研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05735
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
大西 秀之 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (60414033)
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研究分担者 |
稲村 哲也 放送大学, 教養学部, 客員教授 (00203208)
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068)
木村 友美 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 講師 (00637077)
河合 洋尚 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30626312)
清水 展 関西大学, 政策創造学部, 客員教授 (70126085)
山内 太郎 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (70345049)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
75,140千円 (直接経費: 57,800千円、間接経費: 17,340千円)
2023年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2022年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2021年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2020年度: 15,730千円 (直接経費: 12,100千円、間接経費: 3,630千円)
2019年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | 認知・行動様式 / 身体 / 生存戦略 / 景観 / 環世界 / 陳地・行動様式 |
研究開始時の研究の概要 |
現生人類は、ホモ・サピエンスという単一の生物種でありながら、地球上の様々な自然環境に暮らし、それぞれの地で固有の社会や文化を形作るとともに、極めてバラエティに富む認知・行動能力を有している。こうした人類の認知・行動能力の多様性は、起源地であるアフリカからユーラシアに進出し、さらには南北アメリカやオセアニアにまで拡散した歴史プロセスの中で獲得されたものである。本研究班では、現生人類が移動・拡散する中で新たに進出し居住した極北圏、高緯度地帯、島嶼域、高標高地などの「フロンティア環境」を中心に民族誌調査を行い、そこでどのように適応し生存圏としてのニッチを構築しているか解明を試みる。
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研究実績の概要 |
本年度も、過去2年と同じく、まず個人の研究活動から領域全体に対する貢献までを議論し共有する機会として、本研究計画班の代表者・分担者・協力者が参加する班会議を二回開催した。具体的には、第1回会合において2020年度の活動結果を踏まえた上で、中間評価に対する成果の取りまとめを行い、当年度における個々のメンバーと班全体の調査研究を計画するとともに、調査データ・成果の比較検討を目的とした研究会合を設け情報共有に努め、領域全体に対する本研究班の貢献を策定した。第2回会合では、本年度の各メンバーの活動と今後の計画を報告するとともに、過去2年延期となった本計画班が中心となって開催するベーリンジアにおける人類集団の進出をテーマとする国際シンポジウムの計画などを議論した。 次に具体的な活動として、海外での現地調査が十分にできないなか、その代替として北海道と奄美群島でのスタディーツアーを実施した。また第5回・第6回の全体会議では、代表者1名・分担者5名・協力者5名が口頭発表・コメント・ポスター報告を行い、各自の調査研究計画と領域全体に対する貢献を提示した。なお詳細に関しては、本領域の『2021年度報告』(http://out-of-eurasia.jp/images/2021report.pdf)「B01班活動報告」(82-113頁)を参照願いたい。 以上のような活動を基に、本年度は、学術雑誌論文30本(和文10本・英文20本)、書籍掲載論文4本(和文3本・英文1本)、単著・編著8編(和文7編・英文1編)、発表講演22(日本語19・英語3)を刊行・報告することができた。各詳細に関しては、本報告と前掲書『2021年度報告』「業績」(178-182頁)を参照願いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も、昨年度に引き続き新型コロナ・ウィルス(Covid-19)感染症の世界的流行により、海外での民族誌(現地)調査を実施することができなかった。この代替策として、オンラインでの共同研究やユニット研究などを行うとともに、メンバーが参加するスタディツアーを企画した。 上記の班会議とスタディツアーによって、所属メンバーが個々の調査研究を超え、本計画班のみならず領域全体に対して、どのように貢献を果たすか検討する貴重な機会を設けることができた。とりわけ、北海道と奄美群島でのスタディツアーは、興味関心・対象地域・ディシプリンなどの違いを超え、本研究班に所属するメンバーが同じフィールドに赴き、日本列島の南北の周辺地域が国家の影響を受け変容する歴史プロセスに関して議論することができた。具体的には、①北海道ではアイヌ文化・民族に関するレクチャーを受け、狩猟採集民と国家との関係に関する視点を得ることができ、②奄美群島では大島北部と加計呂麻島の史跡を訪問しノロ祭祀などに関する現地の文化実践、コスモロジーに関係するランドスケープを確認するとともに、琉球弧における人類集団の移住と定着を考察することできた。こうした成果は、時間軸の視角を人類史レベルに拡大し、民族誌フィールドから文明を読み解く、という本研究計画班が掲げる目的を共有し推進する貴重な機会となった。 また本年度は、過去3年間の調査研究の成果の集積として、一般書・学術書を数多く出版することできた。これらの出版では、①文明化を忌避する社会のメカニズムに関する理解、②文明に影響を受け変容する周辺の記述、③先史時代にまで長期的に時間軸を拡張させた追究、など本計画研究が議論してきた視角が提示されており、本新学術領域が目的とする「文明創生メカニズムの解明」に対して一定の貢献ができたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画は、まず新型コロナ感染症問題により停滞していた調査研究の推進、またその上で中間評価の結果を受け最終的に領域全体に対する各メンバー及び本計画研究全体としての貢献の追求、という2点に大きく収斂される。もっとも、具体的に行うことは、過去3年間の成果を踏まえ、各メンバーが自らのテーマ・方法。ディシプリンに基づき、それぞれ調査対象とする社会に暮らす人々の認知や行動を形成している要因や背景に多角的・包括的なアプローチを試み、出ユーラシアにより多様な自然環境に進出・適応を果たすとともに文明形成の基盤となった現生人類のニッチ構築能力の究明である。 以上のような計画の下、次年度(2022年度)以降は、新型コロナ感染症に関する国内外の社会情勢を見極めつつ、まず過去3年度同じくメンバー全員が参加する会合の機会を設け、2021年度の活動結果を踏まえるとともにコロナ禍で実施できなかった現地調査を中心に該当年度における個々のメンバーと班全体の計画を決定する。これに加え、次年度は、本計画研究班における主要な目的を達成するため、次の二つの計画を実施する。まず一つは、旧大陸(ユーラシア)から新大陸(アメリカ)への人類移動のルートの究明を目的とした「ベーリンジア国際シンポジウム」の開催である。このシンポジウムは、本来2021年開催を計画していたがコロナ禍によって延期を余儀なくされていたが、領域全体にとって必須のテーマであるため、次年度の最優先課題として実現する。いま一つは、計画研究班を超えたメンバーとの共同研究の成果発信である。こちらに関しては、領域全体の重要課題である景観をテーマとした学術書の出版を射程に入れ、A01~03班に所属する考古学を専門とするメンバーと共同研究を推進する。
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