研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05736
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
入來 篤史 国立研究開発法人理化学研究所, 未来戦略室, 上級研究員 (70184843)
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研究分担者 |
齋木 潤 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60283470)
川畑 秀明 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (70347079)
齋藤 亜矢 京都芸術大学, 文明哲学研究所, 教授 (10571432)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
284,310千円 (直接経費: 218,700千円、間接経費: 65,610千円)
2023年度: 50,700千円 (直接経費: 39,000千円、間接経費: 11,700千円)
2022年度: 51,220千円 (直接経費: 39,400千円、間接経費: 11,820千円)
2021年度: 51,610千円 (直接経費: 39,700千円、間接経費: 11,910千円)
2020年度: 53,040千円 (直接経費: 40,800千円、間接経費: 12,240千円)
2019年度: 77,740千円 (直接経費: 59,800千円、間接経費: 17,940千円)
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キーワード | ニッチ構築 / 環境ー認知ー脳 相互作用 / 道具の製作と使用 / 認知神経生物学 / 霊長類 / 脳神経科学 / 進化 / 認知構造 / 感覚行動連関 / 環境ー認知ー脳 相互作用 / 認知脳神経生物学 / 環境-認知-脳 相互作用 / 道具の製作と仕様 |
研究開始時の研究の概要 |
「生物が自ら環境を変化させ、その変化が次の世代以降の進化に影響する」というニッチ構築の視点で文明形成を考え、環境-認知-脳の相互作用に基づく『三元ニッチ構築モデル』を理論的基盤として、この人間進化の脳神経生物メカニズムの駆動原理を探究する。道具などの物質的構造物や人工物をヒトがどう認知するか、またその製作・使用・経験を通して心、脳、身体がどのように変化するか、という相互関係を実証的に捉える。
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研究実績の概要 |
計画4年目に入った本年度は、班内各サブ・グループが行う認知神経行動データの取得法を駆使して、道具に関わる現象を介して有機的に構造化する第1段階のうえに、第2段階として各グループでのデータ取得を推進しつつ、生物学的裏付けによって蓄積されるデータの有機的な構造化を図り、最終的に『三元ニッチ構築』仮説の理論的/実験的な検証を目指して最終年度に向けたとりまとめの準備を開始した。具体的には: 第一段階:班内の各サブ・グループの研究対象は、(環境―物)=(心)=(脳―身体―脳)=(物―環境)と互いに重複しながら連鎖的に繋がる関係にあり、その連鎖の両端が外部の自然/人工環境世界(領域内他班が担当)に繋がる大ループを形成して構造化される。これら各要素は何らかの形で道具を介して連結されるので、これをもとに蓄積されるデータを相互に参照・活用する技法を整えた。 第二段階:上記で開発・構築した技術・体制を駆使し、領域内他班が蓄積するデータと連携しつつ認知行動データの収集・解析を進めた。また、各分担者間で共通して行える種々の横断的脳神経生物科学的解析や、領域内横断的な「ドメスティケーション・ユニット」を主導することによる連携活動を通して得られる取得認知行動データを脳神経生物科学的に裏付けるハブとして、モデル班と協働しつつそれらの有機的な構造化を行った。人間が創り利用する各種の道具をは環境中に埋め込むことで、様々な外部構造が実体化されるとする立場から、その製作・使用・経験を通して心、脳、身体がどのように変化するか、という相互関係を実証的に捉えるための調査・実験を、A01~A03班およびB01・B03班と協働して計画実施し、身体を介した物質環境と心・精神との相互浸潤ダイナミクスの駆動力を担う、人間メカニズムの駆動原理を追究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究班では、各班員独自の研究に加えて、領域内の他班との共同活動等を通して、領域全体の考古学や人類学領域の研究への認知機能・脳神経機構・心理学的視点を提供するとともに、逆に認知科学・心理学・神経科学への歴史的・進化的視点を導入することによって、両者の連携を促進して新たな学問領域を切り開くことに貢献しようとしてきた。 入來らは、脳容量の変化や人工物制作技術の進化などに見られる人類の認知能力の進化がどのように生じたかについて、本領域のキーコンセプトである脳-認知-環境の能動的相互作用による「三元ニッチ構築」のプロセスを構造化して、モデル化のための基盤を構築した。 川畑は考古資料としての楽器という人工物の先史時代来の歴史について整理した上で、音楽認知の進化について認知考古学的に論じた。さらに、民族考古学的視点から、各種遺物の製作過程における身体動作について、製作技能や成熟化など心理学的視点から捉え直す試みを行った。 齋木らは彼ら自身が既に行ってきた視覚認知の文化的多様性に関する研究を含め、視覚的注意や視覚記憶、顔認知、の文化差に関する考察を深めつつ、視覚認知の文化進化の枠組みに関する理論的展開を行った。 齋藤は、人類の進化における遊びの役割と認知発達、さらにはアートの起源とを関連付け、アートがホモ・サピエンスで発達していった背景について表象的認知の役割について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、環境-認知-脳の相互作用による『三元ニッチ構築モデル』に基づいて文明形成を考えるという、本領域全体の理論的支柱を提供するために、道具などの物質的構造物や人工物をヒトがどう認知するか、またその製作・使用・経験を通して心、脳、身体がどのように変化するか、という相互関係を実証的に捉えるための調査・実験を通して、身体を介した物質環境と心・精神との相互浸潤ダイナミクスの駆動力を担う脳神経生物学的な駆動原理の探究を目的としてきた。来年度は、最終年度にあたり、班内のサブ・グループが行ってきた成果を有機的に連携させた総合的解釈を確立するとともに、それをもとに領域内他班が蓄積した知見に対する説明原理を追求することを通して、モデル班との連携によって領域の成果に通底する理論構築によって、次の段階への飛躍的発展の橋頭堡を築くことを目指す。 具体的には、班内各サブ・グループによる(環境―物)=(心)=(脳―身体―脳)=(物―環境)と互いに重複しながら連鎖的に繋がる関係にある『三元ニッチ構築』相互作用を、人間活動の特徴である道具使用を介して統一的に定式化するモデルを構築することを目指す。そして、これをもとに他班のデータ収集に協力するかたちで、それらのなかから意味のある知見を抽出することによって、このモデルの多分野に亘る訴求力の更なる強化を図る。また、これらの知見を通して本領域の次段階のさらなる発展を見据え、その新たな理論的支柱を構築すべく、進化や歴史といった時間発展を伴う現象の背後に通底する複雑な因果構造を定式化するための、新たな論理構築の手掛かりを追究する。
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