研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05771
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 道生 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (10647655)
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研究分担者 |
永田 宏次 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30280788)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
64,090千円 (直接経費: 49,300千円、間接経費: 14,790千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2022年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2021年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2020年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
2019年度: 20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
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キーワード | バイオミネラリゼーション / バイオレメディエーション / 金属濃集 / 炭酸カルシウム / 環境技術 / マガキ / ナノ粒子 / 重金属 |
研究開始時の研究の概要 |
多量の金属は生物に対して様々な毒性を有するため、環境中に多くの金属イオンが残存する状況は好ましくない。多くの生物は生体の内外において金属の解毒作用を有しているが、この解毒作用を用いて環境中の金属鉱物を沈着、固化させ無毒化する手法を開発することが可能であると考えられる。近年では生物を用いたファイトレメディエーションが注目されているが、どのような分子が金属と相互作用し、沈着させるのか多くの分子メカニズムが不明である。本研究では、生物において金属鉱物と相互作用する有機分子を見出し、沈着、固化させるメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究では主に、微生物と無脊椎動物が有する金属、鉱物凝集機構に着目し、その形成メカニズムを明らかにすることで、環境改善などの技術開発に繋げるこ とを目的としている。 マガキはカドミウム(Cd)などの重金属を蓄積しやすいことが知られている。無脊椎動物のマガキにおいてメタロチオネインを介し重金属を蓄積しているかどうかは未だに明らかになっていない。 まずマガキから内臓、エラ、外套膜、貝柱の組織ごとに分けて解剖し、各組織についてCd、Cu、Znの金属濃度測定を行った、その結果、内臓抽出物水溶性画分にCd結合物質が多く含まれていることが分かった。Cd結合物質の分子量を推定するために、TPPS(tetraphenylporphyrin tetrasulfonic acid)を用いたポストカラム法でのCd結合物質の探索を行った。結果として、30 kDa以上の高分子化合物がCd結合物質として推定された。さらに、アフィニティークロマトグラフィーを用いたカドミウム結合競合実験を行った。その結果、Cd結合物質としてマガキのProtein disulfide isomerase(cgPDI)を見出した。 cgPDIについて更なる機能解析や構造解析のために組換えcgPDIの作成を行った。作成した組換えcgPDIを利用して、ポストカラム溶液で用いたTPPSを利用して組換え体とCdとの結合実験を行った。結果として、吸収スペクトルの変化からCdと組換えcgPDIの結合を確認することができた。そこで、実際のマガキにおいてどの程度cgPDIが含まれているかについてITCと免疫学的手法を用いて調べた。その結果、マガキの内臓に含まれるCdの約20%は今回に同定したcgPDIに結合してる可能性が示唆された。cgPDIの寄与率は大きくはなかったため、マガキには未知の重金属結合成分が含まれている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マガキにおいてCdに結合するタンパク質分子を新たに同定し、その寄与率を精密に算出する実験まで行うことができた。そのため順調に成果を出していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
マガキ以外にもホタテの中腸線においてCdがよく濃縮されることが知られている。そこで、ホタテの中腸線を用いて、さらに特異的にCdに結合する因子を探す予定としている。手法としてはHPLCとICPを組み合わせた方法が新たに使えるようになったため、Cdに結合する因子をHPLCにより分離し、候補となるタンパク質を見出す予定である。候補タンパク質を見出した後に、マガキで使った手法と同様に進めることで、構造機能解析を進める。 さらにマガキだけではなく、様々な無脊椎動物が特殊な金属を特異的に沈着することが知られている。そのような様々な無脊椎動物の金属、鉱物濃縮作用についてと、微生物の金属濃集について研究を進める。
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