研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
19H05826
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 (2020-2023) 大阪大学 (2019) |
研究代表者 |
小林 研介 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10302803)
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研究分担者 |
戸田 泰則 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00313106)
戸川 欣彦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00415241)
石坂 香子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20376651)
岡崎 浩三 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40372528)
有馬 孝尚 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90232066)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
251,420千円 (直接経費: 193,400千円、間接経費: 58,020千円)
2023年度: 37,570千円 (直接経費: 28,900千円、間接経費: 8,670千円)
2022年度: 37,700千円 (直接経費: 29,000千円、間接経費: 8,700千円)
2021年度: 31,460千円 (直接経費: 24,200千円、間接経費: 7,260千円)
2020年度: 83,850千円 (直接経費: 64,500千円、間接経費: 19,350千円)
2019年度: 60,840千円 (直接経費: 46,800千円、間接経費: 14,040千円)
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キーワード | 量子液晶 / 電子状態 / 素励起 / ナノサイエンス / 超高速光技術 / ナノサイエン ス |
研究開始時の研究の概要 |
近年、様々な物質において、その電子状態が流動的でありながら、同時に、異方性を獲得する事例が次々と発見されている。このような物質群を量子液晶と名付けることができる。量子液晶の最大の特徴は、自己組織化した柔軟な電子状態を持ち、外場に対して高速かつ巨大な応答を示す点にある。我々は、高速巨大応答を生み出す素励起の実体を解明し、外場による量子液晶の素励起・配向性の制御を行い、機能の創出を目指す。
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研究実績の概要 |
量子液晶の電子状態の制御を行い機能開発につなげるために種々の物質で測定を行うと同時に、実験手法の開発に取り組んだ。取り組んだ内容と成果の概要は以下の通りである。 有馬は中性子やX線による磁気スキルミオン相の同定を行うとともに、磁気スキルミオン相が示す熱伝導現象の研究を行い、温度勾配に対してマグノンの運動が曲げられる現象としての熱ホール効果の観測に成功した。石坂は超高速時間分解電子顕微鏡の5次元走査計測系の整備を進め、収束電子回折による歪場のピコ秒・ナノメートルの定量マッピングを可能とした。また、ツイスト積層モアレ超格子系における大きな光誘起層間距離変化を見出した。戸田はビーム断面に特異点を有する光渦を用いた銅酸化物高温超伝導体の光誘起時空間相制御の研究を行い、光渦誘起準安定電子状態を用いた時空間イメージングの実現とその超解像特性の実証という成果を得た。岡﨑は中赤外光をポンプ光に用いた時間・角度分解光電子分光を行い、トポロジカル絶縁体Bi2Se3における光励起非平衡状態において、電子温度とケミカルポテンシャルの時間依存性について特徴的なポンプエネルギー依存性を観測する、という成果を得た。戸川は、スピンソリトン格子の集団共鳴運動の研究を進め、40GHzまでの広帯域で可変な共鳴周波数を実証した。カイラルスピン物質の特性に応じて数百GHzのサブテラヘルツ帯で応答し、現行5G通信技術を超える次世代通信技術に資することを示した。小林は磁気トンネル接合における非線形伝導について2021年の成果を発展させた測定を行い、非線形伝導の普遍性を見出した。色中心量子センサの研究をさらに進め、フロケ状態を実証し、ナノダイヤモンド磁場イメージングにおいて機械学習を用いた磁場推定法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記のように活発な研究展開を行い、相当の進展を見たことから(1)の判断に至った。 有馬は代表的なスピン液晶状態の一つである磁気スキルミオン状態について、正方格子と菱形格子の間の相制御や、熱ホール効果の開拓に成功した。石坂は5次元走査型電子顕微鏡計測による歪場や磁場の超高速マッピング(Faraday Discuss誌, Rev. Sci. Instrum. 誌)、複雑な2次元原子層系や強相関物質の超高速イメージング計測に成功した。戸田はビーム断面に特異点を有する光渦パルスの空間特異性を用いた光誘起局在超伝導の創出と、これをプローブとする時空間イメージングを実現した。岡﨑は中赤外光をポンプ光に用いた時間・角度分解光電子分光により、光励起非平衡状態において興味深いポンプエネルギー依存性を観測した。戸川はサブテラヘルツ領域に及ぶスピンソリトン格子の集団共鳴(フォノンモード)の可変周波数特性の解明、および、カイラルスピン物質の基本特性の組成依存性を解明しその最適化で成果を上げた。小林は色中心量子センサの研究が順調に進展し、フロケ状態の実証や窒化ホウ素量子センサの開発を行い、ナノダイヤを用いた磁場イメージングやサーモグラフィ測定などの成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
有馬はスピン液晶系における多彩な相制御とそれに伴う機能の開拓のために、複合的な外場下における放射光X線散乱実験や中性子実験を行うとともに、建設中の高輝度放射光施設ナノテラスにおける軟X線散乱イメージングのための装置開発を行う。石坂は特異なフォノンや磁気ダイナミクスの理解と物性機能探索のため、第一原理計算やシミュレーションと比較しつつ、多様な量子液晶物質における局所結晶構造や歪場、磁場のピコ~サブミリ秒イメージング計測を行う。戸田はトポロジカル光波の空間特異性を量子液晶に対する新規な光誘起相制御として活用するため、銅酸化物超伝導体の擬ギャップに対して光渦によるコヒーレントクエンチを適用する研究を行う。岡﨑は光によるネマティック電子状態の制御を実現するために鉄系超伝導体を対象とした中赤外ポンプ時間・角度分解光電子分光を行う。戸川は、量子液晶の物質機能を開拓するため、メゾスコピック・ナノデバイス作製を高スループット化し、マイクロ波分光を用いた偏光検波へ高周波計測システムを改良し、スピンソリトン集団素励起などの研究を進める。小林は、色中心量子センサを用いた物性計測手法を確立し、量子液晶を始めとする種々の電子状態への適用を目指した研究を行う。
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