研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05765
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40415287)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
82,940千円 (直接経費: 63,800千円、間接経費: 19,140千円)
2023年度: 15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2022年度: 15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2021年度: 15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2020年度: 15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2019年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
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キーワード | 金属シャペロン / 神経変性疾患 / スーパーオキシドディスムターゼ / 金属タンパク質 / 筋萎縮性側索硬化症 / SOD1 |
研究開始時の研究の概要 |
生体に存在する金属イオンは、その種類や濃度について恒常性が維持されており、その破綻は様々な疾患を発症させる要因となる。特に、認知症や運動障害をもたらす神経変性疾患では、脳・神経組織における重金属イオンの異常な蓄積・欠乏が進行しており、その是正は治療法確立に向けた重要な標的となりうる。本研究では、銅イオンの運搬に関わるタンパク質「銅シャペロン」に着目し、銅イオンの恒常性を司る細胞内ネットワークの全貌を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(CuZnSOD)はバクテリアからヒトまで広く保存されたタンパク質で、銅イオンと亜鉛イオンを結合し、スーパーオキシドの不均化を触媒する抗酸化酵素である。また、CuZnSODが酵素活性を発揮するためには、分子内ジスルフィド(S-S)結合の形成が必要であることが知られている。しかし、グラム陽性菌であるPaenibacillus lautusが有するCuZnSOD(PaSOD)にはシステイン残基がなく、酵素活性を発揮できるのか不明であった。また、PaSODは、他の生物種由来のCuZnSODには見られないドメイン構造を有していることが予想され、その機能や意味についても明らかでない。そこでまず、PaSODをリコンビナントタンパク質として調製・精製したところ、CuZnSODとしての酵素活性を有していることを見出した。次に、PaSODがS-S結合の形成なく酵素活性を発揮できる理由を明らかにするために、結晶構造解析を行ったところ、S-S結合の代わりにフェニルアラニンとグリシンの側鎖間での疎水性相互作用が形成しており、CuZnSODのフォールドを維持していることがわかった。実際、疎水性相互作用を破壊するアミノ酸置換を導入すると、PaSODの酵素活性は低下した。さらに、PaSODに特有のドメインは、これまでに報告のないフォールドを有しており、PaSODの二量体化を担っていることがわかった。最後に、PaSODはP. lautusの増殖定常期に発現し始めることが確認されたものの、その生理的役割の理解については今後の課題となった。システイン残基は最も酸化されやすいアミノ酸であることからも、PaenibacillusはCuZnSODを抗酸化酵素として効率よく機能させるために、システイン残基を使わないという戦略をとったのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(CuZnSOD)に着目し、その構造・機能解析を通じて、生体内における銅イオン・亜鉛イオンの動態制御メカニズムを理解するとともに、その破綻が生命現象にもたらす影響を明らかにすることを目的にしている。前年度までに、ネイティブ質量分析を駆使したCuZnSODへの新たな金属結合状態解析手法の開発に成功し、分子内ジスルフィド(S-S)結合によるCuZnSODへの金属結合の制御メカニズムを明らかにした。今年度は実績の概要にも記載したように、新たなタイプのCuZnSODの構造・機能解析を行うことで、グラム陽性菌が酸化的環境に対応するための戦略について考察することができた。よって、概ね順調に本課題を推進することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、他のバクテリアが有する特徴的なCuZnSODに着目し、その構造・機能解析を進めることで、CuZnSODの生理的な存在意義について明らかにしたい。また、CuZnSODの活性化不全やミスフォールディングを伴う病理に着目したプロジェクトについても進めている。特に、変異型CuZnSODを病因タンパク質とする筋萎縮性側索硬化症(ALS)や変性性脊髄症(DM)について、ミスフォールディング機序の解明に引き続き取り組む計画である。
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