研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05737
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
瀬口 典子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10642093)
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研究分担者 |
山本 太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70304970)
五十嵐 由里子 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (60277473)
石井 敬子 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10344532)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 講師 (50735496)
勝村 啓史 北里大学, 医学部, 准教授 (10649544)
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00533960)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
169,260千円 (直接経費: 130,200千円、間接経費: 39,060千円)
2023年度: 26,650千円 (直接経費: 20,500千円、間接経費: 6,150千円)
2022年度: 31,980千円 (直接経費: 24,600千円、間接経費: 7,380千円)
2021年度: 34,060千円 (直接経費: 26,200千円、間接経費: 7,860千円)
2020年度: 32,760千円 (直接経費: 25,200千円、間接経費: 7,560千円)
2019年度: 43,810千円 (直接経費: 33,700千円、間接経費: 10,110千円)
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キーワード | 適応進化 / 人口構造 / 適応候補遺伝子 / 感染症 / 認知機能 / 人為的身体変形 / 人工身体変形 / 古代ゲノム / 遺伝的多様性 / 拡散の歴史 / 健康の歴史 / 人口動態 / 文化的適応と身体変化 / 拡散と健康の歴史 / 核ゲノム / エピジェネティックス / 心理・行動関連遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フロンティアに進出した集団が獲得した遺伝的多様性、自然ならびに文化的環境への適応について、その変遷を時間軸に沿って解明する。骨形態と古代ゲノム解析から、新天地への拡散の歴史、人口構造・人口動態、環境への適応進化を解明する。また、ミイラや糞石に残された寄生虫感染症や細菌・ウイルス感染症のメタゲノム解析から、感染症の実相を明らかにする。人類集団モデル動物(メダカ)を用いたゲノム研究によって、好奇心(新奇性追求)遺伝子多型の検出とその進化的解析を行い、メダカとヒトの遺伝子多型の関連性を検証し、新天地への拡散と移動を可能にした人類の心理・行動に関係する適応候補遺伝子の推定および解析をする。
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研究実績の概要 |
COVID-19感染の状況により、メンバーが所属する大学により研究活動の自粛、許可などが異なっており、当初予定していた一連の国内、中南米の調査は不可能となった。 瀬口・米元はできる限り九大所蔵の頭蓋骨の3次元データを博物館が開館している時に収集し、人為的に変形させたであろう頭蓋形態の独特なパターンの可視化と分析を行った。 五十嵐は古人骨の妊娠出産痕を用いて千葉県の縄文集団の年齢構成、生存曲線と出生率を推定し、各地域の縄文、弥生と比較検討した。その結果、出生率には北高南低のクライン、東日本と西日本の差異と呼ぶべき傾向が認められた。年齢推定の精度を向上するための人工知能(AI)を用いた研究も進めた。水野・植田は、列島各地から出土した古人骨のミトコンドリアゲノムの全塩基配列情報に基づく解析を実施した。旧石器時代人のミトコンドリアゲノム全塩基配列と、旧石器、縄文、弥生、それぞれの時代における列島日本人の母系系統と遺伝的多様性を明らかにした。山本チームは、チベット高地民が持つ特有のEPAS1遺伝子とEGLN1遺伝子が彼らの特殊な低酸素適応を可能にしていることを突き止めた。チベット女性では加齢と共にHb濃度が上昇している様子が観察された。また、チベットにおける低酸素と関節リウマチの発症促進の可能性、リスク因子について解析を進めた。石井・松永は、Y染色体ハプログループD系統遺伝子の子孫系統であるD-M55が『良好な人間関係』と関連する遺伝子であり、ホモ・サピエンスの出ユーラシアに関連する要因のひとつである可能性を見出した。勝村・太田はメダカにおいて新奇性追求に関わる遺伝子を欠損させたメダカ変異体を作成した。変異型と野生型をヘテロ接合で持つ個体同士で交配させ、得られた野生型ホモ接合、野生型・変異型ヘテロ接合、変異型ホモ接合の個体群を新奇性追求行動実験に供し、当該遺伝子欠損の効果を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B03班では班会議を4回ほどオンラインで行った。12月下旬に初めて対面での班会議を岡山大学東京田町オフィスで行った。班の研究を推進させるために意見を出し合うフリートークと1月の全体会議のバイオレンスパネルに対してのB03班全体としてのコメントをまとめた。B03班で2021年度には3回の班主催オンライン研究会では、最新の研究結果を報告してもらい、質疑応答と共に議論を深めた。2021年7月には、テキサスA&M大学のQian Wang教授とB03班共催(オーガナイザー:Qian Wang&瀬口典子)人為的頭蓋骨変形についてのオンライン国際ミニミーティングを開催し、瀬口が日本の人為的頭蓋骨変形の可能性のある広田遺跡についての報告を行った。 2022年1月には、本新学術領域研究「出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明」(松本直子代表:JP19H05731)と他科研、岡山大学文明動態学研究センター、北海道スラブ・ユーラシア研究センターとの共催で、「人文学者のための古代DNAセミナー」を行った。人文学者のための古代DNAセミナーの歴史学、考古学など人文学の研究者・大学院生・学生を対象としたセミナー開催・企画にはB03班が関わり、分担者の水野が「生物遺骸に残された”DNAの記録”を読み解く」を講演し、総合研究大学院大学/日本学術振興会の澤藤りかい氏にお願いして、「古代の病原体DNA解析―その動向と評価について」を講演していただいた。2021年度も、新型コロナパンデミックの影響で国内のデータ収集も限られ、チベット、中南米での調査はできなかったが、B03班のメンバーは、収集できたデータ分析や新たな実験もおこない、論文・学会発表、アウトリーチ活動を活発に行い(B03班業績を参照)、目標はほぼ達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もCOVID-19感染拡大のため、当初予定していた一連の国内、海外調査が可能になるかどうか、はなはだ不透明な状況にあるが、海外調査ができない場合も、現在取得しているデータ、および海外の共同研究者から共有されたデータを用いて分析を進める。 瀬口は収集した人為的な頭蓋骨変形の3次元データの分析を続け、変形させた頭蓋形態のパターン等を分析、身体を人工的に変形させた目的・意義と文化・社会との関連を検討する。また、頭蓋骨形態上に現れる骨表面形態の最小変化を3次元データから可視化することを目指す。五十嵐は骨学的方法を用いた人口構造分析およびAIを用いた古人骨の年齢推定方法の開発を行う。山本は感染症の実相、環境適応の人類学的解析を続ける。高地適応した人々のヘモグロビン動態にみられた性差についてを検証し、女性に何が起きているのかを明らかにしていく。また、低酸素環境での適応と自己免疫疾患等の発症の可能性について解析を続けていく。水野は昨年度から引き続き本年度も、新大陸ならびに日本列島から出土した古人骨を用い、母系のミトコンドリアゲノム情報ならびに、父系・母系の核ゲノム情報を用いた解析を、研究協力者・植田と共に実施する。なお、ゲノム分析に関する研究倫理ならびに遺伝子解析とも審査済である。松永は身体の状態を実験的に変化させることができる駆血用自動調圧装置を導入し、身体の状態が認知機能に与える影響についての実験を行う。石井は出ユーラシア関連の心理・行動に関する適応候補遺伝子の推定および解析を実施する。勝村は15個の新奇性追求行動関連遺伝子についてゲノム編集メダカを作成し、その機能分析を行うとともに、原因変異を見つけるためのQTL解析を南日本メダカを用いて再実施する。
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