研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
20H05875
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
白石 貢一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (40426284)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
86,060千円 (直接経費: 66,200千円、間接経費: 19,860千円)
2024年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2023年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2021年度: 27,040千円 (直接経費: 20,800千円、間接経費: 6,240千円)
2020年度: 17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
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キーワード | ポリエチレングリコール / 免疫原性 / 抗原性 / 分子認識と生体応答 / 特異性 / 非特異性 / ポリエチレングリコール(PEG) / 抗PEG抗体 / ハプテン / 免疫原 / 特異的相互作用 / 相互作用 / 抗体 / 分子間相互作用 / 相互作用解析 / 弱い相互作用 / 高分子鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
本計画研究は、生体親和性高分子ポリエチレングリコール(PEG)が、「なぜ抗PEG抗体産生を引き起こし、生体排除を受けるのか?」を問う。PEGと抗PEG抗体という特異的な関係において、両者の間には「弱い相互作用」しか働かないことが分かっている。この両者の弱い相互作用が、なぜ特異的関係に至るのか、両者の結合性における定量評価から物理化学的パラメータを得て、生体親和性高分子に代表される「高分子」を、生体はどのように認識するのかを定義するシンバイオティック・パラメーターを探求し、領域の推進に貢献する。
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研究実績の概要 |
合成高分子ポリエチレングリコール(PEG)誘導体はPEGに対する特異的抗体産生を誘導する。一方、PEGと抗PEG抗体(IgM、IgG)との相互作用は物理化学的なvan der Waals力を基にしていると考えられており、PEGと抗PEG抗体との関係は構造的な特異性と非常に低親和性にある。昨年度までに、抗体に対して、元々非特異性である疎水部位の暴露が高い結合親和性を導くことを見出した。 高分子の溶液状態と速度論的な議論をするために、水溶液中の会合挙動濃度の異なるサンプルを用いて、固相化した抗PEG抗体との結合解析を行った。各種異なる分子量のPEGは抗PEG抗体に対しする結合親和性が低く、高濃度、分子量依存的に総じて速い結合と解離を示した。一方、この相互作用は非PEG特異的IgM抗体においても同様であったことから、PEGのIgM抗体に対する非特異的な作用であることが示唆された。一方、PEG特異的IgG抗体は、非PEG特異的IgG抗体に対してわずかに親和性が高いことが示された。この結果はELISAにおける競合阻害実験の結果と一致した。一方、疎水性部位を有するPEG誘導体は臨界ミセル濃度(cmc)前後において、抗PEG抗体への結合挙動に変化を示した。すなわち、cmc以下の濃度において結合速度は濃度依存的、かつ非常に遅い解離が起こることに対し、cmc以上の濃度において、結合速度は濃度依存的であったが、結合量の低下とともに、速い解離を示した。特に、このcmc以上の高濃度における速い解離は、PEG鎖長に対する疎水性に強く依存し、疎水性が弱いほど解離が起こりやすいことが分かった。これらの事実は、昨年に見出した、非特異性の暴露における結合に関連することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現象の証明における進捗は概ね順調といえるが、一方、予定装置の導入がメーカーの問題で不可となり、測定が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
PEGと抗PEG抗体を用いて、免疫学における抗原-抗体の関係に新しい考え方を導入するための証明を進めている。この関係は、バイオマテリアル研究とも強く結びついており、タンパく質と材料との関係に一致する。溶液中における相互作用、溶液-固相における相互作用の観点から、溶液-細胞上における相互作用の概念へと展開させたいと考えている。最終年となっているため、他分子へと概念の展開を行っており、共同研究先とともに明らかにしていく。
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