研究領域 | 情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理 |
研究課題/領域番号 |
19H05799
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 徹也 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90513359)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
64,610千円 (直接経費: 49,700千円、間接経費: 14,910千円)
2023年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2022年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2021年度: 14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2020年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2019年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 適応現象 / 定量生物学 / 理論生物学 / 強化学習 / 学習理論 / 分散部分観測制御 / 化学熱力学 / 非平衡化学熱力学 / 情報幾何学 / 最適制御 / 化学走性 / エントロピー正則化 / Fisherの基本定理 / 最適フィルター / 受容体応答 / 確率モデリング / 部分観測制御 / 完全適応 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞をはじめとする生物は、環境からの入力を受け取り、それに応じて自分の状態や運動など多様な出力を変化させることで環境に働きかけ、様々な生体機能を実現します。このような機能が物理的に見てどれくらい効率的にできているのか、できているとすればその原理はなんなのか、を明らかにするために、情報熱力学を生命現象へとつなげた理論を新たに構築します。 特に細胞内の反応の機能、それを組み合わせた1細胞の機能、そして細胞が集団になった集団としての機能の階層性に着目します。熱統計力学・情報理論・学習理論・進化理論に共通する熱力学的変分構造を媒介にすることで、これらの階層間の関係つなぎうる理論を探求します。
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研究実績の概要 |
【1. 反応の機能とその情報熱力学】 2020年度に見出した反応熱力学のもつ代数的構造を一般化させてゆくことにより、平衡の化学熱力学系のもつヘッセ幾何学的な双対構造を明らかにすることができた。この構造は熱力学の基礎であるルジャンドル双対に根ざした極めて一般的なものである。さらにこの理論をこれまで扱うことが難しかった自己複製する反応系などに拡張することにも成功した。そして平衡の結果を非平衡反応に拡張する目的で非平衡反応系の一般化勾配流との関連を調べた。 【2. 1細胞の適応・学習過程の情報物理学】 2020年度に発展させた大腸菌化学走性の感知と運動制御の最適性をエントロピー正則化最適制御の枠組みで扱う結果を論文としてまとめ掲載された。合わせて大腸菌の化学走性に対して活用したこれらの理論をより複雑な運動モードなどを持つアメーバ様の細胞に拡張する理論研究を開始した。アメーバ様の細胞形状に着目して、情報取得の最適化の観点から最適な細胞形状制御則の導出を進めた。また、大腸菌のべん毛モーターの相関する運動から伝達されている情報量を推定する方法を構築した。 【3. 多細胞集団現象の情報物理学】 多数エージェントに関する分散部分観測制御に関する結果を論文にまとめた。また新たに、制御を行うエージェントがメモリー制約や確率性などの不完全性を保つ場合に最適な感知や制御を求める理論的な枠組みを発展させることに成功した。 並行して、変動する環境下で状態依存的に増殖や死滅を行うエージェント集団の進化的ダイナミクスに対して、個々のエージェントが自身の祖先の振る舞いの情報を用いて学習(祖先学習)することにより、集団としての進化のスピードが本質的に加速されることを示した。また合わせて、Fisherの基本定理を学習をする集団に拡張した理論も導出し、個の学習が集団の適応に果たす役割を定量的に評価する手法も与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平衡・非平衡の化学熱力学を捉える理論的な基盤を構築することができた。また、進化において個の学習と集団の適応の関係を結ぶ新たな理論も構築することができた。さらに生体制御に本質的な役割を果たすメモリーなどのリソース制約を扱う理論についてのヒントが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの計画通り研究をすすめつつ、新たに見出したリソース制約に関する理論を更に発展させる。
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