研究領域 | 高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用 |
研究課題/領域番号 |
19H05780
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
永野 真吾 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (60286440)
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研究分担者 |
中津 亨 和歌山県立医科大学, 薬学部, 教授 (50293949)
溝端 栄一 大阪大学, 大学院工学研究科, 講師 (90571183)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
134,290千円 (直接経費: 103,300千円、間接経費: 30,990千円)
2023年度: 23,920千円 (直接経費: 18,400千円、間接経費: 5,520千円)
2022年度: 23,400千円 (直接経費: 18,000千円、間接経費: 5,400千円)
2021年度: 25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2020年度: 25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2019年度: 35,490千円 (直接経費: 27,300千円、間接経費: 8,190千円)
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キーワード | 酵素反応メカニズム / X線自由電子レーザー / ディールスアルダー反応 / 発光タンパク質 / 分子動画 / 酵素 / Rubisco / 結晶構造解析 / 反応メカニズム / 結晶構造 / 酵素反応 / メカニズム / XFEL / 微結晶 / 時分割X線結晶構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
酵素が機能する仕組みを明らかにするためには、その反応が起こりつつある非平衡状態の反応場の構造を高い空間・時間分解能で解析することが必須である。本研究では、研究代表者と分担者らがすでに結晶構造を決定した分子内ディールスアルダー環化反応を行う酵素,光合成炭酸固定の鍵酵素Rubisco,および発光タンパク質イクオリンを対象に、南後班で開発する温度ジャンプ法や二液混合法など光トリガーに依存しない手法、および清中班と共同で開発する光作動性を付与したケージド基質を用いる手法を駆使して酵素反応を同期的に進行させ、酵素が基質を巧みに操り化学反応を進める過程を、高い時間・空間分解能で解析する。
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研究実績の概要 |
各研究者それぞれの研究実績を以下にまとめる。
ディールスアルダー反応を行う酵素Fsa2, Phm7に関して,SFXに適した低塩濃度で微結晶を作製し,また結晶格子が揃った微結晶を作製することでこれまでの課題を解決するため,酵素表面に存在する柔軟なアミノ酸やループを置換,欠損させた変異体の作成を進めた。また,タウリン水酸化酵素TauDの金属フリー微結晶にFe(II)を添加し,活性部位を再構成できることを確認した。 イクオリン微結晶懸濁溶液とカルシウム溶液を混合して反応を開始したのち、SACLAのXFELを用いた2液混合SFX実験により、X線回折強度データの収集に成功した。構造解析の結果、カルシウムが2個ないしは3個結合した構造が明らかとなり、カルシウムが結合することによる構造変化がはじめて明らかとなった。 2021年度は、SACLAの光源を用いて、非活性型Rubisco-sulfate複合体、活性型Rubisco-sulfate複合体、活性型Rubisco-生成物3PGA複合体の結晶構造を決定した。これらの構造は触媒部位に存在するLoop 6が閉鎖型または開放型のコンフォメーションを取っていた。これらの構造と比較することで、2020年度に構造決定した活性型リガンドフリーRubiscoのLoop 6が従来の閉鎖型または開放型のいずれにも該当しないユニークなのコンフォメーションを有することを明らかにした。 また、二液混合型インジェクターを用いて、活性型リガンドフリーRubiscoの微結晶に基質RuBPを添加して触媒反応を誘起して時分割構造解析をするための条件検討を行い、コントロールとなる構造を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Phm7の表面に存在するループを欠損した変異体をいくつか作製し,そのなかのひとつの変異体で,これまでの結晶化条件とは異なり,PEG8000を沈殿剤とした低塩濃度の条件で結晶を得ることができた。また,TauDでは,金属フリーの微結晶にFe(II)溶液を添加して高粘度媒体を用いた静的SFX実験を行い,活性部位にFe(II)が結合した結晶構造を確認することができた。つまり,二液混合TR-SFX実験によりTauDの酵素反応過程の動画撮影の準備が整いつつある。 イクオリン微結晶を用いた発光実験を行った結果、発光最大値に到達するまでに5秒前後必要であることがわかった。この時間スケールは2液混合時分割SFX実験の実施には適しているということがわかった。そこで長辺が10μm程度のイクオリン結晶とカルシウムを反応させ、反応5秒後において2液混合SFX実験を実施した。その結果、立体構造を2.0A分解能で決定でき、カルシウムが2個、ないしは3個結合し、構造変化が生じている領域が明らかとなった。またカルシウムで反応を進行させた結晶を液体窒素につけることにより、低温トラップする。すなわち異なる反応時間で反応を止めた結晶を複数作成し、それぞれの結晶をSPring-8でX線回折強度データを収集する手法を確立した。
SACLAを利用して、Rubiscoのリガンド複合体の構造を新たに3つ解析できたことで、活性型リガンドフリーRubiscoの構造的特徴の新規性を実証できたことは重要な成果である。 また、二液混合実験に着手してコントロール構造の決定をするなど、今後の分子動画撮影に向けた順調な進捗にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出した低塩濃度条件で得られるPhm7微結晶や,すでに得られているFsa2結晶を用いて生成物結合型の結晶構造を決定し,MDシミュレーションで推定された基質結合様式との整合性を確認する。また,Fsa2の基質の有機合成を清中班の永澤グループに依頼しており,その合成が順調に進んでいる。この合成基質を用いて,微結晶試料を用いた酵素活性の確認や,基質結合型の構造決定を目指す。 今回データ収集した時間の前後の時間のデータ収集を行う。また反応の同調性をより高めるために、さらに小さな微結晶を準備し解析を行う。ただし、2液混合実験を実施するためにはサンプル量が膨大になりすぎること、ビームタイムが少ないことから、SPring-8を用いた時分割解析データも組み合わせていくことにより、より詳細な反応メカニズムの解明を目指す。二液混合型インジェクターを用いて、活性型リガンドフリーRubiscoの微結晶に基質RuBPを添加して触媒反応を誘起させ、遅れ時間500 ms未満の時間範囲において時分割構造解析を実施し、触媒部位にRuBPが結合する構造遷移を解明する。 また、活性型Rubisco-RuBP複合体の結晶を低温(0℃以下)で作製する条件を探索し、RuBPにCO2が結合する触媒反応過程を解析するための準備を進める。
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