計画研究
学術変革領域研究(B)
全球非静力学モデルを用い、全球雲解像気候実験の先駆けとなる10kmメッシュ以下での10年積分という世界初の気候実験を実施する。再現性の調査、既存モデルとの比較、感度実験、および大気海洋結合テスト実験により全球雲解像気候モデル実現に向けた課題を世界に先駆けて特定し、その解決に挑戦する。これにより、気候システムにおける雲・気候の相互作用の理解と予測に革新をもたらす全球雲解像気候モデルを獲得する。
DNA(Deep Numerical Analysis)気候学の開拓を目指し、全球非静力学モデルNICAMおよび大気海洋結合モデルNICOCOを信頼できる次世代全球気候モデルとして確立するため、本年度はスーパーコンピュータ「富岳」において、主に14kmメッシュのNICAMを用いた年スケールの感度実験を多数実施してモデルの標準設定を検討した。具体的には、これまで56-14kmメッシュ気候実験で用いてきた実験設定をコントロールとし、新たに乱流拡散効果を導入することで中層の乾燥バイアスおよび降水過剰バイアスが抑制できることが分かった。また、鉛直層を38層から78層へほぼ倍増することで、熱帯対流圏上層の高温バイアスや亜熱帯ジェットの高緯度バイアスが低減することを見いだした。加えて、研究協力者らが作成した季節内振動向けのモデルパラメータを参考にしながらコントロールの雲微物理スキームのパラメータを見直し、平均場の再現性を保ちながら季節内振動の再現性を高めることに成功した。以上を踏まえて、全球雲解像気候実験を行うための現時点で最適な標準設定を決定し、これを用いて3.5kmメッシュNICAMで気候実験を実施するための準備を行った。並行して、大気14kmメッシュ、海洋1度メッシュのNICOCOを用いて1年テスト積分を実施し、全球平均した海水面温度が1年で1K程度上昇すること、地表面への短波入射が過剰であることを確認した。また、気候モデルMIROCとNICOCOの風応力や水温について比較を行った。これらの結果をAGU(アメリカ気象学会)、JpGU(日本地球物理学連合)、日本気象学会などにおいて発表するとともにNICAM開発者会議において集中的に議論することで、新しい標準設定について議論を深めた。
1: 当初の計画以上に進展している
全体として研究実施計画通りに進捗しているが、特に平均場と擾乱場、双方をバランスよく再現可能なモデルの標準設定を決定できたことは大きな進展である。また、大気14kmメッシュのNICOCOを用いた1年積分に初めて成功し、気候場の特徴が明らかになり始めたことも当初の想定以上の進展である。
基本的には当初の計画通り研究を推進するが、気候実験は当初想定していた7kmメッシュから3.5kmメッシュのNICAMへ変更する。これは、富岳における3.5kmメッシュの実現可能性、7kmメッシュNICAMにおける気候バイアスの問題と雲解像に一歩足りないメッシュサイズの中途半端さ、複数のモデルセンターが数年内に3.5kmメッシュレベルの気候実験を達成する計画を掲げている点、などを課題内で検討した結果、3.5kmメッシュの気候実験にリソースを割くべきであると判断したためである。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 11件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Geosci. Model Dev.
巻: 14 号: 2 ページ: 795-820
10.5194/gmd-14-795-2021
Geophysical Research Letters
巻: 48 号: 20 ページ: 1-11
10.1029/2021gl094239
https://dna-climate.org/publications/