研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05716
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
辻 勇人 神奈川大学, 理学部, 教授 (20346050)
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研究分担者 |
武田 洋平 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60608785)
福島 和樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70623817)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
130,260千円 (直接経費: 100,200千円、間接経費: 30,060千円)
2023年度: 25,220千円 (直接経費: 19,400千円、間接経費: 5,820千円)
2022年度: 26,650千円 (直接経費: 20,500千円、間接経費: 6,150千円)
2021年度: 28,210千円 (直接経費: 21,700千円、間接経費: 6,510千円)
2020年度: 30,550千円 (直接経費: 23,500千円、間接経費: 7,050千円)
2019年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
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キーワード | 有機合成化学 / 有機半導体 / 光機能性分子 / 環境応答性分子 / バイオ・環境調和高分子 / 光機能分子 / 光機能性材料 / 炭素ー炭素結合形成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、π電子系有機分子が持つ機能を水圏で活用することに焦点をあてた水圏機能分子の合成を行う。疎水的なπ電子系分子と親水的な生体・環境調和分子を融合することにより、水圏ー非水圏界面を接続する(つなぐ)水圏機能分子の合成および基礎学理の構築を目指す。そのために、班内班間の密接な共同研究を通じて研究課題を推進する。具体的には、分子配向制御による高機能化や、先端計測やシミュレーションに基づいた、水と材料の相互作用評価により得られる知見をフィードバックすることによる高機能化を行い、水圏電子・光・イオン材料等の開発へと展開する。
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研究実績の概要 |
(1)水圏電子機能材料の構築を目指して、辻らは両親媒性有機半導体分子を新たに設計し、その合成を達成した。この分子を用いて、A01の公募研究者との共同研究による堅牢な集合体の作成や、A03との共同研究による成膜・デバイス作成を検討する段階に移行している。集合体の構造と動態のシミュレーションについてもA02との検討を行い、水が入り込まない構造体が形成されることが示された。(2)環境応答・調和性を有する水圏光機能高分子の合成のために、辻の発光性分子と福島のバイオ・環境調和性を有する高分子との複合体を得た。水圏での発光挙動の観察を行い、水中でも発光効率の低下が見られないことを見出した。(3)辻らが前年度見出した水中での炭素骨格形成反応について、再現性良く反応が進行する触媒・温度条件を見出した。また、この反応の適用範囲を検討するための数種類の基質合成を完了した。 当初計画外・予想外の成果として、(4)辻らは生体の窓領域に当たる900nm付近で発光量子収率19%という、この領域としては高い効率を示す近赤外発光性色素の開発に成功した。また、これらの色素が含水溶媒中でサブマイクロメートルサイズの発光性集合体を形成することを、A03との共同研究で行った動的光散乱測定や蛍光顕微鏡観察から見出した。(5)福島らは有機分子触媒による重合において、水圏機能材料のビルディングブロックとなり得るイミダゾールやオキサゾールを含む化合物の直接生成法を開発した。(6)福島らは、天然由来物質のグリセロールから水との相互作用を促進する生分解性ポリカーボネートを合成し、これが血液適合性を示した。水との相互作用の向上は、ポリマー主鎖の加水分解促進にも寄与することも見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水圏光機能性材料について、辻は当初の期待以上の高い効率を示す近赤外発光性有機化合物を開発した。生体イメージング等に向けた基盤技術や分子設計指針を与えるものとして、今後の研究推進を加速する成果になると考えられる。 武田らはA02池本らと共同して、独自開発の発光性有機分子が湿潤条件下で可逆的に光吸収・発光の変化を示す要因を、発光分子と水との分子レベルの相互作用による理解に成功した。今後の学理構築に向けて重要な基盤情報が当初の計画以上の早期に得られたものと位置づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
水と調和し、水を制御するπ電子系分子および高分子の設計指針の確立と、水圏で機能を発揮する材料の創製を引き続き目指す。 辻らが開発した両親媒性電子機能性分子の集合化とデバイス化をA03と協働して行う。また、水分子との相互作用の評価をA02と共同で行う。発光性分子が含水有機溶媒中で形成する集合体を対象とする研究については、先端計測とシミュレーションを用いて構造解析を行い、水分子-有機溶媒分子-溶質分子-気相の分子レベルでの相互作用の理解を目指す。 武田らの刺激応答性ビルディングブロックを活用して、領域内研究者の有する親水性中分子材料や、福島の高分子材料に刺激応答性を付与した融合材料を合成し、水圏における刺激応答性光機能を精査する。デンドリマー型湿度応答性材料の水分子への応答機構を、A02の最先端計測およびシミュレーションとの協働により解明する。また、これまでに開発したナノサイズ孔を有する環状の遅延蛍光分子をコアとして親水性置換基を導入し、水分子の取り込みに応答する遅延蛍光材料を合成する。 福島らの界面水の制御に基づく生体親和性ポリマーの機能向上を進めるとともに、側鎖または主鎖に、辻・武田らの光機能分子や分子接着機能部位を導入したバイオ・環境調和高分子を合成し、A03と共同してその水圏における機能の発現や変化について調べる。A01内連携により、自己組織化の構造要素を導入した縮合系ポリマーに対して、分子としての配向や配列が水との相互作用にどのような影響を与えるのかについても調べる。また、水との相互作用の視点からポリマーの加水分解性を見直し、環境調和機能の向上に向けたフィードバックにつなげる。
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