研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H05730
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 順 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50233127)
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研究分担者 |
四津 有人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30647368)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
134,810千円 (直接経費: 103,700千円、間接経費: 31,110千円)
2023年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2022年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2021年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2020年度: 24,830千円 (直接経費: 19,100千円、間接経費: 5,730千円)
2019年度: 35,490千円 (直接経費: 27,300千円、間接経費: 8,190千円)
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キーワード | システム工学 / 数理モデル化 / リハビリテーション医学 / 姿勢制御 / 神経伝達物質 / 適応 / リハビリテーション工学 |
研究開始時の研究の概要 |
以下の3 点について研究を進める.1) マルチタスク遂行能力の評価法の確立.マルチタスクとして認知負荷下での姿勢制御を想定する.健常者と患者でのマルチタスク遂行能力の評価方法を確立する.マルチタスクの設計,および課題中の生理反応の計測プロトコルを樹立する.2) マルチレイヤ脳活動-身体統合モデルの開発.(a)脳活動ダイナミクスモデル,(b)感覚・運動制御系モデル,(c)身体筋骨格モデルの適切な接続によるモデル構築を目指す.3) モデルの検証 1)のデータを2)のモデルに組み入れ,モデル検証を行う.これより「神経伝達物質を考慮した行動遂行則の変容メカニズムの数理モデル構築」を目指す.
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研究実績の概要 |
- 神経系姿勢制御モデルに導入した下行路を模した制御の影響の検証:太田らは,姿勢制御における神経伝達物質の役割を考慮した数理モデル構築を行っている.本年度は,まず,網様体脊髄路と共に姿勢制御を司る前庭脊髄路を模した制御を,計算機モデルに導入し,前庭脊髄路の有無がもたらす影響を調べた.既存の神経系姿勢制御モデルに,以下の知見を基に新たに制御を導入した:1) 身体全体の筋活動を調整する;2) 頭部を安定した垂直位置に維持する;3) 脳幹内の前庭神経核において主に前庭感覚を受け取る;4) 伸筋には興奮性,屈筋には抑制性の効果を持つ.この神経系姿勢制御モデルを用いて,19 の関節自由度と94の筋を持つ筋骨格モデルの立位を維持させたシミュレーションでは,ほぼ全ての筋緊張条件で,前庭脊髄路ありの場合の足圧中心速度の値が,前庭脊髄路無しの場合の値より小さくなった. - マルチタスク下の姿勢制御における神経伝達物質の役割の検証:四津らは,マルチタスク下の姿勢制御における神経伝達物質の役割を検証している.1) パーキンソン病患者における,神経伝達物質がマルチタスクに与える影響の検証.2名の患者を対象とし,[静止立位]→[静止立位+計算課題]→[静止立位]のタスクを計測した.神経伝達物質の影響を検証するために,レボドパ製剤内服前および投与後の時点にて計測を行った.症状に日内変動が見られ,Center of pressureや筋電位も,部分的に連動する可能性が見られた.2)健常者の立位における随意動揺の姿勢制御の解析.健常者の立位における随意動揺の解析を行った.若年者10名を対象とし,体幹・骨盤・股関節等の関節角度,center of pressureの軌跡,体幹と下肢の表面筋電位を計測した.結果,健常者は重心移動の速度により体幹,膝の関節角度に違いがあった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した,以下の3つの目標を十分に達成できているため.1) 神経伝達物質の姿勢制御における役割の検証.パーキンソン病などの神経変性疾患患者では,マルチタスクの遂行に必要な機能が障害され,その背景には神経細胞の変性や神経伝達物質の異常が存在すると考えられている.そこでパーキンソン病で変化する神経伝達物質に着目し,マルチタスクの遂行における神経伝達物質の役割を検証する.2) 姿勢制御における神経伝達物質の役割を考慮したマルチタスク表現モデルの開発.神経伝達物質というミクロな情報と,その情報処理後の結果として現れる行動-生理反応というマクロな情報の統合を目指す.「マルチタスクの数理モデル」を開発する.3) 構築した数理モデルの検証.生体より得られたデータを用いて構築した「マルチタスクの数理モデル」の検証を行う.
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今後の研究の推進方策 |
本年度提案したモデルを用いて,パーキンソン病患者の異常姿勢の解析を行う.パーキンソン病がもたらす亢進した筋緊張に対し,異常姿勢は他の姿勢と比較し動揺の小さい立位が可能な姿勢の一つとなっている,という仮説を検証する.マルチタスクへの神経伝達物質の影響を調べるため,日内変動のあるパーキンソン病患者を対象に,静止立位(運動課題)×計算課題(認知課題)のパフォーマンスを評価する.
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