研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
20H05836
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐伯 昭紀 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10362625)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
75,660千円 (直接経費: 58,200千円、間接経費: 17,460千円)
2024年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2023年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2022年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
2021年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2020年度: 17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
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キーワード | 有機太陽電池 / ドナー・アクセプター / 時間分解マイクロ波伝導度(TRMC) / 時空間分解 / エキシトン / 動的エキシトン / 電荷キャリア移動度 / 非フラーレン電子アクセプター / 誘電物性 |
研究開始時の研究の概要 |
独自のマイクロ波分光プラットフォームを駆使し、ドナー・アクセプター(D・A)材料中の電荷・励起子のナノ空間電気物性(移動度や誘電物性)とダイナミクスをナノ秒~ミリ秒に渡って明らかにする。本測定法はGHz高周波をプローブとする過渡分光法であり、その多彩な評価軸(周波数、温度等)から局所ナノ空間における動的エキシトン相互作用の基礎物性を解明できる。これらのナノ空間電気物性と誘電物性の研究を通じて、kHz-MHz-GHzでの動的エキシトンの基礎学理を包括的に解明する。
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研究実績の概要 |
核や格子の運動、スピンと軌道の相互作用などが動的効果として時間発展的に働く「動的エキシトン」は、光化学で重要な研究課題である。そこで、動的エキシトンの時間と空間での理解に向けて、独自のマイクロ波分光を用いた光電気および誘電ダイナミクスの評価に着目する。この時間分解マイクロ波伝導度(TRMC)法は、光パルス照射で過渡的に生じた電荷キャリアや誘電変化をGHz電磁波(マイクロ波)で非接触に評価する手法である。通常の接触型電極評価法と異なり、ナノメートル空間の局所的な電気・誘電応答を観察でき、ns~msの時間スケールのダイナミクスが得られる。さらに、代表者独自の周波数分散評価、外部電場印加など多彩な評価軸を駆使し、動的エキシトンの学理構築の強力な手段へと発展させる。D・A界面を制御した試料や任意の積層試料を評価・解析することで、素子評価だけでは判別できない電荷・エネルギー移動過程を解明する。 本年度は、独自に開発した飛行時間(TOF)―TRMC同時促成装置を用いてポリマー:フラーレン太陽電池中のホールおよび電子の移動度緩和の直接評価を行った。結晶性の異なる3種類の高分子に対して評価を行った結果、ホール・電子共に素子の変換効率と最適膜厚に対して移動度緩和が良く相関することを見出した。さらに、CELIV測定も行うことで、電荷再結合速度定数を評価し、これらを基に半経験的な式と機械学習モデルを用いて太陽電池性能の支配因子を明らかにした。また有機太陽電池の機械学習についても、仮想的な失敗データを用いるという新たなコンセプトを導入し、実際に高分子を合成して検証することでモデル性能の向上を実証した。また、新たなD-A高分子を設計合成し、塩素の導入が高分子の動的効果や素子性能にどう影響するかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、「動的エキシトン学理に直結する光電気・誘電物性の評価とモデル構築」および「動的エキシトン学理解明を志向したD-A連結分子の設計」の2項目の研究を行う。第1項目では、A01班(動的エキシトン創成)が設計したD・A分子の光電気・誘電物性評価を行い、核や格子の運動やSOCなどの動的効果を時空間スケールで解明することを目的とする。また、A03班(動的エキシトン機能)が推進する光学・生体材料の機能を説明するための物性測定を行い、A02班(動的エキシトン解析)と連携して光電気・誘電物性の評価と包括的なモデルの構築を目指す。現在、温度変化(LT/HT-TRMC)測定およびポンプ・プッシュ(PP-TRMC)測定からはキャリア伝導モデルやトラップ状態、時空間分解測定(S-TRMC)からはキャリアダイナミクスの空間分布測定、飛行時間同時測定(TOF-TRMC)が稼働できる状況となり、キャリア輸送の時空間発展に伴う緩和過程を評価している。 第2項目では、A01とA03班から提供されるD・A分子に加え、本研究課題では動的エキシトン学理解明を志向したD-A連結分子を独自に設計・合成し、その光電気特性を評価する。光吸収や電界注入による励起子の生成とその緩和過程の制御は、素子性能に直結する。狭バンドギャップ化に伴い、エネルギーギャップ則に従って励起子の寿命が極端に短くなることからも、振電相互作用の制御は極めて重要である。その手法として、振動モードを低波数にシフトさせるため、非対称分子の設計、元素置換、立体化学・位置規則性を制御したD-A連結分子を合成する。いずれの場合も高分子骨格の電子・振動状態が変化するだけでなく凝集形態や混合膜構造も同時に変化するため、構造解析・時空間ダイナミクス・エネルギー準位に関する包括的物性評価が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
近年のOPV変換効率は、ITICやY6に代表されるA-D-A型非フラーレン型アクセプター(NFA)の登場により大きく向上している。これまでの機械学習モデルでは主にITICをN型半導体として対象としてきたが、高効率Y6材料に対しても同様にスクリーニングを行い、高性能が期待できる高分子を設計・合成する。また、Y6分子は狭バンドギャップにもかかわらず、励起子拡散距離は中程度でエネルギー損失も小さい。特に振電相互作用とSOCによるCT状態のエネルギー準位縮退や、エキシトン・フォノンカップリングが関与する励起子の緩和過程、ポーラロン・フォノンカップリングが関与する電子移動度の緩和過程などが挙げられるが、詳細は不明である。近年は四重極子の効果も注目を集めており、最適な対象を用いて深い基礎学理探究の必要性に迫られている。そこで、ポリマーないしそのモデル化合物とNFAとのヘテロジャンクション膜に対してTRMC測定を行い、動的エキシトン状態のダイナミクスをナノ秒~ミリ秒で追跡する。さらに、TOF-TRMCをさらに発展させた新たな装置開発を行う。これらの評価と並行して、A01班・A03班から提供されるD・A分子(NFA等)も同様の評価を行い、材料ライブラリーを増やすことで、一般化可能なモデル構築を行う。高分子太陽電池だけでなく、有機無機ハイブリッド太陽電池に対しても、研究者独自の評価法を用いて材料スクリーニングや性能支配因子解明研究を行っていく。これらの連携研究で得られる知見を動的エキシトン効果の検証とモデル構築に適用し、その学理探究につなげる。TRMCによるD・A分子の光電気特性、誘電物性評価を行い、以後引き続いて動的エキシトン実証を志向したD-A分子の合成と機能・評価を行い、動的エキシトン学理構築を目指す。
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