研究領域 | 変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot |
研究課題/領域番号 |
19H05701
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
野中 正見 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), グループリーダー (90358771)
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研究分担者 |
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
東塚 知己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40376538)
笹井 義一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (40419130)
佐々木 英治 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 主任研究員(シニア) (50359220)
碓氷 典久 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (50370333)
小守 信正 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 研究員 (80359223)
田口 文明 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (80435841)
木戸 晶一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 研究員 (40878394)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
99,840千円 (直接経費: 76,800千円、間接経費: 23,040千円)
2023年度: 18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2022年度: 21,580千円 (直接経費: 16,600千円、間接経費: 4,980千円)
2021年度: 21,580千円 (直接経費: 16,600千円、間接経費: 4,980千円)
2020年度: 21,840千円 (直接経費: 16,800千円、間接経費: 5,040千円)
2019年度: 16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
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キーワード | 海洋前線帯 / 黒潮 / 大気海洋相互作用 / 経年変動 / 予測可能性 / 黒潮・黒潮続流 / 海洋渦・海洋前線帯 / 大気海洋結合 |
研究開始時の研究の概要 |
海洋前線帯とそれに伴う海洋渦の理解を更に進めるため、1.黒潮・親潮合流域やその下流域における表層湧昇及び海洋前線帯の形成機構、2.海洋渦やサブメソスケールの微細現象の形成過程、3.微細現象を含む海洋前線帯の変動に対する、生物生産や水塊、物質循環の応答、4.黒潮、黒潮続流、親潮等やそれらに伴う海洋渦活動の経年変動の予測可能性と変動機構、5.黒潮・親潮続流等の海洋前線変動への大気循環応答と、それがさらに再強制する大気海洋海氷結合系変動が十年規模変動、及びその予測可能性に果たす役割、6.海洋塩分の時空間分布に対する大気海洋相互作用に伴う降水の役割、以上の6サブテーマを緊密に連携して推進する。
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研究実績の概要 |
海洋の予測可能性について、準全球渦解像海洋予測システムを構築し、1993年から2020年まで毎年1月から3年間の過去予測実験を実施した。この結果から黒潮続流とメキシコ湾流の流速については2年半先まで、その周りに生じる海洋中規模渦の活動度については1年程度先まで有意な予測が可能であることが示された。 黒潮や黒潮続流の変動に関して、異なる海上風プロダクトで駆動した数値海洋モデル実験から、北太平洋の海上風の差に対する海洋応答によって黒潮親潮混合水域、親潮水域の海面水温に大きな差が生じることを示した。また、黒潮続流の十年規模変動に対する経度ごとの風応力の相対的寄与をロスビー波モデルによって定量化するとともに、黒潮続流と太平洋熱帯域の気候変動「エルニーニョもどき現象」との関係を明らかにした。一方で、日本の沿岸水位の第1主成分は、伊豆海嶺付近の黒潮流軸変動により励起される沿岸捕捉波により黒潮続流、日本沿岸および日本海等の広範囲の水位と同期することが示された。この沿岸捕捉波の伝播により対馬暖流の流量および熱輸送量が変化し、日本海貯熱量の変動にも寄与することが示唆された。また、北太平洋の亜熱帯―亜寒帯循環間の海水交換を詳しく解析したところ、渦や年々変動など時間変動の影響が重要であることが明らかとなった。 中緯度海洋の大気への影響に関して、特に黒海やカスピ海などの内海に注目し、その海面水温の季節変動に起因する海上風の加速・減速によって生じる下層風の収束・発散の影響が対流圏上層にまで及び、特に夏季において、日本を含む東アジア域上空でのジオポテンシャル高度や東西風にも気候学的に有意な影響が生じることが示された。一方、熱帯太平洋・インド洋の高海面水温域に於いて海上気温が海面水温に追随しない特異な海上気温上昇抑制現象を見出し、その要因についての解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・準全球渦解像海洋予測システムの構築:北極、南極の極域を除く海洋全域に関して、海洋中規模渦を含め強い海流等の経年変動の予測の可能性を調べることが可能となった。これは領域目標への大きな貢献であり、領域内の研究成果から大気変動等への重要性が示された海域について、その海流や水温の変動等の予測の可能性を調査することが可能となった。 ・北太平洋域の水平解像度1/90度の数値海洋モデルを構築し2年間の積分を完了:これまで進めてきた水平解像度1/30度でのサブメソスケール(10㎞スケール)の海洋構造とその変動に関する理解を更に進めることが可能となった。 ・日本海の貯熱量変動に関する研究の推進:日本海寒帯気団収束帯やそれに伴う日本海側での豪雪に関する研究において日本海から大気への熱・水蒸気の供給の重要性が示されてきた。これに関して、黒潮続流の変動に起因して日本沿岸に捕捉された海洋波動が伝播し、それによって励起された対馬暖流の変動が日本海の貯熱量変動に影響しうることが示された。これは豪雪を含む日本の気候変動の要因理解に対する重要な進展である。 これらの成果から、領域全体の目標への貢献、また、本課題の目標へ向け順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、6つのサブテーマを有機的に連携させながら推進する。これらの要素は互いに密接に関連しており、この体制により、海洋前線帯の変動とその役割について統合的な理解深化が可能となる。以下、6つのサブテーマ毎に具体的な計画を記述する。 1.湧昇及び前線帯の形成機構:亜熱帯域と亜寒帯域を結ぶ海流構造とそれに伴う海洋前線構造の形成において海洋中規模渦が影響を及ぼす機構を詳細に調べるため、高解像度の観測データと海洋モデル実験データを詳細に解析する。2.海洋微細現象の形成過程:北太平洋域における水平解像度約1kmの超高解像度海洋モデル経年積分データから微細構造の形成過程とその大気海洋相互作用への影響に関する解析を進める。3.微細現象を含む海洋前線帯の変動に対する生物生産や水塊、物質循環の応答:2種類の低次生態系モデルを組み込んだ渦解像北太平洋海洋モデルの過去再現実験を結果から、黒潮続流域の経年変動が生態系に及ぼす影響の解析を進める。4.海流と海洋渦活動の経年変動の予測可能性の評価と変動機構:昨年度までに進めた2年先までを予測する準全球渦解像過去予測実験結果から、準全球での海流や渦活動の経年変動の予測可能性を調査する。5.黒潮・親潮続流等の海洋前線変動と大気の相互作用、及びそれが予測可能性に果たす役割:黒潮等の海洋構造の変動を考慮することが大気予測に及ぼす影響の解析とともに、日本海の海洋長期変動機構と大気変動との関係に関する解析を進める。また、黒海やカスピ海等の内海が大気へ及ぼす影響を調査する。6.海洋塩分分布形成機構:海面塩分の季節変動や日本南岸の黒潮域における海面水温の経年変動に関する解析を推進する。
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