研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
20H05842
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
村上 達也 富山県立大学, 工学部, 教授 (90410737)
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研究分担者 |
沼田 朋大 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (20455223)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
77,350千円 (直接経費: 59,500千円、間接経費: 17,850千円)
2024年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2020年度: 28,340千円 (直接経費: 21,800千円、間接経費: 6,540千円)
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キーワード | 視力回復 / 膜電位 / ナノ電場 / 光制御 / 点眼 / 細胞膜電位 / 膜融合 / 配向制御 / 脂質ナノ粒子 / ドラッグデリバリー / 光細胞工学 / イオンチャネル / 神経発火 / 薬物送達 / 難病治療 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終目標は、ドナー分子(D)とアクセプター分子(A)で構成されるD-A連結分子を用いて、神経難病の光治療や生体深部イメージングを実現することである。光照射下でD-A連結分子により発生する分子内電荷分離状態(Dが正電荷、Aが負電荷を帯びる)を強力なナノ電場と捉える。このナノ電場を神経伝達のために細胞膜電位というナノ電場を利用している神経細胞に作用させ、その伝達をD-A連結分子でコントロールすることを目指す。さらに高効率で赤外発光するよう巧妙に設計されたD-A連結分子を別途開発し、生体深部がんのイメージング剤としての可能性も探求する。
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研究実績の概要 |
ドナー-アクセプター連結分子(D―A分子)による視神経細胞活動の光操作、究極には、点眼による失明患者の視力回復に向けて、D-A分子の(1)細胞膜内輸送と(2)細胞膜内異方的配置(D部分は細胞内側,A部分は細胞外側)に注力した。 まず(1)を実現するためのD-A分子輸送キャリアの開発について報告する。これまでのキャリア(ND)と膜融合性脂質を用いて作製した膜融合性ND(fND)を蛍光ラベルし、培養神経細胞に作用させると、fNDの細胞親和性はNDのそれに比べてかなり低下することがわかった。そこで次にfNDの細胞膜親和性を向上させるため、fNDに含まれる細胞膜透過ペプチドを、現状のTAT(HIV由来)からPEN(ショウジョウバエ由来)に変更したところ、顕著な改善が観察された。一方で、PENを含むNDはfNDの約70%の膜融合活性を示した。つまりPENは膜接着・膜融合活性いずれにも優れることが明らかとなった。 次に(2)についてモデル実験を行った。D-A分子のモデルとして用いてきたカチオン化フラーレン(CatC60)を含むリン脂質膜を作製し、その後水和させてリポソームを作製したところ、CatC60添加量に応じて、得られるリポソームの脂質膜相転移が減弱し、本方法によってCatC60を膜中に含むリポソームを作製できることがわかった。CatC60搭載リポソームに、D-A分子を細胞膜内で異方的に配向させるためのアンカー分子(pyrenebutyrate, PyB)を添加すると、PyB蛍光はCatC60搭載量の増加とともに減弱した。以上のことから、PyBはコンセプト通り、D-A分子の細胞膜内異方的配置の実現に寄与する可能性が明らかとなった。 PyBを作用させた培養神経細胞に、D-A分子(TC1)を搭載させた上記NDを作用させ、光照射すると、照射直後のみ素速い膜電位変化が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PENという新しいペプチドを利用することで、細胞膜親和性と細胞膜融合活性を併せ持ったNDを作製することに成功した。脂質組成がこれまでのNDと同じであることから、D-A分子搭載も問題なく行えることが期待される。 D-A分子の細胞膜内異方的配置のためのアンカー分子(PyB)の利用というコンセプトが、CatC60というD-Aモデル分子で実証できたことは大きな前進だと考えている。今後D-A分子を用いて、同様の実験を行いたい。 そして最大の研究成果は、膜融合活性を有するNDとPyBの利用によって、培養神経細胞における光誘導膜電位変化が迅速化されたことである。つまり本研究課題の中心コンセプトが部分的に証明されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
追加合成されたD-A分子(TC1)を入手できたため、まずは上記の迅速な光誘導膜電位変化の再現性を調べる。上記の研究実績の概要には記載しなかったが、使用するNDの種類に応じて、迅速な光誘導膜電位変化の出現タイミングが異なるという奇妙な現象を観察しているため、このメカニズムを探究する。 蛍光ラベルNDをマウスに点眼し、角膜吸収・網膜移行性を評価する。 TC1とは異なるメカニズムで分子内に正負電荷を生じる分子を作田博士(長崎大院工)から入手する予定であり、入手し次第、ND搭載を試み、光誘導膜電位変化するかどうか調べる。
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