研究領域 | ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05853
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳 哲文 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (60467404)
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研究分担者 |
原田 知広 立教大学, 理学部, 教授 (60402773)
黒柳 幸子 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (60456639)
佐々木 節 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (70162386)
KUSENKO ALEXANDER 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員上級科学研究員 (70817791)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
57,200千円 (直接経費: 44,000千円、間接経費: 13,200千円)
2024年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2022年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2021年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2020年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | 原始ブラックホール / ダークマター / 巨視的ダークマター |
研究開始時の研究の概要 |
原始ブラックホール(Primordial Black Hole:PBH) とは宇宙初期に形成されるブラックホールの総称である。本計画研究ではPBH に関するこれまでの理論的研究をより「深化」(精密化,精度向上)させると共に,標準的なPBH 形成過程を超えた幅広いモデルへの「拡張」を行い,過去,及び将来の観測による「検証」を提案し,徹底的にPBH のダークマターとしての可能性を精査する。また,PBHだけでなく,比較的コンパクトで巨視的な天体によるダークマターに関しても共通する点が多く,その可能性についても併せて検討する。
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研究実績の概要 |
これまでは,宇宙初期の曲率揺らぎによる原始ブラックホール(PBH)形成が主に考察されてきたが,宇宙初期の等曲率揺らぎによっても,それが曲率揺らぎに成長する段階でPBH形成が起こりえることを示し,等曲率揺らぎへの観測的制限を始めて与えた. PBH形成を引き起こす曲率揺らぎについて,これまでは,揺らぎの統計がガウス的か,非ガウス的であっても局所的非ガウス統計の場合のみが議論されていたが,摂動論の範囲で一般的非ガウス性を取り入れた一般論を展開し,一般的非ガウス性がPBH形成率に及ぼす影響の解析的公式を初めて導いた. インフレーション起源の原始密度揺らぎから輻射優勢期に形成されるPBHの場合,非常に小さいスピンしか持たないことが知られているが,宇宙初期の巨視的オブジェクトの集まりによって形成されるブラックホールの場合,その過程に依存して,様々なスピンをもつ可能性があることを指摘した.とくに,スカラー放射が効率的に角運動量を抜き去ることを示し,その影響を指摘した. これまで,宇宙論的なブラックホール解を議論する上で,解析的なモデルの構築が試みられてきたが,宇宙論的ブラックホールの質量がスケール因子に比例する解析的モデルがエネルギー条件を破ることを示した. PBHがクラスターを形成した場合,内側の密度の濃い部分において,近接双曲散乱が起こるとされている.この散乱はバースト的重力波放射を引き起こす.本研究ではこれまでに考えられてこなかったこの重力はバーストが背景重力波に与える影響を明らかにし,第3世代重力波干渉計によって検証可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの提唱では,等曲率揺らぎによる原始ブラックホール形成,宇宙初期の巨視的オブジェクトの集まりによる原始ブラックホール形成など複数のモデルを新たに提案しており,暗黒物質としての原始ブラックホールの可能性を広げることに貢献できている.また,提案だけにとどまらず,数値計算結果を用いた詳細な解析や,非ガウス性の影響についての研究も進んでおり,当初の予定通りと言える.さらに観測手法の提案として,クラスターを形成した原始ブラックホールがクラスター中心でおこす近接双曲散乱の痕跡を背景重力波の観測から探査可能であることを示すなど,この点においても順調に研究が進んでいる.原始ブラックホール形成に用いることのできる解析的モデルの可能性を追求するなど,重要な基礎的研究においても成果が得られている.このように,モデルの提唱,数値計算手法の開発とそれを用いた世界に先駆けた解析,観測的検証方法の提唱など,想定されていたすべての方向性において成果が出始めており,概ね順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き各方面において精力的に研究を進めるとともに,開発した数値計算手法を用いた新しいモデルにおける計算や,新たに提唱したモデルの観測的検証方法の提唱,詳細な数値計算結果を用いた観測的検証の精査など,それぞれの方向性を組み合わせた複合的研究を推進する. これまでの研究で非球対称原始ブラックホール形成のシミュレーションに目途が立ちつつあり,このシミュレーションコードを用いて,これまでに提案した新しい形成過程についてのシミュレーションを行っていく.その結果を基に,重力波などの観測量への影響を定量的に見積もり,将来観測での観測可能性の評価や新しい観測手法の提案を行っていく. 初期揺らぎの非ガウス性が原始ブラックホール量や質量分布に与える影響についてこれまで研究が進んでいるので,この新たに得られた知見を基に,効果的な観測手段提案を行う.特に背景重力波への影響が非ガウス統計によってどのような影響を受けるのかを詳しく調べていく.
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