていく。(1)に関しては、J-PARC加速器の電源増強により2022年度から飛躍的なビームパワーの向上が計画されていて、ビームの理解はより重要となっていく。(2)に関しては、福田を中心に複数の博士院生が協力して、データの解析進度を上げていく。(3)に関しては、コロナの影響でビームタイムが減っていることを逆手に取り、より多くの労力を物理解析に注力していく。現在、θ23の測定精度とCP対称性の破れのパラメータに対する感度は世界最高を達成しているが、さらなる改善を目指していく。
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