研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
19H05805
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森山 茂栄 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (50313044)
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研究分担者 |
MARTENS Kai 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (20535025)
安部 航 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (30401285)
風間 慎吾 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (40736592)
中村 正吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50212098)
山下 雅樹 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任准教授 (10504574)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
164,580千円 (直接経費: 126,600千円、間接経費: 37,980千円)
2023年度: 27,170千円 (直接経費: 20,900千円、間接経費: 6,270千円)
2022年度: 21,840千円 (直接経費: 16,800千円、間接経費: 5,040千円)
2021年度: 26,260千円 (直接経費: 20,200千円、間接経費: 6,060千円)
2020年度: 28,340千円 (直接経費: 21,800千円、間接経費: 6,540千円)
2019年度: 60,970千円 (直接経費: 46,900千円、間接経費: 14,070千円)
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キーワード | 暗黒物質 / ダークマター / 液体キセノン / アクシオン / 中性子検出 / ガドリニウム / 低バックグラウンド / キセノン / 中性子検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
暗黒物質(DM)の存在は、宇宙の進化や天体の観測により疑いがない事実と捉えられている。しかしその性質は現在も未知のままである。DMが検出器に衝突する現象を捉える本研究によりDMが未知の素粒子である事実が発見されれば、本領域が挑戦する根源的な「謎」である、「星・銀河はどのようにつくられたのか?」なる問いに答える端緒を与える。領域内の連携を活かし、世界最高感度でのDMの直接検出のための国際共同実験XENONnTに本領域の独自の技術(硫酸ガドリニウムを用いた水チェレンコフ型中性子検出器)を持ち込み、暗黒物質の探索感度を高める。DMと核子の散乱断面積2×10-48cm2を達成し、大発見を目指す。
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研究実績の概要 |
本計画研究では、国際共同実験XENONnTにおいて、暗黒物質と核子の散乱断面積2×10-48cm2に至る性能を実現し、大発見を目指す。そのために実験における究極のノイズとなる中性子の存在を同定するため、本領域内の連携を活かし検出器で信号が得られた時に中性子が存在したかどうかを記録し排除することが必須である。具体的にはスーパーカミオカンデグループが開発した中性子検出の技術を応用する。本領域の低バックグラウンド技術と連携を活かし、放射性不純物が少なく純度の極めて高い硫酸ガドリニウムを調達し、XENONnTの中性子検出器に導入し、運転を行う。本年度は以下の重要な進捗があった。 (1)中性子検出器を純水にて運転を開始し検出器単体としての性能評価を行ない、検出効率として80%を超える値を得た。水チェレンコフ検出器としては最高の効率である。(2)液体キセノンの純化を継続し、電子寿命として10ミリ秒以上を継続できた。(3)水中の光の透過率を測定する分光光度計を用いて、十分な精度で光の透過率を決定できた。(4)硫酸ガドリニウム水の純化装置の試運転を開始した。純水の試運転は完了し、硫酸ガドリニウムを添加した状態での試運転を開始した。(5)硫酸ガドリニウムの粉体移送装置も期待通りに運転できた。 特筆すべき成果として、(6) XENON1Tのデータ解析によって観測された電子反跳を起こす現象の超過の検証をXENONnTで行った。残念ながら超過は新しい物理現象に起因するものではないと結論されたが、重要な結果であり論文を出版した。 その他、(7)XMASSの全データに基づく解析を完了し論文執筆を進め、(8)石英容器を基にした検出器におけるラドン排除の実証や透明電極の開発、 (11)新型光センサー(ハイブリッド光検出器)のための真空紫外分光器の導入、(12)液体キセノンからの近赤外光の検出準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍ではあったが、XENONnTのTPCの運転を開始し、継続してデータを収集することができた。また、初期データを用いたデータ解析も果たし、論文として出版することもできた。一方中性子検出器においては硫酸ガドリニウムを導入して実際に暗黒物質探索を行う準備は進んでいるのだが、TPCに電極の不具合が生じておりその修理のための電極を準備しているところである。電極交換のためにはTPCの周りにある水を廃棄する必要があるため、貴重な硫酸ガドリニウムを失わないように硫酸ガドリニウムの導入を保留している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である暗黒物質探索の感度の実証(20t年の暴露において暗黒物質と核子の散乱断面積2×10-48cm2)のためには、硫酸ガドリニウムの導入が期待される。実際には硫酸ガドリニウムを導入すると20t年の暴露においては1.4x10-48cm2の感度に至ると評価されている一方、現状の純水での運転でも暗黒物質のバックグラウンドとなる中性子が中性子検出器の陽子に捕獲され検出される効率も50%を超えることが分かっており、2x10-48cm2にかなり近い感度を実現できると期待されている。この性能を最大化し、目標達成を図る。平行して、電極を交換しなくとも、少量の硫酸ガドリニウムを中性子検出器に添加することにより、上記の効率を50%より大きく上昇させることも可能である。コラボレーション内で相談を進め、併せて目標達成を目指す。
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