研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05725
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今水 寛 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30395123)
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研究分担者 |
筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
140,920千円 (直接経費: 108,400千円、間接経費: 32,520千円)
2023年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2022年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2021年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2020年度: 26,650千円 (直接経費: 20,500千円、間接経費: 6,150千円)
2019年度: 35,490千円 (直接経費: 27,300千円、間接経費: 8,190千円)
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キーワード | 運動学習 / 身体認知 / 運動主体感 / 意欲 / 脳刺激 / 情動 / ヒト脳活動計測 / サル電気生理 / 意欲の操作 / 高精度経頭蓋交流刺激 / 発話 / 操作性の知覚 / 脳活動非侵襲計測 / サル電気生理実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,新学術領域研究「身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解」の計画研究として,身体認知や意欲などの正の情動が,運動学習を促進する過程を解明する.経験的に,身体認知や意欲は運動学習にとって重要であるが,それらが学習を促進する神経科学的なメカニズムは未解明である.人における心理実験と脳活動計測,サル電気生理実験を組み合わせ,神経基盤を解明するとともに,領域内の他の研究グループと共同で,計算論・システム論的なモデル化を行い,潜在的適応力を促進する技術の開発に資する.
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研究実績の概要 |
本研究課題では,超適応の観点から「身体認知や意欲などの正の情動が,運動学習を促進する」という仮説を検証,そのメカニズムを解明する.今年度の主な成果として,(1) 身体認知の一種である「運動主体感」(自身が運動を引き起こしているという感覚)が運動学習を促進することを複数の行動実験で明らかにした.特に,運動主体感の自発的な変動と,短期的な運動学習の効率に関係性があることを,心理実験で見いだした.(2)高精度経頭蓋交流刺激(HD-tACS)を用いて,運動主体感に介入する実験を開始した.具体的には,過去の研究から「右半球の下頭頂小葉と下前頭回付近の神経結合」が,運動主体感の判断に貢献するとの仮説を立て,これを検証する実験を行った.その結果,反同期条件において,ジョイスティックとカーソルの距離(≒予測誤差)と主体感評価の相関関係を,刺激なし条件と比較して有意に変化させることに成功した.(3) サルを対象とした非侵襲脳刺激により, 前頭連合野の複数の領域の意欲との関わりを明らかにした.サルを対象として反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による脳機能介入を行い,前頭葉の異なる領域の意欲への関わりを調べた.その結果,背外側前頭前野(dlPFC)の神経活動の促進によって,認知的な動機付けが増加することが示唆された.(4) 運動主体感と意欲との関係を調べるためのヒト・サル共通の装置を開発した.(5) サルを用いて, 大脳皮質の広い範囲から長期間安定して皮質表面電位を記録する方法を確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動主体感に関しては,実験的な操作で学習効率を変化させること,脳刺激による主体感の操作に部分的に成功し,主体感の操作で学習を促進する技術の開発に向けて大きく前進した.また,運動主体感が影響を与える学習要素と与えない要素があることが解り,今後の促進方法の設計に重要な示唆が得られた.意欲に関しては,大脳皮質において動機付けの認知的側面に関わっている領域を複数同定することができ,今後の神経活動の記録における主なターゲットを特定する事ができた.実験の方法論に関しては,ヒト・サルで共通した装置・課題を用いて神経活動を長期間にわたって記録するための基盤を確立することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として,1) 運動主体感を非侵襲脳刺激で操作しながら,fMRIで脳活動を計測する実験を行い,感覚運動情報と運動主体感の関係が変化するとともに,運動主体感に関連する脳領域の脳活動に変化が見られるかを調べる. 2) 運動の結果が予測できない新規な運動学習において,主体感が形成される過程を心理実験で明らかにする. 3) サルを用いた神経トレーシングにおいて,ネガティブな気分を抑制,意欲の生成や維持に関わっている回路を特定する. 4) サルを対象に,バーチャルリアリティ装置を使った心理物理学的実験を展開する.
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