研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05709
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪井 康能 京都大学, 農学研究科, 教授 (60202082)
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研究分担者 |
奥 公秀 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 准教授 (10511230)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
86,320千円 (直接経費: 66,400千円、間接経費: 19,920千円)
2023年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
2022年度: 15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2021年度: 18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2020年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2019年度: 23,790千円 (直接経費: 18,300千円、間接経費: 5,490千円)
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キーワード | オートファジー / 液胞 / ミクロオートファジー / リソソーム |
研究開始時の研究の概要 |
オートファジーには多くの経路が存在し、かつそれらが連携することで細胞構成成分の分解を機能的に行っていると考えられている。 その中でミクロオートファジーはリソソーム(液胞)またはエンドソームと呼ばれる細胞内小器官の膜が直接変形して細胞質成分を分解に導く経路である。 この研究課題では、複数の酵母種(パン酵母やメタノール資化性酵母)を主な研究対象とし、ミクロオートファジーがどのようにして分解対象を認識するか、ということに加え、他のオートファジー経路などとどのように使い分けられて機能するか、ということを分子レベルで理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
ミクロオートファジーとは真核生物細胞のリソソーム(液胞)またはエンドソーム膜が変形して直接細胞質成分を取り込み分解する機構を指し、マルチモードオートファジー(多様なオートファジー経路)の一翼を担っている。本研究課題ではミクロオートファジーの分子機構の理解を進めること、またミクロオートファジーと他のオートファジー経路との機能連関(分担)を明らかにすることを目的としている。特に、これまでに細胞内の様々な膜変形に機能することが知られていたESCRTタンパク質と呼ばれる因子がどのようにミクロオートファジーにおいて機能するかを調べることに注力している。 本年度の研究により、ESCRTタンパク質を対象とした蛍光顕微鏡を用いた局在解析から、本タンパク質がメタノール資化性酵母 Komagataella phaffii のペルオキシソーム特異的ミクロオートファジーに直接的に作用することが強く示唆された。また、本酵母のペルオキシソーム特異的マクロオートファジー機能タンパク質を探索する新たな実験系を構築しそれを利用することで、複数のオートファジー経路に必須の酵素 Phosphatidylinositol 3' kinase (PI3K)のサブユニットタンパク質の同定に成功した。 出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae を対象とした研究から、脂肪滴特異的ミクロオートファジーにおけるESCRTタンパク質とユビキチンリガーゼとの機能連関が明らかとなった。すなわちESCRTタンパク質の局在が、昨年度までの本研究課題で同定したユビキチンリガーゼの活性に依存して変化すること、またESCRTタンパク質の一部が脂肪滴に表在することを見出した。これらのことから、ユビキチンリガーゼによるESCRTタンパク質の脂肪滴への呼び込み機能が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年急速に増えつつあるミクロオートファジー研究報告の多くが、ESCRTタンパク質の関与を報告している。しかしながら、これまでの研究ではESCRTタンパク質は直径約100 nm の小胞を形成して形成膜からくびり切る働きを持つとされており、様々な大きさの細胞小器官を取り込むようなリソソーム(液胞)膜の動態に本タンパク質がどのように機能するのかは不明な点が多い。本年度の研究から、ESCRTタンパク質が膜の変形だけでなく、その前段階にも機能することが示唆されたことにより、その機能がさらに詳細に解明されつつある点が重要な進展である。 メタノール資化性酵母 Komagataella phaffiiはペルオキシソーム特異的オートファジーの様式として、ミクロオートファジー、マクロオートファジーの2つを持つことから、マルチモードオートファジーの機能連関を研究するための最適なモデル生物である。今年度の研究から、これまではマクロオートファジーへの機能が示されていたPI3Kのサブユニットタンパク質がミクロオートファジーにも機能することが明らかとなった。これは本申請者がこれまでの研究で見出してきた、ミクロオートファジーにおける(マクロ)オートファジー様膜新生の過程を実証する新たな証拠であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ミクロオートファジーにおけるESCRTタンパク質およびユビキチンリガーゼの機能をさらに解明するために、本年度はユビキチンリガーゼによってユビキチン鎖を付加されるペルオキシソームや脂肪滴表在タンパク質の同定を目指す。同時にペルオキシソーム特異的ミクロオートファジーにおいて機能するユビキチンリガーゼを探索する。また脂肪滴特異的ミクロオートファジーの初期過程である脂肪滴-液胞膜の相互作用が、これまでに同定したユビキチンリガーゼやESCRTに依存するか調査する。 これまでの本研究課題で見出した、酵母を対象としたミクロオートファジーに関する知見を哺乳類細胞研究にも援用するためには、哺乳類細胞におけるミクロオートファジーモニター実験系の構築が強く望まれる。ミクロオートファジーではリソソーム内腔に輸送されるリソソーム自身の膜も分解されるため、リソソーム膜に局在するタンパク質LAMP1のターンオーバー速度はミクロオートファジー進行の指標となると考えられる。これまでの本課題研究により、哺乳類培養細胞においてLAMP1を蛍光色素でパルスラベルする実験系を構築しているが、未だこのLAMP1プローブの安定発現株が得られていない。本年度は複数の哺乳類培養細胞についてLAMP1プローブの安定発現株の構築を目指す。
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