研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
19H05674
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 求 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80551499)
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研究分担者 |
波間 茜 (久保田茜) 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70835371)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
75,140千円 (直接経費: 57,800千円、間接経費: 17,340千円)
2023年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2022年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2021年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2020年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
2019年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
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キーワード | 概日時計 / 細胞解析 / シロイヌナズナ / 細胞運命決定 / 長距離シグナル伝達 / 周期と変調 / 1細胞解析 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの1細胞トランスクリプトームにおける空間解像度の問題を解決するために3次元1細胞トランスクリプトームの系を確立するとともに、申請者らが開発した時系列データの再構成技術と組み合わせることで4次元1細胞トランスクリプトームを可能にし、細胞運命決定における周期的な遺伝子発現動態が持つ意味を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、概日時計が植物の分化や根毛伸長、栄養素の取り込みなど多面的な影響を及ぼしていることを明らかにした。 【植物の分化と概日時計】 ES細胞やiPS細胞といった動物細胞では概日リズムが見られず、発生が進むにつれて概日リズムが見られるようになる。植物細胞においても側根原基や魂胆分裂組織では概日時計の位相は常にリセットされていると考えられており、概日リズムの形成と植物の細胞運命決定には密接な関連があると予想されていた。しかし、植物のみ文化細胞は植物組織の深部にあり、また数も少ないことから、概日リズムの形成と細胞運命決定の因果については不明のままであった。本研究では、葉の細胞を脱分化しそこから維管束細胞へと細分化する分化誘導系を用いることで、分化過程における1細胞時系列トランスクリプトーム解析から、概日リズムの形成過程を解析した。その結果、概日リズムの形成は主要な分化マーカの発現に先立って起こっており、最初に遺伝子発現が増加するLUXと呼ばれる時計遺伝子が分化に重要な遺伝子のプロモーターに結合し、転写を制御していることを明らかにした。 【根毛伸長と概日時計】 根毛伸長は概日時計によって制御されており、周期的な根毛長のリズムを示すことを新たに明らかにした。さらに接ぎ木実験や部分照射実験により、地上部の概日時計が根に何らかのシグナルを伝達していることも示され、概日時計の情報が長距離シグナル伝達されていることを示す新たな証拠が得られた。 【栄養素の取り込みと概日時計】 地上部から根へと時間情報が伝達されることが示された一方で、根から地上部への時間情報の伝達は長い間不明であった。接ぎ木と栄養欠乏培地を組み合わせることで、根の時計遺伝子PRR7がカリウムを中心とする陽イオンの取り込みに関わっており、その周期的な栄養素のリズムが地上部の概日リズムの安定化に寄与することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた1細胞トランスクリプトームの時系列解析から見つかった時計遺伝子の機能をハブとして、根における概日時計の役割の理解が大きく進んだ。論文もいくつか出ており概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
根毛伸長における概日時計の役割については、ビデオ画像からの機械学習により根毛伸長をより定量的かつ半自動で計測できるシステムの共同研究が実施中である。具体的には根が伸びる4日間程度の動画の各コマにおける根毛の長さと位置を自動で計測し、どの根毛がどの程度の速度で伸長するのかを計測できるようにする。これにより、多くの実験条件を調べることが容易になり、根毛伸長に関わる環境要因および遺伝的な要因の解明が進むと期待される。 さらに、根毛伸長の素過程が伸長速度と伸長の持続時間の2つの要素に分けられることを明らかにし、それぞれに関わっていると考えられる遺伝子をすでに同定している。今後、それらの遺伝子と概日時計の関係を精査することで、この分野における理解がさらに深まると期待される。
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