研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05792
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
研究代表者 |
北岡 諭 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主幹研究員 (80416198)
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研究分担者 |
吉田 英弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80313021)
中平 敦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (90172387)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
131,040千円 (直接経費: 100,800千円、間接経費: 30,240千円)
2023年度: 23,660千円 (直接経費: 18,200千円、間接経費: 5,460千円)
2022年度: 24,440千円 (直接経費: 18,800千円、間接経費: 5,640千円)
2021年度: 25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2020年度: 24,570千円 (直接経費: 18,900千円、間接経費: 5,670千円)
2019年度: 32,500千円 (直接経費: 25,000千円、間接経費: 7,500千円)
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キーワード | 酸化物 / ポテンシャル場 / 物質移動 / 界面 / 欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
酸化物セラミックスの表面、粒界、異相界面、点欠陥、添加元素、ナノ空間などの“コア構造”と“ポテンシャル場において発現する機能”との相関を、A01班およびA02班との連携により解明するとともに、その情報を基に耐熱・耐環境性に優れる酸化物セラミックスの新機能や革新的プロセスを創出する。例えば、高温酸素ポテンシャル勾配下において発現する革新的な保護膜機能や、高化学ポテンシャル溶媒下のナノ構造制御による耐環境機能の創出、並びに、高電磁界場下のコア構造制御による革新的焼結プロセスの創出等を目指す。そしてポテンシャル場における機能コアを介した物質移動の統一的理解を極める。
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研究実績の概要 |
本研究は、酸化物セラミックス中の“機能コア”により特殊なポテンシャル場において発現する特性を解明するとともに、その情報にもとづき耐熱・耐環境性に優れるセラミックスの新機能創出や革新的プロセス開発を行うことを目的とする。本年度の主な実施内容を以下に示す。 高温酸素ポテンシャル勾配下(dμO):高温dμO下に曝された酸化物膜中の物質移動が粒界を介して進行し、かつ、高PO2表面側の電気特性がホール伝導である場合、高PO2表面に滞留した非平衡状態のカチオン空孔が表面粒界で消滅し、空孔存在方向に大きく移動した。このことは、非平衡状態で存在するカチオン空孔が、粒界移動の起源であることを示唆する。また、公募班との連携により、耐熱性酸化物の低熱伝導性発現の関与が指摘されている粒内コアのナノドメインの形成機構を明らかにした。 高化学ポテンシャル溶媒下:高化学ポテンシャル溶媒環境において利用可能なセメントの候補であるアルミナセメントに関して、圧縮強度を目的変数、化学組成を説明変数としてベイズ最適化による再設計を試みた。得られたセメントは24時間での圧縮強度が60-80 MPaであり、報告されているものよりも優れた値を示した。圧縮強度向上への寄与が大きい添加物はリン酸ナトリウムであり、これが組織の微細化に寄与していることが明らかになった。 高電磁場: 高電磁場によって導入される機能コアの解明を目的として、A02(ウ)班との共同研究によりβ-Ga2O3の蛍光発光特性に及ぼす高電磁場の影響を調査した。その結果、高電磁場印加により酸素に関わる点欠陥が高濃度で導入されることを突き止めた。また、高電磁場の印加が誘導する機能コアと酸化物中の物質輸送の知見を基に、ハイドロキシアパタイトの高電磁場下での焼結緻密化を試み、通電時の電流密度を高度に制御することで相分解させずに高密度化させられることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温酸素ポテンシャル勾配下:高温のdμO下に曝された酸化物膜の電気的特性が、高PO2表面側のホール伝導、低PO2表面側が電子伝導である場合、表面に滞留する主たる表面コア種が異なることを利用することで、粒界移動に寄与する表面コアが非平衡のカチオン空孔であることを示した。このことは、カチオン空孔の形成抑制は酸化物膜の組織安定化に有効であり、反対に形成促進はセラミックス焼結の高速化による省エネに有効であるものと考えられる。また、低熱伝導性酸化物のナノドメインの形成メカニズムを明らかにしたことは、ナノドメイン構造の積極的な制御を可能にする。 高化学ポテンシャル溶媒下: 高化学ポテンシャル溶媒中で利用するセメント材料の設計にベイズ最適化といった情報科学的手法を適用することにより、従来は行うことのできなかった7変数問題を効率的に最適化できることを実証した。さらに結果を分析することにより、セメント材料を設計する上での重要な要素の特定に成功しており、セメント強化メカニズムも明らかにできた。今年度に実証した手法は異なる特性が要求されるセメントに加え、他の多くの材料の多変数問題へ展開可能であり、新たなセラミックス材料の創製につながることが期待できる。 高電磁場: 高電磁場の印加によってもたらされる機能コアの生成と、それによる新たな機能発現に関して、物質輸送現象の定量評価と共に蛍光発光分光分析などのアプローチを駆使することで、基礎的知見の蓄積が進んだ。これにより、機能コアが高電磁場で導入される非平衡点欠陥であることが明らかになり、こうした知見を利用することで酸化物の高温変形の促進や擬弾性発現、ハイドロキシアパタイト等の高密度化を実証した。さらに班内外の連携を進めることで、高電磁場による機能コア構造と材料特性の制御に繋がると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
高温酸素ポテンシャル勾配下:耐熱性酸化物膜に対して、A01(ア)班、A02(ウ)班等との連携研究より、表面コアや粒界コアの形成により誘起される電気化学ポテンシャル変化を利用した物質移動制御の可能性を追求する。また、結晶内コア構造とフォノン散乱の相関を明らかにすることにより、遮熱性向上のための結晶内コア設計指針を示す。 高化学ポテンシャル溶媒下:亜臨界水から超臨界水に変化する際に生じる化学反応を利用して、セラミックス材料に機能コアを導入したセラミックス材料の創製および、水熱・亜臨界水、超臨界水環境へ耐性を持つ材料の設計指針となる学理構築を目指す。主な対象をナノ粒子やセメント材料とし、情報科学的手法を積極的に取り入れることで効率的に研究を実施する。 高電磁場: 粉末成形体の緻密化挙動、微構造形成過程、ナノインデンテーションによる非破壊での弾性/擬弾性挙動解析を引き続き継続すると共に、班内外の連携研究により機能コアの物理的描像の獲得、材料機能の発現を試みる。高電磁場による機能コア構造の導入とそれによる材料特性の制御をさらに試み、高電磁場下での機能コアに基づいた新たな材料設計・開発への指針を得る。
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