研究領域 | 超地球生命体を解き明かすポストコッホ機能生態学 |
研究課題/領域番号 |
19H05685
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大西 康夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90292789)
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研究分担者 |
稲橋 佑起 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (70645522)
松本 厚子 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (20300759)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
140,010千円 (直接経費: 107,700千円、間接経費: 32,310千円)
2023年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2022年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2021年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2020年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2019年度: 34,970千円 (直接経費: 26,900千円、間接経費: 8,070千円)
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キーワード | 希少放線菌 / 菌株分離同定 / 二次代謝産物 / 生合成遺伝子クラスター / 新規生体成分 / 菌株単離 / 二次代謝 / 生合成酵素 / 形態分化 / Actinoplanes / 胞子嚢 / 遺伝子発現制御 |
研究開始時の研究の概要 |
超地球生命体の生態系を微生物の種と機能に基づいて理解する「ポストコッホ機能生態系」を構築するためには、土壌優占種にとどまらず、希少微生物種の機能の解明が必要である。本計画研究は、希少放線菌に対象を絞り、モデル圃場等から未分離の希少放線菌を分離するとともに、既知種を含めた希少放線菌の新たな生理機能を明らかにすることにより、微生物の種と生理的性質の多様性を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
(1) モデル圃場を含む分離源からの希少放線菌の分離 従来法に工夫を加えた分離法として、(i)リゾチーム添加、(ii) ペプシン添加、(iii)抗生物質前処理を行い、(i)では32種、(ii)では7種、(iii)では5種の希少放線菌を新たに分離した。従来法でも24種の希少放線菌を分離した。このうち、13種はrDNA配列より新種であると考えられた。また、モデル圃場のコムギの根および根圏から21種の希少放線菌を分離した。一方、マイクロ培養アレイシステム(196ウェル)を使用し、同じサンプルから通常の方法では分離できなかった5種の希少放線菌を分離した。さらに、マイクロデバイスを用いた共培養による希少放線菌分離システムの開発・改良に取り組んだ。 (2) 希少放線菌の新たな生理機能の解明 これまでに単離した希少放線菌のうち、新規性が高いと考えられる株のうち生育が早い6株について、ゲノム配列解析を行った。HiSeqによるリシーケンスを行うなどしてほぼ完全なゲノム配列を取得でき、ゲノムマイニング研究を開始した。また、この6株を含む29株の培養液をLC/UV/MS解析を用いたPCスクリーニングに供し、4株から化合物の単離・構造決定を行った結果、3種の新規化合物の同定に成功した。さらに、アラゾペプチン生合成におけるジペプチド合成の詳細を明らかにし、論文発表した。一方、モデル希少放線菌Actinoplanes missouriensisの研究においては、昨年度に引き続き、胞子嚢マトリクス多糖や最外層にトリアシルグリセロールを含む胞子嚢壁に関して研究を進めるとともに、胞子嚢形成や胞子嚢開裂、胞子嚢内での胞子の成熟化・休眠および覚醒、遊走子の発芽に関する分子制御に関する研究を行った。これら制御に関係する新たな遺伝子候補を遺伝学的手法によって複数見出し、機能解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ培養アレイシステム(196ウェル)によって、従来法では分離できない希少放線菌が分離されやすくなることを示唆する結果が得られた。マイクロデバイスを用いた共培養システムも完成の目処が立ちつつある。従来法に工夫を加えた方法による希少放線菌の単離も順調に継続できている。新規性が高いと考えられる希少放線菌6株のゲノム解析を完了し、ゲノムマイニングも開始した。また、PCスクリーニングにより、3種の新規化合物の同定に成功した。放線菌二次代謝産物の生合成研究においても、着実な進展が見られた。モデル希少放線菌の研究においては、胞子嚢内での胞子の成熟化に関与するアミダーゼの同定と機能解析、胞子べん毛のアセンブリーに関わる新規制御機構の解析で大きな進捗があった他、形態分化の制御に関わる新たな候補遺伝子を順遺伝学的手法によって複数見出すことができた。以上の結果より、研究計画全体は、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ培養アレイの利用に関しては、底のない196ウェルアレイを用いた共培養システムの開発を完了させ、実際にこれを用いた菌株分離を行う。一方、引き続きPCスクリーニングによる新規化合物の単離・同定を進めるとともに、ゲノムマイニングにより、新規生合成遺伝子クラスターの解析を行うことで、機能未知遺伝子の機能解明に繋げる。一方、モデル希少放線菌に関しては、2021年度に引き続き、胞子嚢マトリクス多糖の構造決定、その生合成酵素の機能解明、胞子嚢壁のトリアシルグリセロールの合成と分解に関与する酵素の同定と機能解析に重点をおきつつ、形態分化のさまざまなステージでの遺伝子発現制御機構の分子メカニズムに関する研究を行う。一方、新たに、Sporichthya属放線菌のユニークな生活環に関する研究を開始する。
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