研究領域 | 土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05811
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐々木 由香 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 特任准教授 (70642057)
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研究分担者 |
能城 修一 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (30343792)
伊藤 美香 昭和女子大学, 食健康科学部, 講師 (70276624)
吉冨 博之 愛媛大学, ミュージアム, 准教授 (10542665)
首藤 剛 熊本大学, 大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター, 准教授 (80333524)
黒住 耐二 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員研究員 (80250140)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
66,430千円 (直接経費: 51,100千円、間接経費: 15,330千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2022年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2020年度: 26,780千円 (直接経費: 20,600千円、間接経費: 6,180千円)
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キーワード | 土器付着炭化物 / 動植物遺体 / 土器圧痕 / 縄文時代 / 弥生時代 / 形態学的同定 / 動植物利用 / 利用動植物の生態・効能 / 土器 / 形態学 / 圧痕 |
研究開始時の研究の概要 |
土器製作時に粘土内に残る圧痕や土器製作で使われた動植物、土器使用時に焦げて残る動植物遺体(昆虫や貝類を含む)の形態学的研究を行う。本研究では、土器を介在として人間により加工・変形された動植物のリファレンスを作製し、新たな形態学的同定方法を開発する。また、同定された動植物の生態や効能から、食用だけでなく、染料や薬用、出汁としての利用を解明する。これらの成果を総合して、利用動植物の生態・効用を科学的(化学的)に追究し、土器の製作と利用の実態を解明する。
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研究実績の概要 |
A02班の活動は、①現生動植物標本の収集・実験と②遺跡出土試料の同定を通して、人間によって改変された動植物遺体の新たな形態学的同定を開発することを目的とする。 ①現生動植物標本の収集・実験:9月に東京大学樹芸研究所で植物採集を行ってさく葉と木材など62標本を採集し、対照標本とした。6・7・10・2月には、岩手県一戸町の御所野縄文博物館とその周辺で液果類やシダ類を採集した。液果類は成分分析用に採取して煮詰め実験を行い、シダ類は前年度に引き続き成長度の異なる素材と加工方法を変えて縄の製作実験を行った。繊維では、技術者に現生植物による縄の製作を依頼し、外部形態、組織構造、ファイトリスの形態を観察してデータベース化しつつある。昆虫は、生態を把握するため、コイン精米機で穀物害虫の採集を進めた。成分分析ではキハダを重点的に分析し、煮詰めた後に変化する果実の薬効成分を確認した。さらに、生と煮詰めた他の液果でも分析を進めつつある。 ②遺跡出土試料の同定:公募研究者や研究協力者と連携、協力し、主に東北から北海道の縄文ー古代の土器圧痕調査を実施し、口頭発表や論文化を進めた。また、圧痕レプリカの走査電子顕微鏡撮影を研究補助者により昭和女子大学と明治大学で定期的に実施した。さらに、土器底部の敷物圧痕を採取し、技法や土器に敷かれたタイミングなどを検討した。繊維では、繊維土器の繊維圧痕のレプリカの観察や残存繊維自体をSEMで観察した。貝類では、1.7万年前の海産の食用貝類を発見した。土器圧痕から貝層起源の貝類を発見し、土器づくりの場に貝層からの持込みを推定した。また複数遺跡の土器圧痕から、小型の幼貝が土器製作の場に散らばっていた可能性を明らかにした。昆虫では、圧痕の同定を進め、新たにいくつかの甲虫を同定した。 そのほか、オンラインで班内会議を定期的に実施し、調査状況を共有して今後の計画を打ち合わせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物では、土器圧痕レプリカの走査電子顕微鏡撮影を2大学の研究補助者を中心に進め、累積で約30遺跡、合計約2000点の撮影が終了し、採取、撮影、同定作業、さらに今年度は報告へとつながる連携体制を構築できた。 昆虫と貝類では、不明圧痕の同定を進めた。さらに、土器圧痕でみられる貝類に関連する現生・遺跡の微小貝類を含む論文・報告を6編執筆した。貝類図鑑の監訳を行った(8月刊行予定)。 成分分析では、加工実験でキハダ果実を煮詰めて変化する薬効を分析して土器付着炭化物と比較し、論文化に向けて検討を進めた。さらに、大学との共同研究で縄文時代に頻繁に利用された植物性食品の主要成分表を作成し、いくつかについては標本を採取して栄養成分を分析し、3大栄養素のカロリー計算から当時の食文化についての新たな知見の追究を目指している。 これらの中間的な成果は、口頭発表、論文化などを行って公表した。さらに、若手研究者、学生・大学院生を対象にした若手育成を目的としたワークショップやセミナー、レクチャーを開催して、研究方法を周知させるとともに、報告や論文化に向けた同定の技術的な指導を行った。 上記のように、研究成果をあげつつある点から、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最終年度となる2024年度は、これまで採取した現生動植物標本の整理やデータ化、土器付着炭化物や土器圧痕のレプリカの同定、報告・論文化を随時実施していく。並行して、前年度から引き続き過去に採取した圧痕レプリカの未同定資料に貝類や昆虫の圧痕が多く含まれるため、同定を推進する。また、定期的に計画班内と関係する公募研究者と研究協力者を交えてオンラインでの打ち合わせ、研究セミナーを実施する。さらに、公募研究2名と連携して、学生らの若手研究者育成も兼ねた土器圧痕調査や同定を進める。 2024年度は以下の4項目を重点的に研究を進める。 (1)土器圧痕の種実・繊維・昆虫・貝類の同定と、土器付着炭化物や繊維などの動植物遺体の同定を進め、報告・論文化する(他班との連携も含む)。 (2)これまで採取した現生リファレンス標本および加工された動植物標本の収集の標本化を行い、新たな識別点を論文化する。 (3)加熱実験などで得られた加工した現生標本の生態・効能を科学的(化学的)に追究し、利用法について検討し、論文化する。 (4)若手研究者・学生向けのセミナー等を実施し、技術的な指導・サポート体制を引き続き継続するとともに、公募研究や研究協力者と共同研究してきた成果を報告・論文化する。
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