研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
20H05866
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2024) 大阪府立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
酒巻 大輔 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60722741)
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研究分担者 |
清水 大貴 京都大学, 工学研究科, 助教 (10845019)
春田 直毅 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 特定助教 (90784009)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
49,920千円 (直接経費: 38,400千円、間接経費: 11,520千円)
2024年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2020年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 分子間相互作用 / フタロシアニン / トロイダル共役 / 分子間力 / πスタッキング / アザアセン / 分散力 / πスタック / 電荷移動錯体 / 二量化 / 高密度共役 / 分子会合体 / 有機固体化学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,最も普遍的であるが弱い相互作用である分散力を駆動力として高密度共役状態を実現する汎用的手法の創成を目指す。分散力の相互作用エネルギーそのものの向上と指向性の付与のための指針を「相互作用面積の最大化」と「分子間相対配置の固定」と定め,これを同時に実現する巧妙かつシンプルな分子設計指針を提唱する。1次元的なπスタックに加え,積層軸と直交方向の分散力,すなわちorthogonal分散力を用いることにより,多様なπ電子骨格の高密度化と熱揺動の抑制を実現する。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでに、フタロシアニン(Pc)の外周部に平面π骨格であるジアザペンタセン8枚をピラー状に置換した分子が、2分子間でピラーを相互貫入させる事で強固な二量体を形成することを実証している。本年度は、ピラーの長さが会合挙動に与える影響を調べるため、ジアザペンタセンよりも短いピラーを導入したPcを合成し、固体中および溶液中における会合挙動を検討した。また、環状πスタック内における物理現象を明らかにするため、ジアザペンタセン置換Pc会合二量体に対して過渡吸収スペクトル(TAS)及び時間分解電子スピン共鳴(TR-ESR)測定を行った。ジアザペンタセンよりも短いピラーを置換したPc分子の溶液中での会合挙動を温度可変UV-visおよびNMR測定によって検討した。その結果、いずれもジアザペンタセン置換Pcで見られたような会合体の形成は見られなかった。そのため、強固な会合にはジアザペンタセン程度の長いピラーが不可欠であることが示された。ジアザペンタセン置換Pc単量体および二量体について溶液中の時間分解ESRを測定した650 nmで励起した場合、単量体では1.4 μs以内にシグナルが消失したが、二量体では長寿命のシグナルが観測された。このことから、二量体では電荷分離状態の電荷が環状πスタック内に非局在化することで長寿命化している可能性が示唆された。以上のように、今後の分子会合体設計および新たな電子共役系構築のための興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8枚のジアザペンタセンをπピラーとして有するフタロシアニンが分散力によって会合した二量体について過渡吸収分光および時間分解電子スピン共鳴測定を行うことで、フタロシアニンのQ体の励起に後続する電荷分離状態が二量体の外周部に存在する環状パイスタック内に非局在化していることを示唆する結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、8枚のπピラーを有するフタロシアニンが分散力によって会合した二量体の外周部に存在する環状パイスタック内における現象の解明を目指した研究を行う。特に、フタロシアニンのQ体の励起に後続する電荷分離状態に関して、過渡吸収分光、時間分解マイクロ波伝導度測定および時間分解電子スピン共鳴を用いることで詳細に検討する。また、分子間相互作用を顕に取り込んだ理論化学計算によって、会合体に働く相互作用エネルギーの腑分けを行う。得られた結果をまとめ、本年度中の論文発表を目指す。
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