研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
20H05847
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相川 祐理 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40324909)
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研究分担者 |
花輪 知幸 千葉大学, 先進科学センター, 特任教授 (50172953)
渡部 直樹 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50271531)
古家 健次 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80783711)
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
吉田 直紀 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90377961)
山崎 祥平 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90570177)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
95,160千円 (直接経費: 73,200千円、間接経費: 21,960千円)
2024年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
2023年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
2022年度: 20,930千円 (直接経費: 16,100千円、間接経費: 4,830千円)
2021年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
2020年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
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キーワード | アストロケミストリー / 量子化学計算 / 理論天文学 / 星・惑星系形成 / リングポリマー分子動力学 / 反応経路探索法 / 原始惑星系円盤 / 同位体分別 / 原始星 / 経路積分法 / 重水素濃縮 / 反応性脱離 / 原始星コア |
研究開始時の研究の概要 |
近年、原始星の周囲数100天文単位以内を空間分解した観測が可能となった。そこは10 Kから300 K程度の中間温度領域であり、星間物質から惑星系物質への進化の現場である。中間温度でのさまざまな素反応の反応速度や分岐比の解明は、ポテンシャルエネルギー曲面の決定に加え、反応ダイナミクスの理解も必要となるなど理論化学においても新たなフロンティアである。本研究では星間化学、量子化学計算、宇宙物理学の専門家が協力し、中間温度においても定量的な予言性をもつ次世代アストロケミストリーを構築するとともに、星・惑星系形成過程における物質進化を解明する。
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研究実績の概要 |
ミクロチームは機械学習を応用したポテンシャルエネルギー曲面(PES)の作成法を開発した。反応経路探索法を用いて、PES上のエネルギーの低い反応経路上の分子構造およびその微分を効率的にサンプリングし、初期ポテンシャル曲面を作成する方法を提案した。さらに得られた初期ポテンシャル曲面を改良することで、精度の高いPESが作成できることが分かった。作成されたPESを使ってリングポリマー分子動力学を適用し、星間分子で重要な反応の反応速度や分岐比を計算する研究スキームを確立した。また、有機分子における光化学反応の機構を明らかにするために、時間依存密度汎関数理論に基づいた励起状態PESの量子化学計算を行った。 マクロチームはHS + H → H2Sなどの反応性脱離の実験を動的モンテカルロ法でシミュレートした。その結果各反応一回当たりの反応性脱離確率を求め、反応熱の約7%が生成物の並進運動エネルギーに転換されると脱離確率が説明できることを示した。 原始惑星系円盤については、高空間分解能輝線観測大型プロジェクトの結果が計20本の論文として出版された。特に我々は重水素同位体および電離度に関わる分子の解析を行い、理論モデルとの比較も行った。さらにHC18O+分子を円盤で初検出し、酸素同位体分別の環境依存性について知見を得た。原始惑星系円盤の輻射流体力学計算では、水素分子の解離と紫外光パンピングによる加熱効果がガス流出に及ぼす影響を定量的に明らかにした。円盤内のダスト/ガス質量比を数桁にわたって大きく変えた計算を行い、紫外光パンピングの効果が卓越するパラメタ領域を求めた。 原始星天体については、昨年度作成した数値計算コードを用い分子雲コアTMC-1AのCS分子輝線に見られる極端な非対称性を説明する3次元モデルを構築した。また流体計算と反応ネットワークを組み合わて原始星コアの重水素濃縮を調べ、水の重水比が原始星コア以前の段階で決まっていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・星間分子で重要な反応の反応速度や分岐比を計算する研究スキームを確立できた。 ・従来現象論的な議論にとどまっていた反応性脱離について、実験結果を数値計算で再現することにより、定量的な理解を一歩進めることができた。 ・原始惑星系円盤の高空間分解能輝線観測の結果を理論モデルとの比較も含めて論文にまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
機械学習と反応経路探索法を使ってポテンシャルエネルギー曲面を開発する方法を、さらに他の星間化学反応へと適用する必要がある。特にどれくらい複雑な化学反応まで適用できるかの検討を行うことが急務である。光解離反応については、分子雲でよく観測されるc-C3H2を例としてさらに詳細な量子化学計算を行う。時間依存密度汎関数理論では正しく取り扱えないポテンシャル間の交差を計算するため、CASSCF法などの多配置の分子軌道法を採用する。 原始惑星系円盤については、鉛直方向のガス・氷ダスト物質輸送および気相・固相化学反応を考慮した円盤化学モデルを開発を進め、円盤の元素組成空間分布の時間発展を理論的に明らかにする。 原始星周辺の非軸対称な流れはstreamerと呼ばれ、近年複数の天体で発見されて注目を集めている。TMC-1A以外の天体についても、今年度行った研究と同様のモデル設定により説明できないか検討を続ける。また数値計算精度の向上も目指す。
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