研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
20H05848
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
中野 祐司 立教大学, 理学部, 教授 (20586036)
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研究分担者 |
飯田 進平 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20806963)
田沼 肇 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30244411)
椎名 陽子 立教大学, 理学部, 助教 (70845221)
木村 直樹 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 助教 (80846238)
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 教授 (90311993)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
229,450千円 (直接経費: 176,500千円、間接経費: 52,950千円)
2024年度: 23,790千円 (直接経費: 18,300千円、間接経費: 5,490千円)
2023年度: 24,700千円 (直接経費: 19,000千円、間接経費: 5,700千円)
2022年度: 35,360千円 (直接経費: 27,200千円、間接経費: 8,160千円)
2021年度: 66,040千円 (直接経費: 50,800千円、間接経費: 15,240千円)
2020年度: 79,560千円 (直接経費: 61,200千円、間接経費: 18,360千円)
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キーワード | アストロケミストリー / 合流ビーム / イオントラップ / イオン移動度 / 星間分子 / イオン分子反応 |
研究開始時の研究の概要 |
ALMA望遠鏡やはやぶさ2をはじめとする観測,探査技術の飛躍的進歩によって,宇宙の物質や天体の構造がかつてないほど鮮明に見えるようになり,星や惑星系の誕生する領域に様々な分子が多様に分布していることが分かってきた。本研究の目的は,このような領域で進む複雑な化学過程を単一の原子分子レベルに掘り下げて理解することにより惑星系形成時の劇的な物質進化過程を解明し,太陽系の物質の起原を追究することである。単一の原子分子の量子状態,並進運動を高度に制御して衝突反応の詳細を調べるため,最先端のビーム制御技術を用いた実験的研究を展開する。
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研究実績の概要 |
本研究では惑星系形成領域における複雑な化学組成分布の意味を化学過程に基づいて理解することを目指し,気相反応過程において重要な役割を果たしているイオン- 分子反応・イオン-中性粒子反応に関する新たな実験研究の展開を目的としている。昨年度に引き続き,立教大学,上智大学,都立大学の3拠点を中心としてそれぞれ合流ビーム法,イオントラップ法,イオン移動度法による実験研究を相補的に行い,毎月の研究ミーティングや相互の技術連携によって協働的に研究を推進した。 立教大では合流衝突による低エネルギーイオン・中性反応の観測にむけたビームラインを整備し,デュオプラズマトロンイオン源で生成したAr+,O+,H3+ビームや,光電子脱離によって生成した中性H原子ビームを用いたテスト実験を行った。また,状態選択的な反応断面積の測定に向け,プラズマイオン源で生成したN2O+分子イオンビームのレーザー分光と分子内部温度測定の手法開発に取り組んだ。上智大ではRFストレージイオン源から引き出した低エネルギーイオンビームの質量分析システムを完成させ,星間分子として重要な重水素を含む水素分子イオン,プロトン化水素分子イオンビームの分離・引出しに成功した。また,波状及び線形シュタルク分子速度フィルターによる低速分子線(アンモニア,メタノール,アセトニトリル,モノメチルアミン等)の生成を確認した。一方,既存のイオン-極性分子反応測定装置を利用した実験では,低速アセトニトリル分子と共同冷却されたN2+の反応速度測定を実施した。都立大では,低温水素ガス中でのH+. H2+, H3+などのイオン分子反応に関する基礎測定を行った。その中で想定していなかった構造異性体の存在を示唆するイオン移動度データが得られたため,計画を7ヶ月延長して分子構造の検証のための装置改良を行うとともに,イオン移動度のモデル計算にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
立教大学では合流衝突様ビームラインの構築はほぼ完了し,分子イオンビームを用いたテスト実験を実施できている。しかし一部コンポーネントの開発において目的とする中性ビームの生成効率を達成できておらず,合流衝突実験の実施がやや遅れている。上智大学では上述のように既設のイオン-極性分子反応測定装置を用いた実験を進め,星間化学・惑星大気化学で重要なCH3CN + N2+反応の速度定数を並進温度18~39 Kで測定し,捕獲理論との比較を行った。一方,現在開発を進めている新たなイオン-極性分子反応測定装置では,波状・線形シュタルク分子速度フィルター,ストレージイオン源のテスト実験は概ね終了したが,冷却8重極線形イオントラップ及びトラップイオン検出系のテスト実験を現在進めている状況である。都立大では液体窒素によって気体を冷却できる既存の移動管装置を用いたH3+に関する予備実験の結果を踏まえて,機械式冷凍機を用いる温度可変型の新規装置の設計を見直した。メインチェンバーの製作は完了したが,冷凍試験のために必要な部品の製作は進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,各拠点において開発を進めてきた新たな実験手法について,実際の反応系を想定したテスト実験を進め,本研究課題の目的である高精度な反応速度定数とその温度依存性の測定へ向けて研究を推進する。 立教大学では分子イオンビームと中性原子ビームを合流衝突させるための静電型ディフレクタを導入し,合流経路の形状因子(衝突積分)を高精度に測定するためのビーム診断系を追加する。その上でCH+など炭化水素分子イオンを用いた合流衝突実験を実施し,反応生成物の検出を目指す。上智大学では,冷却8重極線形イオントラップとイオン検出系を完成させた後,イオンビームラインを接続し,新たなイオン-極性分子反応測定装置を完成させる。また,Labviewを用いた計測・制御システムを用いて実験パラメータの最適化を行う。一方,既設の装置を用いた実験では,メチル基を有する低速極性分子と低温イオンの反応速度測定を系統的に実施し,反応経路にsubmerged barrierを有するイオン-極性分子反応を見出し,それらの反応機構の解明に資する実験データの取得を進める。都立大では新型装置の開発を完了させ,冷却試験を経てから,目標であるイオン分子反応の実験を行えるように,イオン生成系とイオン検出系のシステム構築を行う。ヘリウムガスに微量の水素ガスを混合させたものを移動管の緩衝気体として用いるため,混合比を正確に定めるための新規な圧力測定機構の開発も行い,実際に反応速度定数の測定を実施する。 また,定例の合同研究ミーティングと技術連携の体制を継続し,学生や若手の研究交流にも注力する。
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