研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05767
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
保住 功 岐阜薬科大学, 薬学部, 特命教授 (20242430)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
72,410千円 (直接経費: 55,700千円、間接経費: 16,710千円)
2023年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2021年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2020年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2019年度: 18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
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キーワード | 生命金属 / 神経変性疾患 / 創薬開発 / 発症機序 / iPS細胞 / 筋萎縮性側索硬化症 / 特発性基底核石灰化症 / 老化 / 乳児歯髄幹細胞培養上清(SHED-CM) / 環境因子 / 脳内石灰化 / 認知症 / 疾患特異的ヒトiPS細胞 / 認知症 老化 |
研究開始時の研究の概要 |
全ての生物、細胞にとって必須の生命金属は、その種類や濃度は恒常性が維持されており、その破綻は様々な疾患を発症させる要因となる。神経細胞においても、生命金属はタンパク質・酵素の構造や機能の維持、細胞内外の恒常性の維持などに重要で、その破綻は神経細胞死や老化の原因となる。本研究では、近年の人口高齢化と共に増加している神経変性疾患においてその発症における生命金属の役割を、疾患特異的ヒトiPS細胞などを活用した細胞系ならびに実験動物などを用いることで解明する。さらにヒト神経変性疾患剖検材料を活用することで、生命金属動態に立脚した神経難病の創薬開発の基盤を作り上げる。
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研究実績の概要 |
全ての生物、細胞にとって必須の生命金属は、その種類や濃度は恒常性が維持されており、その破綻は神経変性疾患を始め、様々な疾患を発症させる要因となる。 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は亜鉛(Zn)ホメオスタシス異常の視点から解析を行った。我々は乳児歯髄幹細胞培養上清(SHED-CM)が、SOD1変異遺伝子を導入したN2a細胞のみならず、患者由来のiPS細胞を用いて、生存率の回復などの有効性を証明した。その有効成分として、HSP70、IGF1の他、線維芽細胞培養上清と比較して、有意にZn濃度が高いことを見出した。Znは家族性および孤発性ALSの発症機序において重要な役割を果たし、その調節に関わるSHED-CM、MT-ⅢはALSの極めて有効な治療薬となることを提唱した。 脳内石灰化症はリン(Pi)ホメオスタシス異常の視点から解析を行った。特発性基底核石灰化症(IBGC)の主たる原因遺伝子としてSLC20A2とPDGFBの顕性遺伝子変異が報告されている。脳のリン酸輸送を担う主要なリン酸輸送体はⅢ型リン酸輸送体のPiT1 (遺伝子SLC20A1)、PiT2 (遺伝子SLC20A2)が同定されている。また、PDGF-BBは血管平滑筋細胞でPiT1の発現を誘導することが報告されている。検索では、リコンビナントタンパク質PDGF-BBは、SH-SY5Y細胞においてもリン酸輸送活性を増大させ、リン酸輸送体PiT1の遺伝子発現には影響しないものの、細胞膜移行を促進することで、リン酸輸送活性を増大させることを明らかにした。さらにPDGF-BBはSLC20A2ノックダウンによる細胞脆弱性を改善することで、神経細胞保護的な役割も有することが示唆された。今回の検討からもPBGF-BBはIBGCの最も有望な治療薬と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALSを対象に種々の生命金属を含むSHED-CMを用いた治療法開発を進めた。ヒト疾患特異的iPS細胞を用いて検討を行い、生存率の回復が確認でき、英文誌Front Pharmacolに報告している。SHEDS-CMの有効成分の検討、ALS患者の剖検材料における亜鉛の動態なども検討した。 我々はPDGF-BBは、SH-SY5Yにおいてリン酸輸送活性を増大させ、リン酸輸送隊PiT1の遺伝子発現には影響しないものの、細胞膜移行を促進することで、リン酸輸送活性を増大させることを明らかにした。また、2つのSLC20A2変異(T115 MおよびR467X)で蛍光共鳴エネルギー移動法 (BRET)を用いて、その作用はハプロ不全による細胞内Pi取り込みの減少であることを示した。さらに、PDGF- BBは神経細胞の保護作用、MYORG、JAM2の関与する血液脳関門の強化作用もあり、PBC全般の治療薬となりうることが示唆された。今回の質的研究からはPDGFB変異患者はSLC20A2変異患者と比して頭痛など生活困難事がより多いことがわかった。石灰化は増大すると、物理的な圧迫にる障害が小脳などに生じることから、石灰化を阻止する治療薬を領域内の鈴木ら(A4-04)と検討している。 また、胎生期低濃度重金属(Hg)負荷による神経機能障害とそのエピジェネティクス解析を継続した。昨年、低濃度(1nM)のMeHgの曝露による神経突起伸長の抑制は、ヒストンH3のアセチル化の減少とDNAメチル化の増加に起因することを提示した。今回は、その作用機序として、エピジェネティックな修飾によってNR4A1を抑制すること、in vitroで神経細胞のスパイク活性を阻害することを明らかにした。こうした事実から、胎生期の重金属の暴露は将来的に神経細胞機能攪乱による高次脳機能障害の素地になることが推定された。
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今後の研究の推進方策 |
各種培養細胞や疾患特異的ヒトiPS細胞を用いて、生命金属が神経変性疾患の発症や進展に及ぼす影響を評価できる実験系を構築する。特にALS、IBGCなどの神経変性疾患について病態解明を行い、SHED-CM、MT-3、PDGF-BBなどシーズの確立、最適化を目指す。 ① 各種の培養細胞を利用し、一過性、もしくは、誘導性に原因遺伝子を発現する実験系を作製する。② 疾患特異的なiPS細胞を運動神経細胞、大脳皮質神経細胞、血管内皮細胞内皮などに分化誘導する。各分化させた細胞を用いて、①に記載した実験・解析を進める。③ 変異SOD1を発現するALSのモデル細胞、ヒトALS患者由来のiPS細胞を用いることで、SHED-CMが細胞死を抑制することを明らかにしたが、さらなる詳細なメカニズムを明らかにする。④ IBGC患者の遺伝子解析、画像解析、質的研究など総合的解析を行う。⑤ IBGC、ALS患者由来神経細胞内のPi、Znなどの生命金属の動態解明:SPring-8を活用し、IBGC、ALS患者由来神経細胞内の生命金属の動態解明を行う。(理化学研究所 志村まりとの共同研究)⑥ 脳内石灰化部位の成分解析:新潟大脳研、愛知医科大加齢研、さいがた医療センターなどで得られた脳内石灰部位の金属、タンパク質、ペプチドなどの網羅的な分析を領域内の鈴木ら(A4-04)と解析を行い、その特異性、役割を検討する。 ⑦ 培養細胞やモデルマウスを用い、胎児期における低濃度のMgなどの生命金属の曝露を行い、DNAメチル化を中心に、生後の神経変性疾患への影響として、エピジェネティクスな機序を解析する。⑧ 領域内の平山ら(B01-K03)との連携研究で、Fe, Labile Hemeを高感度、細胞内小器官特異的に蛍光イメージできる低分子を開発し、神経変性疾患の病態解明にさらに役立てる。
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