研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05774
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
明石 知子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (10280728)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
77,870千円 (直接経費: 59,900千円、間接経費: 17,970千円)
2023年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2022年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2021年度: 14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2020年度: 14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2019年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
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キーワード | 生命金属動態 / タンパク質 / 質量分析 / 生体分子 / 膜タンパク質 / ネイティブ質量分析 / 複合体 / 金属イオン / 一細胞分析 |
研究開始時の研究の概要 |
微量試料でも生体高分子複合体を丸ごとイオン化し正確に質量決定できるネイティブMS法を駆使して、生命金属動態の解析を推進する研究を行う。実験手法の高度化および基盤構築を進めた上で、領域内の研究者と積極的に連携研究を展開し、金属を配位したタンパク質の正確な質量決定、金属イオンの結合に伴う構造変化の解析、さらには膜タンパク質の測定も挑戦し、シグナル伝達や転写に関わる種々のタンパク質の機能メカニズムの解明に有用な情報を提供する。
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研究実績の概要 |
以下のような研究を進めた。 1. 膜内切断亜鉛プロテアーゼRsePのネイティブMS:大腸菌大量発現系で大腸菌および海洋微生物由来のRseP(EcRsePおよびKkRseP)を調製し、インタクト及び阻害剤Batimastatとの複合体のネイティブMSによる観測を行った。ネイティブMSでは、両者の活性の違いを裏付けるかのようにKkRsePの亜鉛イオンは外れやすいのに対し、EcRsePでは外れにくいことが分かった。またBatimastatとの複合体が形成される際には、亜鉛イオンが必須であることをネイティブMSで明らかにした。(横浜市大・禾との共同研究) 2. 神経疾患に関わるヒトSOD1のネイティブMSによる解析(A02-1古川との連携研究) SOD1は亜鉛・銅が正しく結合し活性酸素を分解する酵素として機能する。疾病との関連が報告されているSOD1変異体とSOD1野生型とのヘテロ二量体の形成は、神経疾患の発症と関わる可能性がある。そこで野生型ホモ二量体とどのような構造の違いがあるかを解析する目的で、変異体(G37R、G85R、L144F)を作成し、ヘテロおよびホモ二量体のイオンモビリティ質量分析を行い解析した。 3. 亜鉛を有する脱アセチル化酵素ヒトSirtuin 2のネイティブMSによる解析:ヒトSirtuin2 は細胞質に存在する脱アセチル化酵素で、亜鉛イオンを4つのCysが囲んで構造を安定化している。過剰に存在すると神経疾患をはじめとする様々な疾患を引き起こすことが分かっている。結晶構造では二量体を示しているものもあるが、これは結晶化によって生じた二量体とされていた。このSirt2についてネイティブMSによる解析を行ったところ、濃度依存的に単量体と二量体のピークが観測され、二量体のKdは約30μMであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜タンパク質のネイティブ質量分析は計画通り進められている。特に、国内で初めての膜タンパク質RsePとその阻害剤のネイティブ質量分析に成功した。そして、領域内で城・澤井らとの共同研究で、鉄代謝に関わる膜タンパク質Dcytbのネイティブ質量分析を用いた検討にも着手できた。これ以外にも、領域内での生命金属科学の共同研究も活発に進められており、SOD1(古川らとの共同研究)の他、複数が進められていることから、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
膜タンパク質Dcytbについて、これまで結晶構造では見えていない鉄イオンとの結合に関する情報を得るべく、ネイティブ質量分析で解析する。RsePやDcytbで得られた実験結果をベースに、GPCRの解析を展開する。 SOD1の変異体と野生型のヘテロ二量体化に伴う構造変化は、ネイティブ質量分析に計算科学も組み合わせて解析を進める。 Sirtuin2は種々の変異体を調製し、機能発現と二量体化の関係について解析を進める。 生命金属の解析を一細胞で行うための手法として完成させるべく、ネイティブ質量分析の手法の高度化を図る。
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