研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05815
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
館山 佳尚 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究センター, センター長 (70354149)
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研究分担者 |
中山 将伸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10401530)
武藤 俊介 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (20209985)
井上 元 九州大学, 工学研究院, 教授 (40336003)
DAM HieuChi 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70397230)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
222,300千円 (直接経費: 171,000千円、間接経費: 51,300千円)
2023年度: 40,300千円 (直接経費: 31,000千円、間接経費: 9,300千円)
2022年度: 41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2021年度: 42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2020年度: 47,840千円 (直接経費: 36,800千円、間接経費: 11,040千円)
2019年度: 49,790千円 (直接経費: 38,300千円、間接経費: 11,490千円)
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キーワード | 電気化学 / イオニクス / 第一原理計算 / 連続体計算 / データ駆動型AI解析 / 分子動力学計算 / 計測インフォマティクス / 拡散 / 二次電池 / インフォマティクス / 全固体電池 / 半導体物理 |
研究開始時の研究の概要 |
蓄電固体材料内の界面では、しばしば特異的なイオンの振舞い(輸送や蓄積)が観測されている。これらは界面付近の電子状態、構造および可動イオン状態の変調が絡み合って生じると予想されるが、既存の電気化学・半導体物理の理論ではこのような複雑な相関を扱うことは未だ難しく、そのメカニズムはわかっていない。本研究では、ナノスケール第一原理計算、高精度メソスケール計算、サブミクロンスケール実験データに関するデータ駆動型AI解析を有機的に組み合わせることでイオンの振舞いをマルチスケールで明らかにする。さらに得られた知見をもとに、電子状態・イオンダイナミクスの相関をより高度に扱える界面理論の構築に取り組む。
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研究実績の概要 |
界面に関連した先端的計算科学・データ科学解析アプローチを開拓し、新規な知見を多数獲得した。大規模第一原理計算研究では、異種原子の取扱いの優位性を生かして、固体電解質の粒界イオン伝導に関するドーパント効果(粒界析出性、Liイオン伝導度など)を明らかにした。また長時間のMDサンプリングが必要となるイオン伝導度評価を効果的に行うためのハイスループット第一原理計算フローの開発を行い,高伝導度を持つ固体電解質の提案に成功した。加えて正極・電解質界面に対してはリチウム空孔形成の第一原理計算により、自発過程でイオンと電子の濃度勾配が界面上で形成されることが示された。この勾配形成について、さらにニューラルネットワーク力場(NNP)を用いたMD計算も行い、1ピコ秒以内となる短時間で界面の電荷濃度勾配が形成されることを確認した。NNPについては、A04班にて提案された遷移金属イオンの再配列を抑止する安定な電極材料の反応機構解析を行い、材料設計指針を与えた。メソスケール計算では、個別要素法を基にした解析と固固界面モデルの連携をさらに発展させて、固体接触界面の変形、粒子分解の再現を進めた。サイクルによる有効反応場の安定性についても評価が可能となった。また応力場の影響を考慮したモデルを導入した。 データ科学系では、計測画像に対する界面の重要特徴量を自動探索できるAI解析手法をさらに発展させた。また計画研究A02が扱う膨大な電子顕微鏡2次元像、硬X線分光タイコグラフィ法による3次元画像に対するAI解析を推進し、反応機構の解明に貢献した。界面等では、ナノスケールで結晶と非晶質の中間に位置する秩序や対称性の崩れた構造が出現する。その記述に向けて,ナノ電子プローブ走査型のEXELFSのスパースモデリングを利用した解析法を開発し、ナノスケールでの元素分布揺らぎと短距離構造との相関を可視化する枠組みを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画研究A03では、蓄電固体界面の電子・イオン状態の(1)計算科学解析、(2)計測等と連動したデータ駆動型AI 解析、その上で(3)界面イオニクスの学理構築を目標としている。 (1)に関しては、大規模第一原理MDの挑戦により様々な界面におけるイオン伝導について予言を行えるレベルに達した。さらに計算コストの高いイオン伝導度のスクリーニングを加速するハイスループット計算材料探索フローの開発・実証も達成した。一方、界面におけるイオン輸送の詳細な機構解明には、第一原理計算のスケールを超えた数nmに渡る空間の合理的評価手法が必要である。今回は、ニューラルネットワーク力場を導入することで、従来型力場計算が不得手とした電荷移動反応を含めたモデルを検討することができた。これにより界面特有のイオン・電子が形成する濃度勾配を再現し、その動的挙動の定量化も可能となった。メソスケール計算に関しては、これまでの応力効果・塑性変形・体積膨張収縮に加え、粒子そのものの割れや形態変形を反映し、それら力学特性と構造変形が及ぼすイオン輸送・電気化学反応への影響を解析可能となった。 (2)については、計測2次元、3次元画像データから学習したデータ駆動型バーチャル計測画像生成技術により構造物性を自動的に発見できるAI手法をさらに発展させた。またこれまで確立したスペクトル分解法を、A04班との連携でNaイオン二次電池負極微粒子の表面状態の化学状態分離・可視化および層状岩塩構造を持つLi(CrMn)O2型正極微粒子材料の特性改善へと応用展開している。更にナノスケール中間秩序構造へのアプローチを進めつつある。 これらの開発・確立した手法をもとに、(3)の学理構築では、界面近辺のイオン分布・イオン移動・拡散に関して、様々な新規原理を提案してきた。本研究課題開始時に比べ、格段に新しい知見が増えており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
実験研究と連携をさらに深化させ、蓄電固体界面の構造・イオン変調・電子状態に関する計算科学・データ科学研究を加速させる。電子的・化学的・力学的・電気化学因子等の解析を更に推し進め、界面イオニクスの学理構築に取り組むと共に、界面イオン輸送・蓄積を促進する材料提案も目指す。具体的には、第一原理ヘテロ固固界面サンプリングをさらに多様な電極/電解質/コート層界面に適用し、それらの知見を統合することでイオン・電子の(標準)電気化学ポテンシャルや活量の描像を実験とより整合性の取れた形に改良しつつ、ニューラルネットワーク力場を用いて界面におけるイオン輸送を評価する。更に実際の全固体電池材料の反応系で、例えばSEIが形成する複雑な反応過程などを評価する。そのために界面電子構造解析を行うと同時に、不安定被膜形成による反応劣化を防ぐ方法論も検討する。さらに複雑な固体粒子混合構造を対象に、その動的変形と電気化学反応の連成解析を行っているが、今後はより複雑な挙動、例えばクラック部のデンドライト成長などを評価する。また機械学習との連携により、多種の構造条件での解析を進め、電極構造と電池性能の相関に関して体系化を目指す。 データ駆動型AI 解析側では、これまでの次元削減法・スパースモデリングなどテクニックを取り込んだ大きなデータ解析のスキームへと発展させるために、多種分光データを一括して特徴量を抽出し、それぞれに物理的意味を与えることによって、各種条件で合成された材料の劣化過程などの物性を統計的に定量評価・可視化するアルゴリズム開発に取り組む。また2次元・3次元画像の高速現像技術や画像データに対して固体材料界面の重要特徴量を自動的に発見するAI解析手法の開発を更に発展させ、界面付近でイオン移動描像のさらなる深化を目指す。最終的に、蓄電固体界面科学の教科書を作成できるよう理論的な準備を今後も進めていく。
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