研究領域 | 情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理 |
研究課題/領域番号 |
19H05797
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石島 秋彦 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (80301216)
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研究分担者 |
福岡 創 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (50447190)
蔡 栄淑 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 助教 (40378716)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
108,810千円 (直接経費: 83,700千円、間接経費: 25,110千円)
2023年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2022年度: 19,890千円 (直接経費: 15,300千円、間接経費: 4,590千円)
2021年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
2020年度: 23,400千円 (直接経費: 18,000千円、間接経費: 5,400千円)
2019年度: 25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
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キーワード | 走化性 |
研究開始時の研究の概要 |
大腸菌走化性システムは、外界の誘因・忌避物質が細胞極に存在する受容体に結合し、その情報は細胞内を通して各モーターに伝わり、モーターの回転方向が転換される。申請者は、走化性刺激受容において、協同性、適応性、自発性の3つの特徴が、受容体のメチル化レベルの変動という共通の分子機構で実現されている、という従来説とは全く異なる新しいモデルを提唱している。そこで、1細胞レベルでの走化性動態を、活性を保ったまま明らかにする。分子レベルの反応ネットワークと細胞レベルの応答をつなぐ格好のモデル系であり、領域内の理論グループとの共同研究体制を構築することにより実験と理論との有機的な融合を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は,バクテリア走化性に関わるすべてのタンパク質の挙動を1 細胞レベルでイメージングすることにある.さらに、本来の機能を有した状態での蛍光タンパク質との融合タンパク質の作成のため、可能性のある結合部位、リンカーの種類・長さ、蛍光タンパク質を網羅的に調べ上げる. 特に, CheYとCheZという走化性に関わるタンパク質双方に蛍光色素を導入しFRET計測を行った.その結果,セリンなどの誘因物質投与後にFRET効率が下がり,数十秒後にFRET効率が復活した.これは適応現象を観察したことになる.この適応現象において,今までの研究においては,低セリン濃度においては,速い応答,遅い応答,という二相性が現れており,その発生原因,モデル構築,を試みてきた.しかし,蛍光測定における時間分解能の遅さから,今までのようなシグモイド曲線による近似では最適地を特定することが難しいことが明からになった.そこで,ランプ関数を用いることにより,測定の時間分解能に即した解析方法に変更した.その結果,明確な二相性は消失した.現在,この大きなばらつきの原因を検討している. また,適応現象に必要なタンパク質,CheBに蛍光標識を行い,細胞極への局在状況を計測した.イソロイシンなどの忌避物質投与後に極の蛍光強度は一過的な上昇を示し,その後減少した.この結果においても,同じ条件においても実験結果がかなりばらつくことがわかり,その原因について検討した.その結果,唯一初期細胞内CheB濃度(極,細胞質含めて)に適応の時間に相関が現れた.この結果は,細胞内CheB濃度が多いほど適応にかかる時間が長くなることを示す.しかしながら同一遺伝情報,同一生育状況にも関わらずこのような発現量に差が現れる原因についてはよく分かっていない.プラスミドからではなく染色体からの蛍光タンパク質の発現する計を構築することを検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CheYとCheZという走化性に関わるタンパク質双方に蛍光色素を導入しFRET計測を行った.その結果,セリンなどの誘因物質投与後にFRET効率が下がり,同時に計測していたべん毛モーターの回転計測においては,セリン投与後にCCWを示した.さらに,セリン投与後,数十秒後にFRET効率が復活した.これは適応現象を観察したことになる.しかしながら,励起光による細胞毒性,退色などからあまり強い励起光を照射することができず,現時点では0.5 fpsという比較的遅いサンプリングレートでの実験を行っている.この状況を改善するために,新しい顕微鏡システムの構築を行った.より高い光学特性,感度の高いカメラの仕様などを検討している. また,忌避応答においては適応現象に必要なタンパク質,CheBに蛍光標識を行い,細胞極への局在状況を計測した.イソロイシンなどの忌避物質投与後に極の蛍光強度は一過的な上昇を示し,その後減少した.この現象もまたサブクラスタモデルで検討を行った.忌避応答自体,分子レベルでの動作メカニズムは分かっていない.誘引物質であるセリンは,受容体Tsrと特異的に結合することが分かっているが,イソロイシンなどの忌避物質はそもそも受容体に結合するのかどうかも現時点では不明である.現在,受容体を単体(Tsrのみ,等)での反応の違い,キメラ受容体(TsrとTarのハイブリッド)などの構築を行っており,分子レベルでの動作メカニズムを明らかにしたい
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今後の研究の推進方策 |
バクテリア走化性に関わるすべてのタンパク質を1細胞レベルでイメージングする バクテリア走化性に関わるすべてのタンパク質の挙動を1細胞レベルでイメージングを行う。FRET(蛍光エネルギー移動)光学系においてさらなるS/Nの向上を目指すために,新規蛍光タンパク質の導入,新しい光学系,新しいカメラによる感度の上昇などを向上させ,タンパク質同士の位置の変化をリアルタイムで追跡する.また,長時間撮影のためドリフトを除去するシステムの開発を目指す. CheB局在における分子数の定量化を目指す.現時点では,別の数が分かっており,交換反応がないタンパク質(FliM)の蛍光強度を指標とした見積もりと,蛍光色素の量子収率から計算した見積もり方法がある.現時点ではこれら二つの見積もり結果は2倍ほどの差がある.両者の見積もり方法の再検討を検討する.
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